江本:最低の時は干した大根を煮たのがメインで、味噌汁に大根の葉っぱが入っている。あとはタクアンが2切れ。
弘兼:“おしん”の世界じゃないですか。それでも法政は滅茶苦茶強かった。プロには進まなかったけど、ピッチャーの山中正竹さんが凄くて。
江本:4年で48勝でした。
弘兼:早稲田は2回くらい優勝したけど、あとは全部法政ですよ。提灯行列では法政の学生になりすまして一緒に歩いてビールを飲んだから“法政、おお、我が母校~”という校歌まで覚えた(笑)。
江本:でも、大学の時が一番食えなかったですね。近所で1斤45円の食パンをよく買っていましたよ。
大和田:僕は近所の八百屋さんと仲良くして、腐りかけた野菜をもらいましたね。大きな鍋で煮込んで、発売になったばかりのチキンラーメンを1個入れるだけで美味しかった。狭いアパートの部屋で芝居仲間と演劇論を語りながら鍋をつついたのは最高のご馳走でした。
江本:鍋でいうと合宿所では春や秋のシーズンが終わると、1回だけすき焼きの日があるんです。4年から順に食っていくんですが、1年は糸コンしか残ってない(笑)。
弘兼:団塊世代は貧しい時代もバブルも知っている。面白い人生ですよね。
(第3回に続く)
【プロフィール】
江本孟紀(えもと・たけのり)/野球解説者。1947年7月22日、高知生まれ。法政大から熊谷組を経て東映に入団。2年目に南海に移籍し、エースとして活躍。阪神に移籍後、「ベンチがアホやから野球がでけへん」の言葉を残して退団。引退後は政界に進出し、現在は辛口評論家として活躍。
弘兼憲史氏(ひろかね・けんし)/漫画家。1947年9月9日、山口生まれ。早稲田大で漫画研究会に所属し、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。3年後に退職して漫画家の道に進む。代表作『島耕作』シリーズに加え、『黄昏流星群』では中高年の恋愛を描き、団塊世代にエールを送る。
大和田伸也氏(おおわだ・しんや)/俳優。1947年10月25日、福井生まれ。早稲田大在学中に演劇を始め、中退して自由舞台に参加。劇団四季を経て、NHK朝の連続テレビ小説『藍より青く』で人気を獲得。テレビドラマ、映画、舞台、ミュージカル出演に加え舞台演出、映画監督も務める。
※週刊ポスト2022年6月10・17日号