弘兼憲史一覧

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70歳超の自動車運転、安全上の工夫 江本孟紀氏、弘兼憲史氏、毒蝮三太夫氏らの場合
70歳超の自動車運転、安全上の工夫 江本孟紀氏、弘兼憲史氏、毒蝮三太夫氏らの場合
 5月13日から、75歳以上のドライバーの免許更新に「運転技能検査」が加わった。過去3年間に一定の違反歴がある場合、試験コースで運転課題をこなし、100点満点中70点以上を取らなければ免許の更新は認められない(第一種免許の場合)。【写真】大型バイクのハーレーダビッドソンにまたがる野球評論家・江本孟紀氏 75歳以上の全員に義務付けられた「認知機能検査」もあるほか、警察庁は運転免許の「返納」も促しており、運転免許更新のハードルは着実に高くなっている。 一連の規制強化の背景にあるのは、高齢ドライバーの運転ミスが原因とみられる事故が近年相次いだことだ。痛ましい事故が報じられるたびに、ドライバーやその周囲の人が不安を抱くのは無理もない。 子供世代にあたる40~50代の男女約1000人を対象にした調査では、「免許返納の義務化」について79%が「賛成」「どちらかというと賛成」と答えた。親が運転することについて心配なこととしては、「事故の加害者とならないか」(77.8%)、「大怪我をしないか」(47.9%)などの回答が多かった。 また杉良太郎(77)や伊東四朗(85)などの著名人が積極的に免許を返納する姿が報じられることで、「俺もそろそろ返納しなきゃいけないのかな……」と考え始める人がいるかもしれない。 しかし、「仕事や生活の“足”である車がなくては困る」という人や「まだ運転は大丈夫」と思う人もいるだろう。 難しい問題だが、この悩みに「免許返納はむしろ体調に悪影響を及ぼす」と言う人がいる。高齢者医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏だ。大ベストセラーとなった著書『80歳の壁』には〈返納すると、6年後の要介護リスクは2.2倍〉との記述がある。 その論拠となっているのが、筑波大学が2019年に発表した「運転中止による健康への影響」だ。車を運転する65歳以上の約2800人を6年間にわたって追跡したところ、運転をやめた人は、運転を続けている人に比べて要介護認定のリスクが2倍以上高かった。和田医師が解説する。「この調査の結果から公共交通機関が乏しい地方で免許返納をすれば外出の機会が減り、運動量や脳への刺激も少なくなって老化が進むことが推測されます。 健康寿命を延ばすには、免許返納で今できることを放棄してはいけません。加齢による判断力低下が事故につながることはたしかですが、そもそも事故は全年代のドライバーが起こしている。高齢者に認知機能検査が必要だと言うのなら、すべてのドライバーに受けさせるべきです」ゴルフの帰り道は仮眠 歳を重ねるごとに筋力や反射神経などの身体機能が低下するのは避けようがない。「生涯現役」のドライバーを目指すにはどんなことに気を付ければいいのか。 参考にしたいのが「補償運転」という考え方だ。「補償運転」とは、簡単に言えば、加齢による運転技能の衰えを補うために実践する安全上の工夫のこと。2017年から警察庁が推奨しており、全国で呼びかけている。 具体的には、「夜間」や「雨の日」「長距離」の運転を控えるなど、運転する時と場所を制限したり、「ラジオや音楽を聞かずに運転に集中する」「以前よりスピードを出さない」など心身の環境を整えて危険を避ける方法が挙げられている。 70歳を超えても「免許は返納するつもりはない」と考えているドライバーのなかには、そうした慎重な運転を日々実践する人が多い。 歯に衣着せぬ発言がトレードマークの野球評論家・江本孟紀氏(75)もその1人だ。19歳で免許を取得し、68歳からは大型バイクのハーレーダビッドソンも乗りこなすが、運転は繊細だ。「とにかく年齢相応の運転を心掛けています。昔は高速道路ではパトカーに追いかけられていないかバックミラーばかり気にしていましたが(苦笑)、今は走行車線の流れに乗って車間距離を保ちながら走ります。飛ばす若い人に追い抜かれてカッカすることもありません」 長距離運転が多いゴルフの際は、それぞれ独自のルーティーンがあるようだ。江本氏は「帰りは高速のサービスエリアで仮眠」を心掛けている。「ここ7~8年、ゴルフで朝が早い時は徹底している。帰りにSAで休憩して一眠りすると頭がすっきりするのが分かります」(江本氏)『島耕作』シリーズでお馴染みの漫画家・弘兼憲史氏(74)はこう語る。「僕も普段は運転しますが、ゴルフの時は誰かに迎えに来てもらうか、ハイヤーを利用します。朝が早いゴルフで帰りに渋滞に巻き込まれてウトウトしては危ないので。ゴルフに誘われたら、『迎えに来てもらえるか』と確認してから約束するようにしています」慣れない道は通らない『ウルトラセブン』に出演時、フルハシ隊員としてウルトラ警備隊ポインター号のハンドルを操った俳優の毒蝮三太夫氏(86)。ベンツのCクラスが愛車だが、長距離の際は「1人では乗らない」のだと言う。「今も運転には自信があるんだ。でも長距離を運転する時は、1人では行かない。信頼のおける同乗者に、自分では気付かない不注意を指摘してもらうことが大事です。 こないだはウルトラセブンのアマギ隊員(古谷敏・79)と八ヶ岳に行ったよ。ヤツは4年くらい前に免許を返納しちゃったから、俺が運転してね。つまりフルハシ隊員がアマギ隊員を乗せて行ったわけだ(笑)。運転中、アマギ隊員に『俺の運転はどうだ』と聞けば、『安心して乗っていられます』とくる。そんな会話をしながら運転するのは楽しいし、気分がいいな」 阪神タイガースの優勝時など様々な現象の経済効果の算出で知られる関西大学名誉教授の宮本勝浩氏(77)はこの10年、「慣れない道は運転していない」と語る。「運転歴は55年になりますが、10年くらい前からは遠出と夜の運転をやめました。渋滞ポイントや通学路、飛び出しが多いかどうかなど、走り慣れない道は分からないことが多い。病院やスーパーに車で行く時は比較的広い道路を通るようにし、駐車場では店の入り口から離れても周りに車がいないスペースを目指す。駐車時に当てるのも悪いし、当てられるのはもっと嫌だから(笑)」(宮本氏) 運転に際しての工夫は多様なパターンがある。前出の弘兼氏はこう話す。「自宅から仕事場まで、晴れた日は自転車を使い、雨の日は車に乗っています。距離が短いことと、狭い道を通るわけではないので問題はありません。農家の方が自宅から畑に行くような感じですね。漫画が描ける間は続けるつもりです」※週刊ポスト2022年8月5・12日号
2022.07.31 07:15
マネーポストWEB
これからの目標などについて語る弘兼憲史氏
弘兼憲史氏、団塊世代に向けて「歳をとっても、この先も恋愛できる」とエール
 1947~1949年生まれの団塊の世代が、「後期高齢者」となる。社会保障費の負担増などを懸念する声が多いが、“当事者”はどう捉えているのか。今年、75歳を迎える江本孟紀氏(野球解説者)、弘兼憲史氏(漫画家)、大和田伸也氏(俳優)の3人が集い、これからの目標について語り合った。【全3回の3回目。第1回から読む】 * * *大和田:弘兼さんの『人間交差点』や『黄昏流星群』はバイブルですね。僕たちの世代にぴったり寄り添っている。弘兼:狙いはまさにそこなんですよ。『黄昏流星群』は老人の性がテーマですが、不倫をしろという漫画じゃないんです。“歳をとっても、この先も恋愛できるんだよ”とエールを送っている。あと数年すれば男性の生涯未婚率は30%を超えます。女性でも増え、中高年のブライダルマーケットが大きくなるでしょう。『黄昏流星群』を描きながら、“人生最後の恋”はなかなかいいものではないかと感じています。描いていて楽しいですね。大和田:10年ほど前に初めて監督として映画を撮ったんですが、『人間交差点』みたいなストーリーを撮りたいと思ったんです。原作は版権が高くて手が出ませんので(笑)、自分で同じ年代の男の悲哀を表現しました。江本:お2人のような芸術系の人は夢があっていいです。僕みたいな体育会系は暇な時にやることがなくて、リビングに置いた小さなダンベルを持ち上げるしかない。とくに日本の野球界はメジャーと違って年寄りを排除します。張本勲さんがいい例で、何かあると一気に悪口の標的になる。芸術系の人が羨ましいです。弘兼:野球解説のお仕事もあるじゃないですか。江本:やっていますが、一緒にやる若いアナウンサーは僕の現役時代を知らないですよ。“オールスターにも出たことあるのかな?”という感じで。大和田:それは芸能界も同じです。若い人は三船敏郎さんを知らない。長谷川一夫さんも知らない。自慢話で、“昔、舞台で山本富士子さんと恋人同士の役をやった”と言っても、山本さんを知らないんだから。江本:球界でも、ひょっとして王(貞治)、長嶋(茂雄)も知らないんじゃないかと心配になりますよ。弘兼:僕らの世界でも手塚治虫先生を知らない人がいます。名前は知っていても、作品を読んだことがない。