眼内レンズ自体も失敗を招く要因になる。ある眼科医が、匿名を条件にこう話す。
「手術で水晶体と置き換える眼内レンズは、遠方もしくは近方がはっきり見やすい『単焦点レンズ』と、焦点が複数で遠近とも見える『多焦点レンズ』の2種類があります。3年前、ある外国製の多焦点レンズに似た特徴を持つレンズが国内で初めて保険診療適用された際、『新しく出たレンズだから』という理由で患者に相談せず勝手に使用した医師が多くいました。
しかしそのレンズは、光が大きな輪になって見えたり、発光体がダブって見えたりする『ハロー・グレア現象』が生じるリスクの高いものだった。患者によって合う、合わないがあるので、安易に新型のレンズを勧める医師には注意したい」
手術後にいったんクリアな視力が戻っても、徐々にまた視力が低下する場合は「後発白内障」が疑われる。手術時に水晶体嚢の上皮細胞を取り切れず、その細胞が増殖し後嚢にまで広がることで濁りが生じ、視力が低下するリスクが高まる。
「術後に再び見えにくさを感じても放置すると症状が進行するため、定期的な受診が重要です」(平松医師)
※週刊ポスト2022年6月3日号