60代の高血圧患者(男性)の減薬事例

60代の高血圧患者(男性)の減薬事例

尿酸値は「薬ナシ」で下げる

 それが正常よりも脈が速くなる「頻脈」だ。松田医師が続ける。

「初診時は服用薬の確認と、それによる副作用が現われていないか注目します。男性の脈を測ると、頻脈の症状が出ていました。実はカルシウム拮抗薬には頻脈の副作用があります。男性が処方されたニフェジピンは、10mgの1錠だけで血圧がドンと下がるのに、20mgを4錠も処方されていた。

 血圧を下げすぎると、今度は血液を全身に送る心臓に負担がかかります。男性の以前の主治医が血圧の数値しか見ておらず、下がらないから1錠、また1錠と増えたのでしょう。それで頻脈の副作用が出ていたのです」

 松田医師は男性の薬を減らすため、まず脂質異常症の薬を中止した。

「肝臓の機能低下も見られました。薬でコレステロールを下げると肝細胞の膜が弱くなり肝障害が起きる可能性があります。脂質異常症の薬は特殊な場合を除き、やめたことで悪化するケースはほとんどない。そこで、まず脂質異常症の薬をやめてもらいました」(松田医師)

 続いて降圧剤は、作用が強くないアムロジピン、オルメテック、ビソプロロールフマル酸塩の3種類を1錠ずつ残してそれ以外は中止したという。初診から2週間後の診察では頻脈もなくなり、血圧も上が118、下が70にまで低下。薬の大量服用中は上が130、下が80に血圧コントロールされていたが、減薬指導と同時に行なった食事や運動などの生活習慣の指導が奏功したという。

「実はこの男性は以前の病院で糖尿病や肝障害の持病が見逃されていました。そのまま以前の病院にかかっていたら、さらに薬が増えたかもしれません。当院で2年ほど前から週1回の断食に取り組んでいただき、薬を一切使わずに正常になりました。血圧だけは高めの状態が続いているので、弱めの血圧の薬3種類だけは今も継続しています」(松田医師)

 ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師は、「降圧剤などは患者自身が『飲んでいたほうが安心』と心理的にもやめにくい。その一方で、やめやすい薬もある」と語る。それが尿酸値をコントロールする痛風治療薬だ。

「暴飲暴食をしがちで生活習慣病を抱えた60代男性患者のケースでは、降圧剤、糖尿病薬、脂質異常症薬、痛風治療薬のうち、痛風の薬をやめてもらいました。痛風の薬は症状が出ていなくても数値が高めだと“予防”という名目で処方されることがあります。

 しかし、発症前であれば、体重を減らしたり、禁酒したり、食事内容を見直すなどで尿酸値をある程度は下げることができる。うまくいけば、ほかの生活習慣病も改善できるので一石二鳥です」

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