僕らの世代はまず手塚先生から入りました。トキワ荘の人たちが20代前半で描いた作品の読み手が団塊の世代。日本の漫画が世界一になったのは、団塊世代という読み手がいたからです。──時代が変わっていくなかで、今後の目標はありますか?江本:僕は人生の最後はアリゾナに住みたいね。毎年キャンプ取材を兼ねて行っていたけど、景色が最高で食い物もうまい。気候もいいし天国ですよ。弘兼:僕は歳をとったなりに漫画を描きたい。『黄昏流星群』なら、主人公の80歳のじいさんが恋をしてもいいし。大和田:僕はその役をやりたいなぁ。江本:あと、今後の希望ということでは、やっぱり苦しむ最期は嫌です。死ぬならあっさり死にたい。野村克也、サッチー夫妻は2人とも眠るような死に際でした。ここだけは師匠の真似をしたいと思っています。弘兼:理想ですよね。大和田さんは舞台の上で死にたい?大和田:そうですね、ボロボロになるまで役者をやりたいです。あと、死ぬまでにもう1本だけ監督として映画を作りたい。江本:その時はお金を払いますから、セリフなしで、バイクで通り過ぎるだけの役で使ってくださいよ(笑)。弘兼:僕は最近、残りの人生を逆算で考えるんです。ゴルフにしても、80歳までできるとして、あと5年。年に20回として残り100ラウンドです。そう考えるとゴルフの1打も、食事の一食も、おろそかにできない気持ちにはなりますね。(了。第1回から読む)【プロフィール】江本孟紀(えもと・たけのり)/野球解説者。1947年7月22日、高知生まれ。法政大から熊谷組を経て東映に入団。2年目に南海に移籍し、エースとして活躍。阪神に移籍後、「ベンチがアホやから野球がでけへん」の言葉を残して退団。引退後は政界に進出し、現在は辛口評論家として活躍。弘兼憲史氏(ひろかね・けんし)/漫画家。1947年9月9日、山口生まれ。早稲田大で漫画研究会に所属し、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。3年後に退職して漫画家の道に進む。代表作『島耕作』シリーズに加え、『黄昏流星群』では中高年の恋愛を描き、団塊世代にエールを送る。大和田伸也氏(おおわだ・しんや)/俳優。1947年10月25日、福井生まれ。早稲田大在学中に演劇を始め、中退して自由舞台に参加。劇団四季を経て、NHK朝の連続テレビ小説『藍より青く』で人気を獲得。テレビドラマ、映画、舞台、ミュージカル出演に加え舞台演出、映画監督も務める。※週刊ポスト2022年6月10・17日号
2022.06.09 07:00
週刊ポスト
団塊の世代では、1クラス50人以上は当たり前だった(写真/共同通信社)
江本孟紀氏、弘兼憲史氏、大和田伸也氏が述懐する団塊あるある「1クラスは50人以上」
 1947~1949年生まれの団塊の世代が、「後期高齢者」となる。社会保障費の負担増などを懸念する声が多いが、“当事者”はどう捉えているのか。今年、75歳を迎える江本孟紀氏(野球解説者)、弘兼憲史氏(漫画家)、大和田伸也氏(俳優)の3人が集い、若き日によくあった「団塊の世代」ならではのトークを展開する──。【全3回2回目。第1回から読む】 * * *江本:僕は(がんの摘出手術で)胃と脾臓がないのに、なぜかモノを食べられる。手術後にようやく普通の人の2倍くらいの食事量に減ったんです。もともと人の何倍食ってたんだと(苦笑)。大和田:僕らの世代は“食いしん坊”が多いですよね。常に人が多くて、とにかくしっかり食べておく習性が身についた。弘兼:小学校の時、何クラスありました?大和田:校舎を建て増しして7クラスから一気に15クラスに増えました。1クラスは50人以上。地元は福井県敦賀市で、当時の人口が5万人くらいでしたが、学校では教室にすし詰めですよ。弘兼:僕は山口の岩国で、50人8クラスでしたね。どこ行っても競争。覚えてます? 大学受験の時に私大は軒並み倍率30倍ですよ。先生が“現役で入らないと来年はもっと受験生がいるぞ。死ぬ気でやれ”と言われて、必死で現役合格しました。江本さんはプロになるまで、凄い競争ですよね?江本:高知商業は16クラスあって、1クラス58人でした。それでも野球部はひとつだし、監督も1人。何かを教わる機会なんてないので、とにかく隣の奴に勝つしかない。──皆さんは高校まで地方で、大学から上京したという点も共通項です。大和田:東京に出て最初に住んだのが田無。田んぼのそばに新築のアパートがズラッと並んでいましたね。どの部屋も2畳で、全部埋まっていた。弘兼:地方から来た学生は3畳1間が多かったですよね。2畳は狭いな。江本:僕は野球部の合宿所で6畳1間に4人でした。“牢名主”の4年生がいて、布団がびっちり。メシは老夫婦が作ってくれるんですが、最高のご馳走の時でさえ、薄い薄いカツフライが1枚だけ。弘兼:いわゆる紙カツだ。江本:最低の時は干した大根を煮たのがメインで、味噌汁に大根の葉っぱが入っている。あとはタクアンが2切れ。弘兼:“おしん”の世界じゃないですか。それでも法政は滅茶苦茶強かった。プロには進まなかったけど、ピッチャーの山中正竹さんが凄くて。江本:4年で48勝でした。弘兼:早稲田は2回くらい優勝したけど、あとは全部法政ですよ。提灯行列では法政の学生になりすまして一緒に歩いてビールを飲んだから“法政、おお、我が母校~”という校歌まで覚えた(笑)。江本:でも、大学の時が一番食えなかったですね。近所で1斤45円の食パンをよく買っていましたよ。大和田:僕は近所の八百屋さんと仲良くして、腐りかけた野菜をもらいましたね。大きな鍋で煮込んで、発売になったばかりのチキンラーメンを1個入れるだけで美味しかった。狭いアパートの部屋で芝居仲間と演劇論を語りながら鍋をつついたのは最高のご馳走でした。江本:鍋でいうと合宿所では春や秋のシーズンが終わると、1回だけすき焼きの日があるんです。4年から順に食っていくんですが、1年は糸コンしか残ってない(笑)。弘兼:団塊世代は貧しい時代もバブルも知っている。面白い人生ですよね。(第3回に続く)【プロフィール】江本孟紀(えもと・たけのり)/野球解説者。1947年7月22日、高知生まれ。法政大から熊谷組を経て東映に入団。2年目に南海に移籍し、エースとして活躍。阪神に移籍後、「ベンチがアホやから野球がでけへん」の言葉を残して退団。引退後は政界に進出し、現在は辛口評論家として活躍。弘兼憲史氏(ひろかね・けんし)/漫画家。1947年9月9日、山口生まれ。早稲田大で漫画研究会に所属し、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。3年後に退職して漫画家の道に進む。代表作『島耕作』シリーズに加え、『黄昏流星群』では中高年の恋愛を描き、団塊世代にエールを送る。大和田伸也氏(おおわだ・しんや)/俳優。1947年10月25日、福井生まれ。早稲田大在学中に演劇を始め、中退して自由舞台に参加。劇団四季を経て、NHK朝の連続テレビ小説『藍より青く』で人気を獲得。テレビドラマ、映画、舞台、ミュージカル出演に加え舞台演出、映画監督も務める。※週刊ポスト2022年6月10・17日号
2022.06.08 07:00
週刊ポスト
今年75歳を迎える(左から)江本孟紀氏・弘兼憲史氏・大和田也伸氏
江本孟紀氏・弘兼憲史氏・大和田也伸氏 団塊世代が語った「後期高齢者」のリアル
 1947~1949年生まれの団塊の世代が、「後期高齢者」となる。社会保障費の負担増などを懸念する声が多いが、“当事者”はどう捉えているのか。今年、75歳を迎える江本孟紀氏(野球解説者)、弘兼憲史氏(漫画家)、大和田伸也氏(俳優)の3人が集い、「これまで」と「これから」を大いに語り合った。【全3回の第1回】 * * *弘兼:同じ1947年生まれですが、誕生日順で江本さんが一番“お兄ちゃん”になって、僕、大和田さんと続くみたいですね。江本:僕も調べましたよ。自分が一番歳上やなと。大和田:よかった、一番下の弟なんですね(笑)。弘兼:学生時代は神宮に通いましたから、法政の江本さんの活躍はよく覚えています。大和田さんとは初めましてですね。大和田:僕はいつも作品を拝見していますよ。弘兼:同じ年に早稲田に入学したご縁もある。よろしくお願いします。今日は我々が今年から「後期高齢者」ということで声がかかったようです。江本:どうなんですかね。外国でも年寄りのことを後期高齢者みたいな呼び方で区別するんですかね。弘兼:年金や健康保険の関係の区切りなのかな。江本:日本人はやたらとそういう枠に入れたがる。弘兼:同じ年齢でも個人差はあるはずですからね。大和田:役者をやっているとどうしても役どころで考えちゃうので、僕なんか年齢を忘れてしまうんです。というのも、これまで一度も「おじいさん役」をやったことがなかった。病院長や大物政治家はやりましたが、「お父さん役」までだったんです。それがこの前の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で初めてヒロイン(上白石萌音演じる安子)の祖父役をやりました。ようやく“おじいさんの歳なんだな”と自覚しましたよ。