視聴者に希望を抱かせるヒーロー
『DCU』公式ホームページの「はじめに」に、「もし水中事件や水難事故に特化した世界レベルの精鋭スキューバダイバー捜査官が存在したら? そうなれば、水中事件捜査の進捗と国内の治安を飛躍的に向上させ、日本の将来に明るい光を灯す強力な組織になるだろう」と書かれています。
これこそが架空の組織を手がける理由。「もしこんな組織があったら、こんな問題が解決できるのに」という視聴者の希望となる新たなヒーロー像を見せようとしているのです。「DCU」は警察でも手が出せない水中事件を解決し、「TOKYO MER」は最高の医師と車両が最速で手術を行い、「日本未来推進会議」は若く能力の高い官僚が日本を救うというコンセプトを見れば、それがわかるでしょう。
実際、『TOKYO MER』の松木彩監督は、「以前、救急医療やレスキューの現場を拝見する機会があり、見ず知らずの他人のためにこんなにも危険を顧みず人生を懸けている人たちがいるのかと大変衝撃を受けました。彼らの凄まじさと、その時感じた『この人たちがいればきっと大丈夫だ』という安心感を、喜多見とMERチームの姿を通して伝えていきたい」とコメントしていました。
『日本沈没―希望のひと―』の東仲恵吾プロデューサーも、「日本沈没が目前に迫ってくる中で、決して諦めずに今やるべきことを全力でやる人たちの人間ドラマを丁寧に描いていきたい」「『未曾有の危機でもこの人たちなら救ってくれるんじゃないか』そう思わせてくれる力強いキャラクター」などとコメントしていました。
いずれも「この人たちがいれば……」という希望を抱かせるヒーローを描こうとしている様子がうかがえます。実はこのような架空の組織を描いた作品は、刑事ドラマの定番。わかりやすいものを挙げると、『絶対零度 未然犯罪潜入捜査』(フジテレビ系)、『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)、『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)、『S -最後の警官-』(TBS系)など、さまざまな刑事ドラマで架空の組織が描かれてきました。