鎮痛剤として使われる向精神薬
気をつけるべき鎮痛剤はNSAIDsだけではない。長澤さんは胃痛が出た際に服用する「H2ブロッカー薬」の副作用を指摘する。
「H2ブロッカー薬によって抑制される、胃酸を分泌する作用を持つ成分である『H2受容体』は胃の粘膜だけではなく、脳の中枢神経にも存在します。そのため、薬によってブロックされてしまえば、認知機能の低下につながります。特に高齢者は認知機能障害やせん妄といった副作用が多数報告されています」(長澤さん・以下同)
つまり、痛みを取るためにのんだ薬のせいで、一時的とはいえ認知症とみなされてしまう可能性もあるということ。脳や神経に影響を及ぼす薬は、より注意が必要になる。
「うつ病の治療にも使われている『エチゾラム』は、その代表格です。ふらつきや倦怠感などの副作用が強いうえ、依存性が高いことも問題です。にもかかわらず、肩こりや腰痛などで整形外科を受診した患者に痛み止めとして、まるでラムネ菓子のごとく乱発している医師や病院もありました。事態を重く見た厚生労働省が、向精神薬に指定し処方を厳格化しましたが、いまだに鎮痛剤として処方する医師もいます」
薬そのものに依存性がなかったとしても、のみ続けるうちに常用するようになり、結果的に服用量が増える事例も少なくない。
「一度鎮痛剤をのみ始めると、症状が出ることを恐れるあまり、痛みを感じない状態であっても服用してしまうケースは少なくありません。私自身、激痛に見舞われる痛風発作が出るのが恐ろしく、予防的な意味で鎮痛剤をのんでしまうことがありました。しかし、こうした服用の仕方は、薬の摂取量を増やし、副作用のリスクを上げます。いかにしてその量を減らし、薬とうまくつきあえるかどうかが健康な体を作るカギになります」
イラスト/勝山英幸
※女性セブン2022年6月23日号