大腿骨近位部骨折の有無で生存率がこんなに変わる

大腿骨近位部骨折の有無で生存率がこんなに変わる

 肉体だけでなく精神面の影響も無視できない。埼玉県在住の男性・Bさん(52)が肩を落として語る。

「3年前、園芸が趣味だった75歳の父が剪定していた時に脚立から落下して腰の骨を折り、ほぼ寝たきりになりました。はじめの1年くらいは、介護をするために父の実家の茨城に週2回ほど通っていました。

 しかし、費用もかかるため毎週通うわけにもいかず、その後は月2回のペースに減らしていたら父が『俺のことはどうでもいいんだ』とネガティブな電話をしてくることが多くなって……。

 最近、実家に帰ると父が急に怒鳴りつけてくることが増えたので、もしやと思って病院に連れて行ったところ認知症と診断されました。介護のストレスも大きく、一度の骨折がきっかけで、こんな状態になるとは思いもしなかった」

 Bさんの父親のように、骨卒中が認知症に進展するケースは多いという。骨粗しょう症専門外来を設置している「むつみクリニック」の金光廣則院長はこう語る。

「骨折すると自由に体を動かすことができず、ベッドに寝たままの時間が長くなり、病院や自宅の天井ばかり見て過ごすこともしばしばです。

 こうした場合、もともとあった認知症の症状が進行したり、それまで正常だった人が認知症を発症したりすることがよく起こります」

 実際に厚生労働省の『2019年国民生活基礎調査』では、介護が必要になった主な原因は、「認知症」「脳卒中」「高齢による衰弱」に次ぐ4位に「骨折・転倒」が位置する。萩野氏が語る。

「特に大腿骨近位部を骨折すると、ベッドの上での生活が長くなって歩けなくなるケースが多く、約3割の人に介護が必要になると言われています」

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