老齢マウスを使った動物実験では、加齢にともなう腎機能の低下や、肺の線維化、肝臓の炎症などが抑えられ、肥満による動脈硬化も改善された。生活習慣病モデルマウスに投与すると、2型糖尿病や動脈硬化、非アルコール性脂肪肝炎が改善されたという。
「握力や運動能力の低下が抑えられることもわかりました。マウスを棒にぶら下がらせると、普通の老齢マウスは平均で30秒くらいで棒から落ちますが、GLS1阻害薬を投与すると、平均で100秒くらいぶら下がり続けました。人にたとえれば、70~80代が40~50代程度の筋力を取り戻したような感じです」(同前)
現段階では、シワなどの皮膚、毛髪、視力の改善は研究途中だという。米国では抗がん剤としての治験が始まっているが、人での若返り効果も確認されているのか。
「この治験には主に末期がんの患者さんが参加しているため、がんの進行を超えて老化の進行を観察することはできません。なので、人に対する効果はまだわからない。ただ、副作用が極めて少ないことはわかっています」(同前)
時期は未定だが、研究チームでは、国内で解析を進めていく予定だ。
※週刊ポスト2022年3月11日号