そこで焦点となるのが、新政権が反日団体とどう対峙していくかである。
「尹氏は大統領選のなかで、慰安婦問題の主管省庁であり、正義連などに支援金を交付し運動を支えてきた女性家族部の廃止を公約としてきました。また正義連の元代表の尹美香議員は、詐欺横領などの裁判が続いています。新大統領の公約が実行され、さらに尹美香氏に厳しい審判が下されることになれば正義連の影響力は確実に低下していくはずです」(現地記者)
日韓歴史問題を常に混乱させてきた反日団体の排除は、慰安婦問題解決のための大きな一歩となることは間違いない。
弱腰批判への恐れ
そして第3の課題となるのが韓国世論である。尹氏は大統領選勝利後の会見でこう述べている。
「韓日関係は過去よりも、未来をどうするかだ。両国や両国民の利益になるような関係を、我々がしっかりと考えていくことが重要だと考える」
この発言は、尹氏が選挙中から公言していた「日韓歴史問題を政治利用しない」というメッセージを、改めて公言したものだった。ソウル特派員が解説する。
「歴史問題を過度に利用してきた前政権とは、尹氏は明確に違う姿勢を見せた。だが岸田文雄首相からは『共に協力したい』といった従来通りの言葉しか返ってこなかった。この日本側の姿勢に尹氏側は大きな不満を持っている。このままでは韓国側が一方的に譲歩しているように見えることを彼らは気にしている」
政権基盤の弱い尹氏にとって世論は無視できないポイントだ。韓国世論は反日に振れやすい。故に新大統領は日本に対して弱腰だと断じられることを、尹氏は怖れているのだ。
日韓関係改善という難局にどう挑むのか、新大統領の手腕に注目したい。
取材・文/赤石晋一郎(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2022年4月1日号