両親と姉2人はすでに他界。おすぎとピーコはこの世でたった2人の肉親となっていた。喜寿を迎えた兄弟の老老介護。近隣住民はその様子を目撃していた。
「今年の初め、外出するお二人を何度か見かけました。お体は元気そうでしたよ。おすぎさんは目が合うと軽く会釈をしてくれました。外に出るときはいつもピーコさんがそばに寄り添うように歩いていて、甲斐甲斐しくサポートをされているようでした」(近隣住民)
厚生労働省の2019年の調査によれば、在宅介護のうち、65才以上の高齢者が自宅で高齢者を介護する「老老介護」の割合は59.7%と過去最高となった。要介護者から見た介護者の続柄は「配偶者」と「子」で約半数を占めるといわれている。だが、今後、その割合が変化していく可能性がある。介護ジャーナリストの末並俊司さんが解説する。
「きょうだいが多いとされている団塊の世代が、2025年には全員、後期高齢者になります。未婚のケースもあれば配偶者の他界や子供に面倒をみることを拒否されるなどの理由で、きょうだいを頼らざるを得ないケースも増えると考えられています」
ましてやこれがLGBTQといった性的マイノリティーとなると、問題はさらに複雑になる。
「高齢になるほど性的マイノリティーに対する理解が乏しいため、高齢者が差別を恐れずに通える高齢者施設は少ない。例えば、性同一性障害の人が、介護施設で男性と一緒に入浴することが苦痛であると言っても、それを理解してくれる施設はほとんどないと思います。LGBTQのかたがたは独居で高齢期を迎える可能性が高く、介護をしてくれる配偶者や子供がいないケースが想定され、孤独死のリスクが高まる状況です」(前出・末並さん)
※女性セブン2022年5月26日号