1995年の岐阜・中津川市で、景品にマツタケを入れたクレーンゲームが人気に(時事通信フォト)

1995年の岐阜・中津川市で、景品にマツタケを入れたクレーンゲームが人気に(時事通信フォト)

 手に入れた景品を売っても違法ではないが、転売ヤー対策で厳しい設定にすると一般客まで離れてしまう。かといって一般客向けに易しく設定すれば連中の餌食となる。

「その一般客の財布の紐も昔に比べて固くなりました。いまゲーセンって高くつきますから。クレーンゲームに大金使う人なんて転売ヤーの他にマニア、あと水商売とか限られます。昔みたいに1000円そこらで楽しめる場所じゃないですからね。でも店を維持するにはそうせざるを得ないんです。つまり、いろいろ限界なんですね」

 地域差もあるのだろうが、聞けば聞くほどにクレーンゲームのほのぼのとしたイメージとは真逆の現実、それでもゲーセンはクレーンゲームに頼らざるを得ない。なるほどクレーンゲームだけのゲーセンが増えるわけだ。

「他の筐体もありますけどクレーンゲームほどじゃない。うちの稼ぎも大半はクレーンゲームです。クレーンゲームの人気が無くなると店は維持できない、それくらいゲームセンターはクレーンゲーム頼みです。でもそれって危険ですよ、次の展開がなければ、新しい稼げる何かがなければゲーセンそのものが本当に終わっちゃうかもしれないんですから」

 経営が厳しいから、その場しのぎのグレーな行為に手を染める、そうして一般ユーザーが次々と離れてしまう。コロナ以前からゲームセンターの衰退が噂されて久しいが、不明瞭な仕組みでユーザーを翻弄するような、それが許された平成までの「ゲーセン」気質のままではもう乗り切れない。クレーンゲームによる一連の摘発や悪い噂の数々は表層の一角、健全化はもちろんだが、日本全国で廃業に追い込まれ続けるゲームセンターという業態そのものが、その場しのぎでない大転換を迫られているのかもしれない。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。1990年代から月刊「コンプティーク」を始め多くのアニメ誌、ゲーム誌や作品制作に携わった経験を持つ。近年は文芸、ノンフィクションを中心に執筆。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)他。

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