もちろん「どこで見られているか」を注視しているスポンサーもいますし、今後はそうなっていく可能性は高そうですが、現在は限定的なところに留まっているという段階。「北関東はコア層の在宅率が都心よりも高くなりやすいため、手堅く数字を獲れる」という理由もあり、重要な関東地区のコア層個人視聴率アップに貢献できるのです。
放送半年で北関東が隔週ペースに
そんな北関東の影響力を裏付けるのが、「昨年スタートした新番組で唯一の成功」と言われる『オモウマい店』の存在。同番組は北関東のユニークな飲食店を徹底的に紹介することで地元を熱狂させ、さらに企画自体の面白さで東京をはじめとする南関東の視聴率も手堅く獲得して、関東全体の好結果につなげています。
また、『ウラ撮れちゃいました』は昨秋にスタートしたばかりの番組ですが、放送半年で早くも「北関東を2回に1回程度のペースで扱う」という戦略に変わりました。これも『オモウマい店』を筆頭に、北関東をフィーチャーした番組が高視聴率を獲得しているからでしょう。
ただ、『オモウマい店』のように、北関東の人々から支持されるだけでなく、南関東の人々もそれなりに楽しませるのは簡単なことではありません。実際のところ冒頭に挙げた番組は、「視聴率の低迷に苦しんでいて、少しでも上げなければいけない」というケースが多く、北関東は“特効薬”というより“応急措置”のようなニュアンスを感じさせます。
さらにもう1つの難しさは、『オモウマい店』を手がける中京テレビや、『所JAPAN』を手がけるカンテレは、「北関東をフィーチャーしながら、遠く離れた自局エリアの視聴者も獲得しなければいけない」こと。『オモウマい店』で言えば、東海3県の人々は「地元の中京テレビが全国放送の番組を手がけているから応援しよう」という気持ちはあっても、「北関東に興味がないから見ない」と思われかねない難しさを抱えているのです。
それは制作局だけでなく、関東以外の他エリアすべてに言えることであり、全てのネット局が「北関東の特集をどのようにPRして見てもらうか」という難題を抱えています。北関東をフィーチャーするバラエティのトレンドがどこまで続くかはまったくの未知数ですが、しばらくの間は関東地区におけるコア層の視聴率が鍵を握っていることは間違いないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。