転機となったのが3月14日に岸田政権を支える麻生太郎・副総裁の呼び掛けで行なわれた安倍、麻生、茂木氏の3者会談だという。参院選対策が話し合われ、3大派閥の領袖が政権を支えることで一致したことが報じられた。
「この会談で安倍さんにも公明党対策の5000円給付などについて話は通っていたはずです。それでも、高市氏は党内を乱すようなやり方を続けた。安倍さんにすれば、そんな人物を担いでいると思われたら自分の立場まで悪くなるから、高市氏を見限るしかない。安倍さんの後ろ盾がなくなれば、岸田首相にとって無派閥で自前の勢力を持っていない高市氏は怖くない。参院選後の内閣改造・党人事で更迭でしょう。それを察知しているから、高市氏は一層存在アピールに躍起になっている」(同前)
“岸田より私のほうが腕力がある”という高市氏のアピールが、かえって墓穴を掘っているとの指摘だ。
安倍派にお誘いもない
安倍氏の“掌返し”は、自民党最大派閥「清和政策研究会」(現・安倍派)の会長に就任(昨年11月)してから顕著になった。総裁選では高市氏をあれほど全面支援しながら、安倍氏は高市氏を安倍派に受け入れようとはしないのだ。
もともと高市氏は安倍氏と同じ清和会に所属していた。だが、2012年の総裁選に当時の派閥会長・町村信孝氏と返り咲きを目指す安倍氏が出馬すると、高市氏は派閥を退会して安倍氏を応援し、政権復帰に貢献した。それだけに安倍氏が会長に就任すれば、たとえ派内の風当たりが強くても、自分も派閥に迎えられると考えるのは人情だろう。
だが、そうはならなかった。派閥入りをめぐる2人の距離を物語る発言がある。
「安倍派になったら帰れるかなと思っていたが、特にお誘いもない。しばらく独りぼっちかもしれない」
昨年12月に出演したBS番組でこう語った高市氏の口調には落胆がにじんでいた。