スポーツ以外に年間1位を譲ったのは2003年のみ
昨年は年間8位だったが、紅白より上位はほとんど東京五輪関連だ。スポーツやニュース以外の30%以上は紅白しかなく、その下は22.8%の『芸能人格付チェック2021』(1月1日/テレビ朝日)で10%以上も離れている。紅白は縦軸で見れば“歴代最低”でも、横軸で見れば依然として“音楽・バラエティの年間最高視聴率番組”となっている。
この傾向は、1962年の視聴率調査開始以来変わっていない。数字の低下が叫ばれ始めた1980年代中盤以降も年間トップを走り続け、サッカーW杯に日本が初出場した1998年に初めて1位から陥落して3位になったものの、安室奈美恵が1年ぶりに復帰を果たした同年の57.2%は平成の紅白最高視聴率だった。紅白がスポーツ以外に年間1位を譲ったのは、2003年だけ。この年は、1月24日放送『千と千尋の神隠し』(日本テレビ開局50年金曜特別ロードショー)の46.9%に1%劣った。
W杯や五輪という世界的なスポーツイベントには数字の面で及ばないことがあっても、国内では無類の強さを誇っている。この10年でスポーツ、ニュース以外で30%以上を獲得したのは『紅白2部』10本、『紅白1部』10本、『半沢直樹』5本、『24時間テレビ 愛は地球を救う』2本、『SMAP×SMAP』1本となっている。当時、犬猿の仲と噂されていたとんねるずとダウンタウンが共演を果たし、今も語り継がれる『笑っていいとも!グランドフィナーレ 感謝の超特大号』(2014年3月31日)でさえ28.1%だった。
こう考えれば、テレビ離れが盛んに叫ばれる2010年代以降も世帯視聴率30~40%を獲得している『紅白歌合戦』がいかにお化け番組で、“34.3%”が驚異的な数字とわかるのではないだろうか。
■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸など関係者への取材などを通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在の復活まで熱のこもった筆致で描き出した。田原の1982年、1988年の全出演番組(計534本)の視聴率やテレビ欄の文言、番組内容なども巻末資料として掲載。