ダイエットよりもおいしいものを!
食文化研究家の畑中三応子さんは、当時の食に関するブームを振り返り、フランス料理など、高級料理へのハードルが低くなったと指摘する。
「それまで高級ホテルや専門店で食べるものだったフランス料理が、カジュアルなレストランやビストロが登場したことで、若者にも手が届くようになりました」(畑中さん・以下同)
この年、フランス料理のシェフ、石鍋裕さんが『クイーン・アリス』(東京・西麻布)をオープン。1984年には、故・井上旭さんが『シェ・イノ』(東京・京橋)を開店させている。
海外旅行が憧れだった時代、本場で修業したシェフの店でディナーをすることは若者のステータスになった。
外食がレジャーになったのもこの頃だ。
「1982年4月に発売され、ベストセラーになった山本益博さんによるグルメガイド『東京・味のグランプリ200』(講談社)は、高級レストランから小さなラーメン店まで幅広く取り上げており、外食自体がレジャーやエンターテインメントとして捉えられるようになっていきました」
ダイエットブームはまだ先の話。それよりも、珍しくておいしいものを食べに出かけたい、という意識が強く、この時代から、食の多様化も一気に広まったという。
取材・文/前川亜紀、番匠郁
※女性セブン2022年4月21日号