弘兼:笠智衆さんは32歳から老け役をやったそうですが、大和田さんは見た目が若いから。ところで、みなさん地毛?江本:地毛です。大和田:地毛ですけど、染めています。『カムカム~』に出ていた時が染めていない状態です。弘兼:僕は去年、コロナのデルタ株に感染した時にもの凄く脱毛しちゃいまして。やばいと思って育毛剤をせっせと振りかけたんです。そうしたら前よりも増えちゃった(笑)。大和田:僕は役者だから見た目の年齢を管理するのが仕事ですけど、お2人も大変お若いですよね。弘兼:右手はシミだらけです。日に当たるのはゴルフくらいで、グローブをしない右手だけが焼けている(苦笑)。ゴルフはどのティから打つ?──75歳以上は免許更新も厳しくなります。皆さんは返納を考えますか?江本:僕は68歳で大型二輪の免許を取って、ハーレーダビッドソンに乗ってます。まだまだこれからですよ。両手両足を動かすから、ボケ防止にはバイクが一番でしょう。弘兼:個人差があって、80歳を超えてバリバリ運転できる人もいますから。ここに集まった人はまだまだ元気に仕事をしているし、大丈夫でしょう。大和田:僕もずっと運転はしています。ただ、去年の更新時に次は認知機能検査があったりして大変だと聞きました。江本:そうそう、認知症の試験には16個の絵を見せられて、あとで何があったかを思い出させる設問があるそうです。家でやってみたら3つくらいしか答えられなかった。これは難敵ですよ。大和田:ただ、役者としては、認知症テストは自信がありますけどね。弘兼:たしかに大量のセリフを覚えますもんね。大和田:水戸黄門の格さん役の時は、印籠を出してお決まりのセリフを言えばよかったけど(笑)、社会派の作品だと苦労します。自分のセリフを紙に書き出し、それを撮影ギリギリまで何度も読む。若い人もそうしています。江本:そうして鍛えている人たちにも、テストなんて必要あるのかな。弘兼:僕も普段は運転しますが、ゴルフの時は誰かに迎えに来てもらう。帰りがウトウトして危なそうなので。江本さんはゴルフやってますか?江本:コロナが流行りだしてから増えて、月に7~8回は行きますよ。ゴルフ帰りに眠くなったら、サービスエリアで寝ます。眠気を抑えるためにプレー後に湯船には入らないとか、そういう注意を払って安全に運転できればいいんです。後期高齢者だから返納しろというのはどうかと思います。弘兼:ゴルフのほうは?江本:5年前に胃がんの手術をしたあとは一番柔らかいRシャフトで打っていたんですが、それがSRになり、Sになった。そろそろXかなと。弘兼:じゃあ、まだ250ヤードは飛びますか。江本:いやいや200ヤードそこそこですね。これが悔しいんですよ。弘兼:僕も昔は飛んだんですが、今はいい当たりをしても220~230。若い人に軽くオーバードライブされてね。“ある意味、成長している”と考えるようにしています。江本:僕らは負けん気が強いので“クソ!”と思っちゃう。最近、70代後半の大橋巨泉さんの弟さんとラウンドすると、ゴールドティから打つんですよ。“1人だけゴールドだと嫌じゃないですか?”と聞いたら、“いやいや、セカンドでグリーンが狙える位置まで飛ばせるところからドライバーを打つのが、ゴルフの正しい遊び方ですよ”と言われました。その時はなるほどと思いましたが、やっぱりゴールドからは打ちたくないな……。弘兼:ボクは青のバックティからやります。ゴールドは嫌でしょう。ジャンボ(尾崎)さんがシニアツアーに出場しないのと似てますかね。大和田:お2人ともお元気だ。僕は坐骨神経痛で医師からストップがかかり、泣く泣くクラブを置きましたよ。(第2回に続く)【プロフィール】江本孟紀(えもと・たけのり)/野球解説者。1947年7月22日、高知生まれ。法政大から熊谷組を経て東映に入団。2年目に南海に移籍し、エースとして活躍。阪神に移籍後、「ベンチがアホやから野球がでけへん」の言葉を残して退団。引退後は政界に進出し、現在は辛口評論家として活躍。弘兼憲史氏(ひろかね・けんし)/漫画家。1947年9月9日、山口生まれ。早稲田大で漫画研究会に所属し、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。3年後に退職して漫画家の道に進む。代表作『島耕作』シリーズに加え、『黄昏流星群』では中高年の恋愛を描き、団塊世代にエールを送る。大和田伸也氏(おおわだ・しんや)/俳優。1947年10月25日、福井生まれ。早稲田大在学中に演劇を始め、中退して自由舞台に参加。劇団四季を経て、NHK朝の連続テレビ小説『藍より青く』で人気を獲得。テレビドラマ、映画、舞台、ミュージカル出演に加え舞台演出、映画監督も務める。※週刊ポスト2022年6月10・17日号
2022.06.07 07:00
週刊ポスト
団塊の高齢化で日本の人口ピラミッドは激変
2025年に後期高齢者になる団塊世代 弘兼憲史氏、江本孟紀氏らの声
 2025年に日本社会は大きな転換点を迎える。これまで社会、経済、社会保障から文化まで強い影響を与えてきた「団塊の世代」の約800万人が後期高齢者となり、国民の「5人に1人」が75歳以上、65歳以上は人口の3割を超える“超超”高齢化社会に突入する。わずか3年後に迫った。 75歳以上の後期高齢者は1990年には597万人(人口の5%)にすぎなかったが、2025年には2180万人とざっと4倍に増えると予測されている。それに対し、社会保障や経済活動の“担い手”である20~65歳の人口は同じ期間に1000万人近く減少している。30年前は「現役世代5人で高齢者1人」を支えていたのに、今から3年後には「現役1.8人で高齢者1人」を支えなければならなくなる。 この「2025年問題」は各所で指摘され、政治的にも重要課題になっている。「団塊の世代」はその上の世代の高齢者とは質的に大きく異なる。戦後のベビーブーマーである彼らは、人口が極端に多いために、生まれながらに日本の社会システムの転換を促してきた“変革者”だからである。『団塊の楽園』『世代論の教科書』などの著書がある未来ビジョン研究所代表・阪本節郎氏が語る。「敗戦という時代の変わり目に生まれ、民主主義や欧米のカルチャーに囲まれて成長した。とにかく人数が多く、小学校は1クラス60人くらいのすし詰め、入りきれずに階段を教室として使ったり、午前と午後に分ける2部授業もあった。競争が激しく、受験も睡眠4時間なら受かるが、5時間寝ると落ちる“4当5落”という言葉ができたほど。 戦後民主主義の自由の中で先を争って流行を追いかけ、物質的にも文化的にも我先に新しいものを手に入れようとする。そのパワーは“団塊の世代が歩いた後はぺんぺん草も生えない”と言われるほどであり、古い価値を引きずりながら新しい価値観を併せ持った世代でもある」 日本の教育インフラ、社会インフラはこの世代の成長に合わせて整備されていった。義務教育期間の延長で小中学校、進学率の高まりで高校、大学が増えた。住宅不足解消に公営団地が建設され、団塊の持ち家志向でニュータウン開発も進んだ。 社会に出るときには「金の卵」と呼ばれ、労働力の中核として日本の経済成長を支えてきたことは間違いない。「大消費者」でもあった。『島耕作』シリーズで団塊世代サラリーマンの出世物語を描いた同世代の漫画家・弘兼憲史氏(1947年生まれ)がいう。「我々の世代は消費意欲が旺盛で、巨大なマーケットだから経済的に常にスポットライトを浴びた。マンガの発展も、ときわ荘の漫画家たちが団塊世代を読み手として描き、我々がお小遣いで買えるようになると少年サンデーや少年マガジンなどが創刊され、社会人になるとビッグコミックのような青年漫画誌が登場した。しかし、団塊世代が高齢化して稼げなくなると、日本の消費も低迷して経済がしぼんでいった」 この世代には「オレたちが日本経済を支えた」(1949年生まれの元会社役員)という強烈な自負があるが、その影響は大きい。 企業では、大量採用した団塊世代の社員が管理職になる頃、ポストが足りずに部下のいない「担当課長」「担当部長」という役職が続々生まれた。 最も振り回されたのが年金制度だろう。団塊が年金の支え手だった時代は、豊富な保険料収入でサラリーマンの妻の「第3号被保険者」など国民皆年金制度が整備されたが、彼らの定年が近づくと、政府は慌てて年金支給開始年齢を65歳に引き上げ、65歳以降も働く人の年金をカットする「在職老齢年金制度」を導入した。受給者が多い団塊世代への年金支払いを減らすためだ。 団塊世代の高齢化とともに、年金制度は事実上の崩壊に向かっている。人間関係でもこの世代は他と異質だ。競争意識が旺盛で協調性に乏しいと指摘されることもある。現役時代は南海などでエースとして活躍し、「ベンチがアホやから野球ができへん」と発言して引退した江本孟紀氏(1947年生まれ)の同世代論である。「この世代の良さは、競争を勝ち抜いてきたという信念に強さがある。人の手を借りなくても自分でやってきた。逆にいえば、わがままで自分勝手。球界の同級生は堀内恒夫、鈴木啓示、谷沢健一、福本豊……名前聞くだけで本当に仲悪そうでしょう(笑)。球団に媚びないからコーチで呼ばれない。でも評論家としては好き勝手なことをいうから面白くて人気がある」 そんな世代が、支えられる立場になり、現役世代は「1.8人で1人」を支えなければならない。大丈夫かと心配になる。 ただ、前出の阪本氏はこうも指摘するのだ。「団塊世代は元気な人が多く、“人の世話になりたくない”とウォーキングやジム、ヨガに通うなど介護予防をする人が8~9割にのぼる。ここで多くの高齢者が要介護にならなければ、日本は変わるのではないか。2025年は団塊の世代が最後に世の中を変える機会になるかもしれません」※週刊ポスト2022年3月4日号
