「巨大高潮」起これば国家予算では賄えない被害に
次に巨大高潮についてみてみよう。高潮は、台風などの低気圧の影響で海面が吸い上げられる“吸い上げ”や、湾口から湾奥に向けて吹く強風により湾奥に海水が吹き寄せられる“吹き寄せ”により、海面の水位が上昇して発生するとされる。3大都市圏はいずれも大きな湾岸地帯に位置しており、巨大高潮による広域での被害が危惧される。
東京圏では、死者・不明者合計3000人以上を出した1934年の「室戸台風」級の台風襲来をベースに、東京湾での高潮を仮定。資産被害は64兆円、経済被害は46兆円、財政的被害は5兆円としている。また、人的被害として死者数を8000人と想定している。
名古屋圏では、死者・不明者合計5000人以上を出した1959年の「伊勢湾台風」を、上陸時中心気圧が室戸台風と同規模にまで強力化したスーパー伊勢湾台風の襲来を見込んで高潮を仮定。資産被害は10兆円、経済被害は9兆円、財政的被害は1兆円としている。また、1300人の死者を想定している。
大阪圏では、死者・不明者合計200人以上を出して大阪湾を襲った1961年の第2室戸台風級の台風襲来を仮定。資産被害は56兆円、経済被害は65兆円、財政的被害は7兆円としている。また、1000人の死者が出ると想定している。
このうち、大阪圏では、被害想定額が合計で128兆円に上る。これは、2021年度の一般会計当初予算を20兆円以上も上回る金額となっている。ひとたび大阪で巨大高潮が起これば、被害額は国家予算では賄えない規模に巨額化しうることを示している。
なお、内閣府が公表している過去の大災害の被害額推計をみると、2011年の東日本大震災では、建築物、ライフライン施設、社会基盤施設等のストックの被害額が16.9兆円。1995年の阪神・淡路大震災では、同9.6兆円であったとされている。
これらとの比較でも、巨大洪水や巨大高潮による資産被害の規模が大きいことがわかるだろう。