いまのままでは、日本中で同じ悲劇が起きかねない(写真/PIXTA)

いまのままでは、日本中で同じ悲劇が起きかねない(写真はイメージ、Ph/PIXTA)

「一般の産婦人科医では、コロナに感染した妊婦さんを受け入れられない。産婦人科医と感染症の専門医が同時に必要で、大学病院や総合病院でなければ対応できないのです」(医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さん)

 そして17日。A子さんは不正出血を確認すると、前日から長く続くお腹の張りと併せて、9時には保健所に報告。保健所はすぐさま状況をかかりつけ医に伝え、周産期母子医療センター(ハイリスクな分娩をするときの医療機関)への入院調整を依頼した。かかりつけ医は母体搬送コーディネーター(妊産婦の入院調整を行う機関)にも連絡をとり、入院先を探すも、4つの医療機関から拒否。

 かかりつけ医がオンライン診察でA子さんの容体を“まだ出産は近くない”と判断して、母体優先で治療するため、通常のコロナ患者として入院できるように再度、保健所へ依頼した。だが、こちらの入院調整もうまく進まず、13時45分の時点で2つの病院から拒否されている。

「16時20分頃、A子さんから保健所に陣痛のような症状や2度目の不正出血が出たと報告。かかりつけ医も想定できなかった、早産が迫っていたのです。そこからは“出産間近のコロナに感染した妊婦”として改めて入院の調整。それでも3つの医療機関に拒否されたと聞いています」(前出・全国紙記者)

 A子さんはコロナの苦しさに耐え、17時15分、妊娠29週で、男の子を“自宅緊急出産”した。自宅にたったひとり、家族やかかりつけ医もいない中で、である。A子さんは産後すぐに保健所に連絡し、救急車を呼ぶように指示を受けた。赤ちゃんをタオルで保温しながら、救急隊の到着を待っていたが、だんだんと赤ちゃんの呼吸は浅くなる。

「お願い、赤ちゃんを助けて」

 A子さんは祈るような思いだったであろう。柏市消防局の救急救命士が現場の状況を語る。

「現場に到着したのは17時36分です。到着したときに、タオルに包まれた赤ちゃんは、すでに心肺停止状態でした。ですので、慈恵医大柏病院に連絡をして、一発で、1回で引き取ってもらったんです。現場滞在時間は10分もありませんでした。正しい処置だったと思いますが間に合いませんでした……」

 無念の思いがにじむ。やっとの思いで、しかも迅速に受け入れ先が決まったのが心肺停止後とは、なんともやりきれない。搬送先の病院での懸命な蘇生処置に一縷の望みをかけるも、18時14分、赤ちゃんの死亡が確認された。

「国や県が対応すべきだった」

 保健所は今回の件で公表する情報を制限しているため、正確な母体の状況などはわからない。しかし、行政の対応に問題があるのは明白だろう。前出の上さんは今回の問題にこう憤る。

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