2022.02.18 16:00
週刊ポスト
親しい友人がいなくても問題ない?(写真は元参議院議員の筆坂秀世氏)
老後に友人は必要ない?「ジジイに近づくのは詐欺師くらい」の意見も
 友人がいない老後は不幸だ――そんな世間の思い込みに苦言を呈するのは元参議院議員の筆坂秀世氏(73)だ。「相談したり世話し合う友人がいないことが寂しいだなんて、余計なお世話だよ」 そう切り捨てる筆坂氏は、「親しい友人がいない」という高齢者は、(2021年「高齢社会白書」の)3割より多いとみている。「高齢になると友人付き合いは間違いなく減る。私もかつて政治活動で付き合っていた連中とも音信不通みたいなもの。コロナ前には政界の後輩や同年代の元政治家とは月に2、3回は飲んでいたが、それも全くなくなった。今でも後輩から飲みの誘いのメールはくるけど即断わっている(笑い)。年に4、5回やっていた講演も行けば参加者との交流で会食したりしたけど、今は断わっているからそれもない。 正直なところ、交流や講演会も結構疲れるものだったから、なくなってから楽になったよ。コロナ禍を理由に友人付き合いが減った部分もあるけれど、今となってはそれほど必要でもなかったんだろうと思いますね」 友人付き合いの代わりに増えたのが、妻との時間だ。筆坂氏が続ける。「20年前は何の苦にもならなかったことが今は苦になるからね。年を取ると老化現象として精神的なスタミナが擦り切れていく。我慢や堪えることができなくなってくるから、他人との付き合いも難しくなってくる。僕も気を付けていて、近所づきあいとして同年代夫婦と挨拶して立ち話くらいはするけど、自宅に遊びに行ってどうこうということはない。そもそも、60過ぎたジジイに“友達になりたい”って近づいてくるのは詐欺師ぐらいだろう(笑い)。 この年になって人に頼るようなことはしたくないから、相談や世話をし合うような関係は女房だけでいいんです。子供たちにだって世話になりたくないのだから、友人に相談したり世話になるなんて論外だよ」 ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(81)も、「友人」の役割が変わっていると語る。「一人で抱えきれないような問題や込み入った相談は、友人ではなく家族で済ませます。高齢者になって主に気になるのは法律関係と医療関係ばかり。それらは専門家に話せばいい。友人というのは、僕にとっては第一線から身を引いてぽっかり空いた時間を埋める気晴らしのような関係でいい。何でも相談したり世話し合ったりするような“親しい友人”は必要ないと思っています」「自信がない人ほど欲する」 しかし、多くの友人に囲まれてアクティブに過ごすことが「勝ち組」というイメージに縛られている人も少なくはない。芸能界から財界まで幅広く交流のあるファッションデザイナーのドン小西氏(70)はこう話す。「僕ら世代のリタイヤ組は毎日食事会だゴルフだとやってきたけど、いざ職を離れると誰からも『会いたい』とは言われなくなって一気に交友関係がなくなっている。仕事がすべてだった人が多いから落差がすごいんだよ。 自分に自信がない人ほど人脈やモノを収集しようとする。だからいまだに学校の同窓会なんかにしがみついて仲間を気取ってみたり、ちょっとした繋がりしかないのに無理して『○○会をしよう』『旅行しましょう』と一生懸命集まろうとする。“残された人生を謳歌しよう”を合言葉みたいにしてさ。僕はもれなく断わっているけど、そういう老後の友達作りに必死な人が増えているね」 高齢者に友人がいないことが社会問題として騒がれることによって、「友人を増やさなければ」と焦ってくる人もいるだろう。『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』など中高年の生き方に関する著書も多い漫画家の弘兼憲史氏(73)が語る。「仕事を辞めて交友関係がなくなったから、今後は地域社会に参加しようとなっても、特に男性の場合はそれまで地域行事に参加するような人は稀ですから知らないことばかりでしょう。 新たに友人を作ろうとしても、その地域の人と気が合わないこともありますし、無理して友人を作ろうとしたコミュニティに危険が潜んでいることだってあり得る。 60過ぎて必要のない友人をわざわざ増やすようなことは避けたいものです」 友人ができないのではなく、いらないだけ――それも一つの生き方だ。※週刊ポスト2021年7月9日号
2021.07.04 07:00
週刊ポスト
友人がいないことは問題なのか?(写真は弘兼憲史氏)
「60歳を過ぎたら友人はいらない」弘兼憲史氏、鳥越俊太郎氏らの意見
 多くの友人に囲まれて、毎週末のようにレジャーに出かける――若者が思い抱く“リア充”のイメージだが、はたして高齢者にも当てはまるのか。 内閣府の意識調査でわかった高齢者の「交友関係の貧困」が社会問題として取り沙汰されている。ところが、当事者からは「余計なお世話」との声も聞こえてくる。〈高齢者の3割「友人いない」〉。政府が2021年度版「高齢社会白書」を閣議決定した6月11日、メディアにそんな見出しが躍った。 60歳以上への内閣府の意識調査で、家族以外で相談や世話をし合う親しい友人がいるかと尋ねたところ、「いない」と回答した人が31.3%(2015年調査では25.9%)で、アメリカ、ドイツ、スウェーデンと比べて日本が最も高い数字になったという。 政府は高齢者が地域社会から孤立しないよう社会活動への参加を促す取り組みを推進する方針だ。 だが──。そもそも友人がいないことは問題なのか。『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』など中高年の生き方に関する著書も多い漫画家の弘兼憲史氏(73)は、「むしろ、なぜ友人が必要なのかを聞きたいですね」と疑問を呈する。 弘兼氏は、60代に入ると持ち物だけではなく人間関係も“断捨離”して身軽になることを勧めている。「友人が多いほうが豊かな人生だと思っている人は多いのですが、60歳になってからは信頼できる一握りの友人がいればいいものです。 交友関係が広ければそれだけ冠婚葬祭なども増えていき、それほど親しくない人にも時間やお金を消費することになります。それでも友人をどんどん作りたいという人は別ですが、実は多くの人が友人関係を減らしたいのが本音です。 特に男性の場合は、60歳までは仕事の人間関係がほぼすべてだったはず。定年後は気力、体力も衰えてくるので、昔の付き合いの会合にも次第に行かなくなる。仕事を辞めれば友人がいなくなるというのは自然な流れだと思います」 友人がいないことは、決して恥ではないのだ。「傷の舐め合いはいらない」「友人がいないという感覚は、なんとなくわかります」。そう語るのはジャーナリストの鳥越俊太郎氏(81)だ。年齢を重ねることで、友人関係の変化は実感していると言う。「僕も75歳ぐらいまで現役で仕事をしていましたし、第一線から退いたからといって新聞記者やメディア関係者など付き合いがなくなるわけでもありませんでした。ただ、80歳に近くなると、さすがにそうしたことも減っていきます。今でもぽつぽつと会食する機会はありますが、社会の日常活動からは一歩外れてしまったとは感じます」 現役時代には想像もしなかった世界に立たされていると鳥越氏は語る。「友人と付き合うにも、どこかに出かけるには体力が必要だし、ある程度お金に余裕があるほうが動きやすい。でも体力もお金も減ってくれば外に出るのも友人と会うのさえもおっくうになってしまいますよ」 芸能界から財界まで幅広く交流のあるファッションデザイナーのドン小西氏(70)は、終活の一環として、人間関係をダウンサイジングした。アドレス帳に登録された5万人を280人まで減らしたと言う。「仕事も人間関係も、今は要らないものは捨てて質を重視しています。LINEの連絡先も200人くらい消しましたが、面白いことに、社交辞令で適当に返事をするために使っていたスタンプを使わなくなりましたね」 名刺交換をして人脈を築くことが自分の成長につながったのは若い頃の話で、60代、70代となると違う心境になると語る。「半世紀くらい社会人人生を送ってきて、いざリタイヤすると『この50年は何だったんだ』って人生のほとんどが空洞化したような気分にさせられるんだ。だから急に家族愛に走って孫の面倒をみようとして迷惑がられる人もいる。 友人関係をなんとか維持しようとして無理して会って、傷の舐め合いをする人も多いよ。そんな場での会話といえば、月並みな世間話に、ありふれた時事ネタ、政府やテレビに出ている人の批判で終わる。つまらないし、虚しいだけ。そんなどうでもいい友人はいらないと僕は思っている」※週刊ポスト2021年7月9日号
