「政府は水際対策を強化しましたが、すでにオミクロン株は日本に入っていると考えるべきです。これから潜伏期間を経て、12月中旬には新たな感染者が目立ってくるかもしれません。国内ではほかに拡大している変異株がないので、年末年始にかけて感染が一気に広まる可能性があります」(二木さん)
日本に迫りくるオミクロン株。感染力が強く、ワクチンが効きにくいという指摘に恐怖を感じる人は多いはずだ。
だが一方で、「オミクロン株の出現は、人類にとって“朗報”だ」と喜びをあらわにする専門家もいる。いったいどういうことなのか──。
ほとんどは無症状か軽症
オミクロン株の出現が「朗報」である根拠として、「症状の軽さ」が各国から指摘されている。
南アフリカからの報告によると、オミクロン株の感染者の症状は、疲れやすい、筋肉痛、頭痛、乾いた咳など。以前の流行時によくみられた、呼吸困難や嗅覚、味覚の消失を訴える患者はいなかった。南アフリカ医師会会長によると、オミクロン株に感染した患者はデルタ株に感染した患者とは異なる、はるかに軽い症状だったという。
また、隣国のボツワナの政府高官によると、オミクロン株が発生したと思われる地域では、85%の症例にまったく症状が表れなかったという。一石さんが説明する。
「オミクロン株は感染力こそ強いものの、症状は軽いと報告されています。呼吸器症状も軽いとされ、デルタ株のまん延時のように、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)に移行するほど重症化する症例は、現時点では少ないと考えられます」
驚くべきことだが、WHOによると、オミクロン株に関連した死者の報告は、12月上旬現在、ただの1例もないというのだ。EUの衛生当局も「オミクロン株の死者はおらず、感染者のほとんどは無症状か軽症」と明らかにした。
冒頭で紹介したノルウェーのクリスマスパーティーで発生したクラスターでも、感染者は一様に症状が軽く、入院にはいたらなかったという。
そうした状況を受けて、WHOの主任科学者は全世界にこう呼びかけた。
「私たちはどれくらい心配すべきか? 1年前とは状況が違うのだから、パニックになるのではなく、よく準備をして慎重になればいい」
症状が軽く重症化しないことは新たな仮説をもたらす。
オミクロン株を「クリスマス・ギフト」と呼ぶのは、ドイツの次期厚生大臣の有力候補、臨床疫学者のカール・ラウターバッハ教授だ。
ラウターバッハ教授はオミクロン株のスパイクたんぱく質に32の変異があることに着目し、ツイッターでこう述べている。
「オミクロン株は人を殺すのではなく、感染させるために最適化されたのではないかと考える。これは多くの呼吸器系感染症のウイルスが進化する過程と一致しており、コロナウイルスがこの段階に到達したのは喜ばしいことだ」
またイスラエルのハダサ・へブライ大学医療センターの上級医師、ドロール・メボアック教授はこう述べている。
「現在得られている情報を見ると、この変異株は急速に広がっているが、それほど危険ではないかもしれない。それは世界にとって本当によいニュースだと思います」