今ではすっかり面白俳優のように思われているが、注目を集めるきっかけは1979年。蜷川幸雄演出の舞台『近松心中物語』。主役・平幹二朗が腰痛で降板し、翌日から、急遽主役の気弱な商人を演じきったのだ。1980年には、アイドル学園ドラマ『ただいま放課後』で先生役。翌年は『必殺仕舞人』で、悪人に近寄るために水や泥の中に潜り、ぬーっと顔を出すと白目と白い歯だけが浮き上がる、『ランボー』や『地獄の黙示録』もびっくりの強烈な殺し技を披露。
ご本人に聞いたところ、これらのシーンのほとんどは敬愛する工藤栄一監督と考案したという。監督の「ちょっと水に入ってくれるか」の一言で溺れそうになったり、極寒にふんどし一枚でガタガタ震える。その熱意は現場で愛され、『新必殺仕舞人』の最終回でいかだに乗ることになったとき、(ここでも水)そのシーンだけのためにスタッフが特製いかだを作り、琵琶湖までロケをしてくれたそうだ。笹川刑事部長が、池やカヤックで現れたりするのは、監督の「ちょっと水に」の体当たり精神に通じている。
異色の映画『北京原人 Who are you?』では、北京原人に。宮藤官九郎脚本の異色の昼ドラマ『我輩は主婦である』では斉藤由貴に乗り移った夏目漱石の声を担当。「主婦とは昼から無駄話をし、せんべいをかじるものか」などと愚痴を言う。北京原人から夏目漱石まで演じた俳優は、この人だけだろう。まだまだ、「本田博太郎待ち」の日々は続きそうだ。