2021.07.03 07:00
週刊ポスト
著名人が実践する人生のダウンサイジングとは?(写真提供/ドン小西)
ドン小西氏、弘兼憲史氏らが実践する「人生のダウンサイジング」
 ファッションデザイナーのドン小西氏(70)は現在、仕事のダウンサイジングを実践中だ。一時は200人の従業員を抱えていたが、2018年に4つあった会社を1つにした。「事務所を構えて人を雇うというのは、50代の頃は頑張れたけど、年齢に応じて背負うものは違ってくる。毎日会社に顔を出して従業員に気を配っていると、人生の最後を飾ろうとする自分としては違うなと思った。 4つの会社を持って頑張れば年間10億は稼げたと思うよ。しかしもうお金ではないんだよね。そりゃ僕だって一時期は何億稼げるんだろうと思いながら仕事していた頃もあったけど、虚しかったよ。今はとにかく量より質。本当にやりたいと思う仕事だけに専念している」 会社を1つにしたことで、10枚持ち歩いていたクレジットカードは2枚になったという。「スリム化したことで会社の経費も5分の1になった。そうなると心にも余裕ができて、税金も“社会貢献だ”と思えるようになってセコい節税もしなくなった。本当にカッコイイ大人は、“足し算”じゃなくて“引き算”なんだよ」連絡先を消去 ドン小西氏は仕事と同時に、人間関係もダウンサイジングしている。「アドレス帳の登録も5万人近くあったのを280人ぐらいに厳選した。先日、LINEの連絡先も200件くらい消しました。面白いことに、薄い付き合いの連絡先を消去したら、LINEのスタンプも使わなくなった。スタンプって社交辞令で適当に返事する時に便利なものでしょう。濃い付き合いの人だけに人間関係を厳選したら、スタンプではなく、ちゃんと文章で返すようになったんだよ(笑い)」 漫画家の弘兼憲史氏(73)は、5年前に著書『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』で「弘兼憲史、身辺整理始めました」と宣言した。弘兼氏が語る。「60歳まで生きてきたら誰しもいろんなものを抱えている。残りの人生を大きな荷物を抱え込んだまま過ごすよりも、手ぶらで身軽に生きたほうがいいと私は思うのです」 そうして整理するものの中には「人間関係」も含まれると言う。「この年代になると、友人やその家族が亡くなったり、友人のお子さんが結婚したりと、冠婚葬祭がどんどん増えます。顔が広い人は、そう親しくない人にも時間やお金を消費することになる。60歳からは表面だけの付き合いの友人は減らしたほうがいいでしょう。 家族関係も同じで、子供たちが成人したら、家族一丸でいる必要はない。今の時代、親が子や孫のためにお金を残す必要もないですし、人生の後半はそうした“家族のしがらみ”を捨てて、迷惑をかけない範囲で自分が生きたいように生きる。必要のないものはどんどん捨てていったほうが身軽で動きやすくなりますし、人生が楽しくなりますよ」 著書に『明日死んでもいいための44のレッスン』などがある作家の下重暁子氏(84)は、シンプルな生活にこそ、幸せを感じると話す。「世の中にはものが溢れていて、テレビなどでの評判に惑わされて、何でも欲しくなったりする。だけど、それは本当に自分が欲しいものではないの。世間に動かされて余計なものを増やすことは馬鹿馬鹿しいでしょう。 人間関係も同じで、私は大切な人とは死ぬまで付き合いたいし、大切と思わない人とは付き合わない。 自分の好きなもの、大事なもの、好きな人とだけ接して生きていたいと思うのは、それが私の証だからですね。その人の生き方は、持っているものに表われます。年をとればとるほど寂しくなるものだから、本当に大事なものだけを側に置くべきです」 背負う荷物を減らすと、大切なものが見えてくる。※週刊ポスト2021年4月9日号
2021.04.03 16:00
週刊ポスト
弘兼憲史氏はコロナ禍での表現様式をどう考える?(写真/共同通信社)
島耕作がコロナ感染 弘兼憲史氏「ワクチン接種シーンも入れる予定」
 人気漫画『相談役 島耕作』で主人公・島耕作が新型コロナウイルスに感染した。フィクションにどこまで現実を反映させるかは作り手にとっては大きな問題。コロナ禍の新たな表現様式について作者の弘兼憲史氏が見解を述べる。 * * *「73歳の島耕作がコロナに感染」の反響は、思いのほか大きかった。「もしかしてこれで連載を終了させるのか」なんて声まであがっているようですね。 島耕作には早くからマスクをさせていました。新型コロナの感染拡大で皆がマスクをし始めていたのに、リアルな世界を描いている『島耕作シリーズ』でマスクがないのはおかしい、と。他にはまだ誰も描いていなかったはずです。『島耕作シリーズ』は現実社会と同時に進行している情報漫画です。まさにコンテンポラリーですから、コロナがまったくなかったことにはできないのです。 2度も緊急事態宣言が発出され、1年以上大変な状況になっているのに、漫画やテレビドラマを見ても本来ならマスクをしているはずの登場人物がしていない。正直、描かないのはずるいなと思っています。僕だけ苦労しているから(笑い)。 現在、島耕作は嗅覚・味覚障害からコロナ感染が発覚して、宿泊療養施設に入りました。 現実世界でも、病院やホテル療養を嫌がる人が多いというので、ネガティブには描かないように気をつけています。「飯がまずい」も、味覚障害で味がわからないから平気だとしたり、療養先も「住めば都」の感じを出しています。 ホテル療養については、実際に経験した50代会社経営者に取材をして、できる限り忠実に描いています。 今後の展開としては、ワクチン接種のシーンも入れる予定です。僕も73歳なので優先的に打つことになるはずですから、写真を撮ってすぐに描きますよ。 コロナがなかったら描けなかったストーリーが生まれているから、かえって意欲がわいています。 マスクに口紅の跡がついて……というのはすでに描きましたが、かの名作映画のようにガラス越しのキスシーンなど、新しいラブシーン様式にも挑むつもりです。※週刊ポスト2021年3月19・26日号
2021.03.08 16:00
週刊ポスト
大学病院がコロナ重症者受け入れに消極的では、軽症者等の受け入れまで逼迫するが…(イメージ)
安楽死の法制化論争 「死ぬ権利」は認められるべきなのか
 日本でも安楽死法制化の議論がたびたび取り上げられるようになった。この問題について漫画家の弘兼憲史氏はこう指摘する。「我々団塊世代は2025年には後期高齢者となります。『長寿国』といっても裏返せば若者に社会保障の負担をかける社会です。世界の潮流のように、日本も真剣に安楽死を法制化する時代がきています。 寝たきり状態でも生き続ける――それでは100歳まで生きたとしても万々歳とは言えません。僕の父親は亡くなる前に半年ほど延命治療を受けました。全身チューブに繋がれた姿を思い浮かべると、一刻も早く楽になりたかったのではないかと考えてしまう。ただ生きるということにはあまり意味がないのです。 人間には生きる権利がある。同様に、本人の意思で『死ぬ権利』も認められるべきではないでしょうか」 一方で『死ぬ権利はあるか』著者で横浜市立大学准教授の有馬斉氏はこう危惧する。「日本でも『本人が望むのなら安楽死を認めるべきだ』という意見が散見されますが、安易に肯定するのは危険です。 たとえば貧困層など社会的弱者が安楽死の条件である『耐えがたい苦痛』を訴えた場合。これが富裕層なら医療や介護の面でもっとサポートを受けることができる。 しかし貧困層は経済的な理由で『耐えがたい苦痛』を取り除けないかもしれない。こうした違いで安楽死できるかどうかに差が出てくるのは望ましいことではない。『死ぬ権利』と一言に言っても、その裏には本人の意思や病状だけでなく、社会的な背景が重層的に絡んでくる。こうした点もしっかり考慮されるべきだと感じます」※週刊ポスト2021年1月15・22日号
2021.01.14 16:00
週刊ポスト
弘兼氏も島耕作もまだまだ現役だが(時事)
母を亡くした弘兼憲史「僕は安楽死で気持ちよく死にたい」
 漫画家の弘兼憲史氏(73)は、代表作『課長島耕作』で自分と同年齢の団塊世代サラリーマンを主人公に、男の出世や恋愛模様を描いてきた。現在、70代となった島耕作は相談役として活躍中だが、団塊世代にも確実に人生の最後のステージが近づいている。これも代表作である『黄昏流星群』では中年・熟年・老年の恋愛をテーマにしており、生涯輝き続ける人生が弘兼作品の魅力のひとつだ。ちなみに弘兼氏の妻である漫画家の柴門ふみ氏は、2020年に大ヒットしたドラマ『恋する母たち』の同名原作で、40代女性たちの不倫を赤裸々に描いた。夫妻はバブル時代からコロナ禍の令和に至るまで、作品を通じて常に日本人の「半歩先」を見せることでファンを惹きつけている。 社会人としても男(あるいは女)としても、最後の時まで「現役」でありたいというのは、おそらくすべての人の願いである。しかし、現実はそう理想通りにはいかない。『週刊ポスト』(2021年1月4日発売号)では、国論を二分する22のテーマについて、各界論客が激論を戦わせている。弘兼氏は「安楽死に賛成か反対か」というテーマで「賛成論」を述べている(反対論は横浜市立大学准教授の有馬斉氏)。「生涯現役」を描き続ける弘兼氏は、実は同誌取材の直前に実母を亡くしていた。記事では収録されなかった亡き母への思いと、自らも安楽死を望む考えを改めて語った。 * * * 2025年には、我々すべての団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、2030年頃になると次々と死んでいきます。そうすると、今のコロナ禍のように、病床が足りなくなって、本来なら病を治して社会復帰するはずの人たちのための病院を寝たきりの老人が占領するような現象が起きるでしょう。「長寿国」というのは、裏を返せば若者に社会保障の負担をかける社会です。だから僕は、「安楽死」を真剣に検討する時代だと思っています。 うちのおふくろが10日前に死んだんですよ(取材は2020年12月21日)。緩和ケアのために最後は入院しましたが、がんでずっと意識不明でした。医師からは「胃ろう(チューブで胃から直接栄養を摂取する医療措置)をしましょう」と言われましたが、姉たちと話して、痛みをとってあげるのが一番だろうということで、「やめましょう」「このまま逝かせましょう」と決めました。最後に会って東京に戻ってきたら、その3日後に亡くなりました。 僕は終末期に痛みがあるなら早く逝かせてあげたほうがいいと言っていたのですが、他の家族は「おばあちゃんをもっと生きさせてあげたい」と言う。「もっと生きてほしい」というのは、もちろんその人のために言ってるのだろうけど、本当にその人のためになっているのかはわかりませんよね。本人の意思より家族の希望が優先されるというのは、エゴといえばエゴなんです。 やっぱりお医者さんは使命感もあるし、自分たちの技術も磨いていきたいから、医学の発達によってみんなが長生きして延命できるようになっていく。でもその技術は本当に社会のためにも本人のためにも必要なのか。みんなが100歳まで生きるようになったら誰が面倒を見るんですか? それは国家じゃないですか。そうなると税金はどんどん高くなる。残酷な言い方になりますが、医学の進歩は国の無駄を増やしている面がある。 どこかで、もっと人の死をシビアに見なければいけなくなる。死にたいという人には死んでいただくという世界が必ずやってきます。日本的な「肌が温かくて呼吸さえしててくれればいい」といったナイーブな死生観は現実的に受け入れられなくなっていくでしょうね。もしいま安楽死が認められるのなら、僕だったら痛い思いをして半年生きるよりも気持ちよく死にたい。実際は僕らが死んでから、まだ相当あとの世界かもしれませんが、そういう社会を覚悟しなければいけないのではないでしょうか。
2021.01.10 07:00
NEWSポストセブン
今年、傘寿を迎えたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(時事通信フォト)
おじいちゃん呼称問題 「くそジジイのほうが嬉しい」の声も
 人生100年時代、若々しいシニアは増えている。そんな彼らがモヤモヤしているのが「呼称問題」。高齢者を「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ぶことはあるが、呼ばれる方が不快に思うこともあるようだ。年齢の呼び方で言えば「還暦」「古稀」といった節目はあるが、男性はいつから「おじいちゃん」とされるのか。 漫画家の弘兼憲史氏(73)が語る。「理屈で線引きするならば、後期高齢者の75歳からでしょう。昔と違って今の60代は若いし、まだバリバリ働いて脂っぽいところを残しているけど、それが75くらいになると枯れてきますからね。その境目は非常にあいまいですが、仕事をリタイアすると自分がジジイだという心境になってくるものです。現役時代の肩書きや、社会での存在感が失われてくると、おじいちゃんだと実感するタイミングになります」 弘兼氏の場合、孫が誕生してからは家族から「おじいちゃん」と呼ばれるが、外では経験したことはないという。現役でバリバリ働いているかどうかの差はあるだろう。 さらに、社会的地位で判断される面もあるという。「高齢であっても、国会議員や会社の社長、重役などに『おじいちゃん』と呼びかけたりはしないでしょう。テレビでは農業や漁業をされている高齢者には、『おじいちゃん』と話しかけたりする。見た目だけでなく、職業や社会的地位で“なんとなく偉い人”はおじいちゃんから除外するという妙な線引きはあります。ひどい話ですよ」(弘兼氏) そうした相手の意識も感じ取れるから、受け取る方も複雑なのだろう。 今年、傘寿を迎えたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(80)は、こんな心境の変化があったという。「私が思うに、現役か、そうじゃないかが『おじいちゃん』の境目だと考えます。現役を終えて、家族のなかで皆に敬愛されているという存在が『おじいちゃん』だと思います。私の場合、コロナ前までは講演などの仕事があって、まだまだ現役だと思っていましたが、コロナ禍で仕事がなくなって、今、社会的には何にもすることがない。その最中に、『もうおじいちゃんだな』と思いましたし、他人からそう呼ばれても、『そうだろうな』と受け止めるでしょうね。もちろん、リモートでの講演などが再開予定なので、現役に戻ればそうは言わせませんけどね(笑い)」見た目か、体力か 鳥越氏は、肉体的にも「おじいちゃん」の境目を痛感することはあると言う。「『船頭さん』という童謡の歌詞に『今年六十のお爺さん』というフレーズがありましたが、今は平均年齢も延びたから60代は元気です。でも70歳を超えると“おじいちゃん度”は上がるんです。体のあちこちが痛くなりますし、内臓も弱くなってがんなどの病気も患います。私は鏡を見ても皺も少ないし、見た目はまだ若いつもりです。でも80歳だからわかりますが、体はボロボロです。老化を受け止めるのは心理的にも精神的にも一概には言えませんが、やはり徐々に自覚していくものです。複雑ではありますが、私もおじいちゃんと言われても仕方がないと思います」 老いたと自覚しても、他人からの呼ばれ方によって受け止め方は変わってくるようだ。前出の弘兼氏は言う。「パナソニックグループ創業者の松下幸之助さんは晩年も『おじいちゃん』とは言われず『松下幸之助翁』と呼ばれていました。『翁』が、年寄りとバカにした感じもなく敬称として成立していましたね。 私の場合は、若い女性からなら『おじいちゃん』より『くそジジイ』と呼ばれたほうが嬉しい。『おじいちゃん』だと弱々しい感じがしますが、『くそジジイ』だとまだ色気があって、『私に迫ってくるこのくそジジイが』というニュアンスだから、元気が出ます(笑い)」 シニアに関するマーケティング活動を行なうポータルサイト「シニアライフ総研」代表の渡瀬英治氏は「感覚値になりますが」と前置きしつつ、こう分析する。「公共機関や映画館、アミューズメント施設の『シニア割引』を使用したり、その適用範囲に該当することを認識するたびに、自分はシニアだという意識が醸成され、『おじいちゃん』であることを受け入れていく。しかし、“アラ70(70歳前後)”の属性として、他人とコミュニケーションを多く持ち、活動的・能動的に生活している人で『自分は年齢の割に若い』と自負する層は、お孫さんから『おじいちゃん』と呼ばれても気にしませんが、第三者から呼ばれると自分の特性を否定されたと感じ、嫌悪感を持ちやすいのではないか」 女性に年齢を聞くのは御法度とされるが、男性にとっても「いつからおじいちゃん」問題は非常にデリケートではあるようだ。※週刊ポスト2020年11月6・13日号
2020.11.05 07:00
週刊ポスト
「呼称」をめぐる議論は女性だけでなく男性にも(イメージ)
「おじいちゃん」と呼ばれて嫌な気持ちになる高齢男性の心理
 朝日新聞(10月9日付)の「声」欄に掲載された〈「おばあちゃん」でなく名前で〉という72歳女性の投稿に、大きな反響が起きている。それは、あるテレビ番組で女性リポーターが農産物を収穫する年配女性に何度も「おばあちゃん」と呼びかけたことについて言及していた。〈その女性は「100歳までやるから、あと25年はがんばりたい」と話していたので75歳。私と年齢は変わらない。私はまだまだ若いつもり。孫以外の人におばあちゃんと呼ばれたくない。相手の名前を知っているなら、おばあちゃん、お母さんと呼ぶのではなく、名前で呼んでほしい〉 この投稿を端緒に、テレビ番組でも「いつからおばさん問題」が取り上げられ、「呼称」をめぐる議論が女性だけでなく男性にも広がっている。 街中や病院で、他人から「おじいちゃん」と呼ばれたら──ムッとする男性は少なくないだろう。 元参議院議員の筆坂秀世氏(72)は、「赤の他人から『おじいちゃん』呼ばわりされるのは不快でしかない」と語る。「体の不調や見た目で『おじいちゃん』と自覚するのは自分であって、他人が判断することではない。私は70歳を超えているけど、腰も曲がっていないし、シャンとしていると思っている。膝が痛いとかはあるけれどちゃんと治そうと努力している。孫以外から、『おじいちゃん』と呼ばれるのは、死ぬまで嫌だね。 私は議員時代も、街頭演説で聴衆に向かって『おじいちゃん』『お父さん』と声をかけたことはない。名前が分かっていたら名前を呼ぶし、初めて会った人には『おたくさん』と、身内と他人とでは線を引いていた。他人を不快にさせないために、そういう気遣いが必要だと思う」 筆坂氏のように家庭で孫から「おじいちゃん」と呼ばれていればまだ“免疫”があるものの、孫のいない中高年はさらに複雑な気持ちになるようだ。2年前に定年退職した自営業のA氏(67)はこう話す。「うちには孫はいません。だから周りの同年代と比べても“おじいちゃん”という実感はない。自由に旅行や趣味に時間とお金を費やして、それこそ今風の若々しい夫婦だと羨ましがられているんです。 それが電車に乗っていた時に、中学生から『おじいちゃん、どうぞ』と席を譲られた時にはとにかくショックでした。年寄りという自覚なんて一切なかったのに、『おじいちゃん』扱いされるとこんなに傷つくのかと。もう1年ほど前のことですが、いまだに心に残っています」 投稿にもあったように、テレビ番組などでは、町中で出会う初老の男性に親しみをもって「おじいちゃん」と呼び掛けるシーンはよく見られる。 呼びかけるほうに悪意はないのに、なぜ嫌な気持ちになるのか。漫画家の弘兼憲史氏(73)はこう読み解く。「『おじいちゃん』と呼ばれると、若干、上から目線を感じますよね。“労わってあげるべき存在”と位置づけて、優しくそう呼びかけるのでしょうが、その発想自体が上から目線です。その後に続く言葉も子ども扱いをしたような口調になっていきますし、バカにされているような気分になるわけです」※週刊ポスト2020年11月6・13日号
2020.11.04 07:00
週刊ポスト
ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏
吉田尚記アナ×佐渡島庸平氏が語り合う「最強の相づち」
 生活様式が変われども、人とのコミュニケーションは避けては通れない。しかし、話題を投げても会話のキャッチボールが上手くいかず、ついにはお互い沈黙……会話が苦手な人、いわゆる「コミュ障」と呼ばれる人が少しでも会話を盛り上げる方法はないのか──「元コミュ障」を自称するニッポン放送アナウンサー・吉田尚記氏と、作家とのコミュニケーションに悩む敏腕漫画編集者の佐渡島庸平氏(株式会社コルク代表取締役社長)が、会話術について語り合った。 * * *吉田:そもそも編集者は作家とのやりとりを経て作品を作り上げますよね、コミュニケーションが苦手だと大変ですよね。佐渡島:これまで、自分はコミュニケーションが上手いっていう自己認識があったんですよ。でも、僕のコミュニケーションって、どんどんその人を深掘りしていって、その人がこれまで考えていなかったことを引き出すってことに特化していて。たしかにそのやり方は、すでに第一線で活躍されている方を相手にするにはとても有効なんです。ベテランの作家さんにはそんなにズケズケ聞く人もいないから、新鮮に感じてもらえる。 ただ、新人の方には萎縮されちゃうときがあるんですよ。このSNS時代の、新しい才能を持つ人たちを伸ばしていこうとしたときに、今の僕の話し方と聞き方ではだめかもしれないと思って。吉田:他人とのコミュニケーション方法について、これまでたくさん相談受けてきましたけど、それは初めて聞くニーズですよ(笑)。佐渡島さんの今までの実績を考えれば、むしろ佐渡島さんの深堀りに応えられる人たちこそ、才能ある人ってことじゃないですか。編集者としては、そのままでもいいんじゃないかって思うんですけども。佐渡島:今まではそういう攻めた質問にも負けずに答えられる強い人が「才能ある人」だと思っていたんですよね。「才能というのは個性で多様だ」っていいながらも、人に勝つような“強さ”が必須だと。マスメディアという枠の中で、限られた数の席を勝ち取るためには、そういう強さはどうしても必要でした。 でも、SNS空間やVR空間というものが登場して、マスメディアという場では席を勝ち取れなかったような人でも、才能を発揮できるようになった。ようやく才能にも多様性があるって思えるようになったんです。 編集者もこれからは、吉田さんの言うところの「コミュ障」だけど才能がある、って人とも向き合う機会が凄く増えてくると思うんです。僕はそういう人たちと、より上手くしゃべり、その人たちがより才能が認められるようなかたちに引き上げていく必要がある。そのときに僕の相手にたたみかけるような話し方、聞き方っていうのは、違うだろうと思ったんです。吉田:佐渡島さんはまず、もっと驚いたほうがいいと思います。佐渡島:驚く?吉田:これはラジオパーソナリティの技術、というか半分は心構えですけど、何事にもまず驚いたほうがいいんです。例えば「あるアーティストの新曲を先行解禁します」ってことがあるじゃないですか。でも、「先行解禁です、すごいでしょ」ってただ言ってもリスナーは意外と盛り上がらないんです。 それよりは「え?」って驚いたほうがいい。「え? この曲、本当に解禁しちゃっていいんですか」ってリアクションをすると、リスナーも「お? 何それ」ってなるんですよね。若干馬鹿っぽく見えるくらい驚いたほうが、スペシャルな雰囲気がリスナーに伝わるんです。佐渡島:なるほど。僕も漫画家には「キャラクターには絶対驚かせたほうがいい」って話をするんです。漫画のキャラクターに、感情を出したほうがいいよって。すべての強い感情は必ず驚きのあとにあると。喜びも悲しみも、全部驚きのあとに出てくるものだから、その驚き方にキャラクターらしさが表現される。だから重要なシーンの前には驚いてから感情というのを徹底して演出しましょうっていうんですね。吉田:それなのに、佐渡島さんご自身があまり驚かないじゃないですか。佐渡島:確かに(笑)。昔、堀江貴文さんがよく「想定内」って言っていたじゃないですか。僕も頭の中で、事前にいろいろシミュレーションしてしまう人なんですよね。だから目の前で何か起きても、うまく驚けない(笑)。すると、どうするといいんでしょう? 吉田:他人とコミュニケーションをするとき、驚いたほうが相手はしゃべりやすいんですよね。それに、想定していても驚けると思うんです。最新刊『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)にも書きましたが、最強の相づちはまさに「え?」なんですよ。佐渡島:……僕、今「え?」って言ってみようと思ったけど、できなかった(笑)。「なるほど」は使わないほうがいい吉田:佐渡島さん、ついさっき「なるほど」って相づちしましたけど、この「なるほど」を僕はあえて使わないようにしているんです。「なるほど」って「あなたの言ったことを理解しました」ってまとめなんですよ。だから話が終わっちゃうんです。佐渡島:それで言うと、僕って打ち合わせで漫画家さんに対して「なるほどは禁止ね」って言っているんですよ。「なるほど」って理解しているなら、こうして打ち合わせをする必要がないわけですから。でも「え?」って相づちなら、絶対に会話に続きがありますもんね。なるほど……あ、なるほどって言ってしまった(笑)。吉田:ただ、「なるほど」もトーン次第で上手く相づちに活用できるんですよ。佐渡島:え? それはどういう意味ですか。お、今、自然に「え?」って言えましたね(笑)。吉田:相づちが会話で活きるかどうかは9割がトーンで決まるんです。「え?」って相づちはトーンが“驚き”で統一されているんですよ。だから淡白に「なるほど……」と言うのでなく、オーバーに「なるほどーっ!」って言えばいいんです。佐渡島:確かに、ほとんどの人が「なるほど」って言うのは、無難に会話を終わらせて次の話題に移りたいってときですもんね。吉田:人によっては会話を綺麗に終わらせられないって悩みもあるんですよね。だから逆に、会話を終わらせたい場合は「なるほど」で終わらせることができます。もちろん、会話を続けたいなら、「なるほどーっ!」って驚けば、相手は続きを喋ってくれるんです。佐渡島:僕、今まで「え?」っていう相づちを、自然と出てくるとき以外には使ってなかったかもしれないです。担当している新人さんたちには、「こういうふうに成長してもらおう」と思ってあらかじめプランを描いているので、たとえすごい成長をしてもそれは想定内なんですよね。でも、プランどおりにいったときも、まずは驚けばいいんですよね。吉田:驚きのことで言うと、僕は落語が大好きで。落語って、実は物語の中身が何もないんですね。あるのはサプライズだけなんですよ。ある落語研究会では、“お金のうれしそうな拾い方”というのを練習しているんです。普通に淡々と「お、500円玉落ちてる」ってやるだけでは全然落語にはならないんですけど、「ええっ! こんなところに500円が!?」ってやると、途端に観ている人を惹き付けることができるようになるんです。佐渡島:……なるほど~っ。弘兼憲史さんの「驚く力」吉田:お、今のは感情が乗ってましたね(笑)。面白い漫画も、サプライズがずっと続いてくものじゃないですか。「え?」「え?」って思いながら、ページをめくる手が止まらなくなる。だから僕は驚きたくて漫画を読んでいるんですよ。逆に、驚きがない漫画は読まないです。よくいろいろなところで引用させて頂いているんですけど、「編集の仕事というのは話を作ることではなくて、次の話を確認させることだ」って言葉は、まさに佐渡島さんがおっしゃっていたことで。佐渡島:本当にそうです。僕、漫画の作り方としてこれまで「1コマずつクイズがあるように」って言ってきたんですけど、「1コマずつ、『え?』って言わせるように」と表現したほうが、本質的なのかもしれませんね『島耕作』シリーズの弘兼憲史さんのすごさというものを、『ドラゴン桜』の三田紀房さんが、うちの新人漫画家に教えてくれたことがあったんです。なかなか芽が出なかったある新人さんが、三田さんに相談をしたんです。そしたら三田さんが「弘兼憲史って漫画家はとにかくすごいんだ」というお話をされて。なんでも、弘兼さんと一緒に旅行をしていると、彼が何にでも驚いて、面白がっていると。「ちょっと見て見て!あの人のベルトちょっと変わっていませんか?」「あの人ってどんな人だと思う?」という感じで、何にでも驚くのが上手いと。新人の漫画家って、自意識が高まって何を見ても「大したことないね」って思ったりするかもしれないけれど、むしろ驚くのが上手い、面白がりのほうが実はいい漫画家なんだよ、って話をしてくれたんです。吉田:驚くってことですけど、知識があったら驚かないかというと、むしろ逆なんですよね。知識があればあるほど驚けるって思っていまして。佐渡島:それはよくわかります。山下和美さんの『天才柳沢教授の生活』って漫画がありますけど、あれも柳沢教授がとにかく驚くのがうまい。そして読者はその驚き方を面白がっている。同じ山下和美さんの『不思議な少年』もそういうお話ですよね。山下和美という漫画家は、日常に驚くことが上手い作家だって考えると、山下和美さんの才能がすごくわかりやすい。ネット漫画でも大ヒットしているのは、ホラーだったりサスペンスだったり「驚き」をコアにした作品なんですよね。だから、もしかしたら驚きだけに集中したほうがいいんだな。 ただ、僕の場合、驚くよりも、落ち着いて分析を伝えたくなっちゃうんですよ。子どもでも漫画家でも、相手が何かできたときに驚くんじゃなくて、「次はこれだね」って言っちゃうんですよ。「なら次、これやるといいよ」って。僕の中で描いているプランにそって「次はこれ」というのを言ってしまうんですよね。そうだ、それを変えたらいいんだ。吉田:一度驚いてからだったら、それも全然いいと思いますよ。佐渡島:そうですね。落ち着きがありながら驚くのがうまい人というのを、僕は目指せばいいのかも。吉田:「目指す」とまで表現する必要はないと思うんです。驚くことって誰でも今、この瞬間からできますからね。佐渡島:やっぱり「何でも知ってるほうが偉い、そして知ってることを伝えるのがコミュニケーションだ」と、潜在的に思い込んでいたのかもしれないですね。僕はこれから、人と会話するときにうまく驚けたかなっていう振り返りを毎回するようにします。吉田:「え?」だけでいいんです。なぜ、そう断言できるのかと、僕もラジオアナウンサーになったばかりのころは、スタッフの言うことに驚かずに、意見をしてしまうタイプだったんです。でも、それをやると、本当にスタッフから愛されない、愛されない(笑)。だから、頭でっかちよりは、何にでも驚く馬鹿のほうが絶対愛されるんですよね。 あと“コミュ障あるある”と言えばいいんでしょうか、自分が詳しくない話題だと尻込みしてしまう、ということがあるんですよ。でも、「知らない」ということは実は最大のチャンスなんですよ。そこで、あえて自分の先入観や決めつけを話して、相手にその間違いを訂正してもらえばいいんです。間違ったことを訂正するときに人間は一番しゃべるので。佐渡島:先入観や決めつけを話す。それは編集者として結構、意識してやっていますね。「編集の仕事というのは、次の話を確認させることだ」ってことにも繋がる話ですけど、作家さんに「次週どうするんですか」って質問するんじゃなくて、「次週ってこんな感じですかね」って質問するんです。そこであえて定番の、ありきたりな展開を提案してみると、作家さんが「そんなつまらない展開にするわけない」ってアイデアを話しだしてくれるんです。 吉田さんの新著も拝読しましたが、どうやったら相手が話してくれるかに終始されていて。まさに吉田さんの会話への苦労が窺えますね。吉田:これも情けない話ですけど、しゃべることが苦手なのにラジオアナウンサーになってしまったことで、一時期ひたすらコミュニケーション本を買って読み続けていたんです。でも、コミュニケーションが苦手な人が本当に欲していることが、どこにも書いてないんですよ。佐渡島:え、そうなんですか。吉田:「人に話しかけることが怖いと思ったら、まずはちょっとだけ自信を持ってみましょう」というようなことばかり書いてあるんです。それができたら苦労しないじゃないですか。そういう精神論ではなくてちゃんとした技術を広めたいですね。佐渡島:なるほど……それでは半年後ぐらいに、僕が驚くことがうまくなっているかどうか、しゃべりが根本から変わっているかどうか、どうぞ楽しみにしてください。吉田:もし変わっていたら、本のおかげだって言っといてください(笑)。佐渡島:もちろんです(笑)。本日はありがとうございました。◆取材・文/坂下大樹【プロフィール】吉田尚記(よしだ・ひさのり)/1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。ラジオ番組でのパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など幅広く活躍。また漫画、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、「マンガ大賞」発起人となるなど、アナウンサーの枠にとらわれず活動を続けている。2012年に第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。新著『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)が話題。【プロフィール】佐渡島庸平(さどしま・ようへい)/1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。
2020.09.05 16:00
NEWSポストセブン
弘兼憲史氏、コロナで「アクティブじじい」を島耕作に託す
弘兼憲史氏、コロナで「アクティブじじい」を島耕作に託す
 緊急事態宣言が解かれても、「急に出歩いていいのだろうか」「もし周りに迷惑をかけてしまったら」と不安は尽きない。とくにゴルフ、飲み歩き、カラオケ、旅行といった楽しみは、家族からも世間からも白い目でみられてしまう。そうした行動をこれまで“生き甲斐”としてきた“アクティブシニア”たちは、コロナ後の世界をどう過ごすのか。漫画家の弘兼憲史氏(72)が語る。 * * * コロナ以降、会食とゴルフには行かなくなりましたが、とくにストレスはありません。散々やり尽くしましたから。 緊急事態宣言が解かれた後も、地下にある大衆酒場とかライブハウスのような“3密”の場所に行くのは躊躇しそうです。 ゴルフは行くけど、しばらくはラウンド後にゴルフ場のお風呂に入ったりせず、シャワーを浴びてすぐ帰ろうと思います。 仕事のやり方でも、“無駄なことがあった”と気づきました。昔は編集者が直接、原稿を取りに来ていましたが、最近は原稿ができたらバイク便に取りに来てもらうだけ。何の問題もありません。 松下電器産業(現・パナソニック)のサラリーマンだった頃は、上司に「交渉事は相手の顔を見て、ニュアンスを感じながらやらなければダメだ」と言われましたが、もうそんな時代ではないのかもしれませんね。 私はむしろそんな社会の変化が楽しみです。ウーバーイーツなどの宅配サービスもどんどん利用していきたいと思います。 ただ、『島耕作』では、高級クラブで飲んだり、ゴルフ接待に勤しんだり、ビジネスで海外に出掛けたり、あるいは多くの女性と関わったりと、「人と人との密な繋がり」を描いてきたので、今後もそういった場面は出していきます。 登場人物がみんなマスクをつけていたり、「人と会って食事をするのはやめよう」と自粛をしていたら、物語が成立しなくなるので(笑い)。 アクティブシニアは私の代わりに「島耕作」に託しますよ。※週刊ポスト2020年6月5日号
2020.05.30 07:00
週刊ポスト

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