国内

久間章生・元防衛相「安倍外交を継承できる人材が自民党にいるか。非常に心配だ」

久間章生・元防衛相が安倍氏を悼む(時事通信フォト)

久間章生・元防衛相が安倍氏を悼む(時事通信フォト)

 安倍晋三元首相が凶弾に斃れた。父・晋太郎氏からの付き合いだった自民党の長老・久間章生氏(81、元防衛相)が先に逝った後輩を悼む。

 * * *
 第一次安倍政権で防衛大臣を務めた時、退陣の理由となった病気について「何度もトイレに行かねばならず難儀している」などとよく聞いた。聞いていたのは、閣内では私くらいだろう。

 というのも、安倍さんとは彼が父・晋太郎さんの秘書官だった頃からの知り合いで、当時運輸政務次官だった私と気軽に話す仲だった。

 安倍さんは第二次政権になってからも安全保障に力を注いだが、私と一緒の時に彼は「日本の外務省は全部アメリカの発言とイコールなんだよ」と話していた。本音かは分からないが、外務省はアメリカと二重写しだと。

 だから防衛省もそれに引っ張られてしまう。アメリカと協調するのはいいことだが、二重写しはどうか、そう懸念していた。

 安倍さん自身、野党から「対米追随」と批判されたが、当人からすれば「それは外務省がそうだから」で、本人の思いは対米追随ではなかった、ということなのだろう。

 安倍さんの外交はアメリカに引きずられるばかりではなく日本としてどうするかを考え、協調関係を築いたものと評価する。海外の要人と会って、喧嘩別れしたとは聞いたことがない。誰とも上手に付き合える点で素晴らしい政治家だった。

 特にロシア外交は非常に良かった。今はウクライナの問題があるので事情が変わったが、北方四島を抱えている日本はNATOのような対ロ強硬姿勢ではなく、それなりの協調関係が望ましい。彼はプーチンと個人的な関係も構築して、うまくやっていた。

 トランプ前大統領との関係もそうで、最初のべったりとした感じが、どんどんモノを言い合える関係に変化したように感じる。北朝鮮についても表向きは喧嘩しているが、水面下では何かやっていたのかもしれない。拉致問題解決のため、もう一回、北朝鮮に行ってやる、くらいのことを思っていたのではないか。

 安倍さんが亡くなり、外交の舵取りはどうなるか。安倍さんだからこそ、中国をやり過ごしてロシアとも付き合えた。アメリカと親しいように見せながら、譲れない部分はきっちり主張できていた。

 安倍外交を継承できる人材が自民党にいるのか。非常に心配だ。

※週刊ポスト2022年7月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

所属事務所は不倫を否定(時事通信フォト)
《星野源と新垣結衣が完全否定》「ネカフェ生活」NHK・林田理沙アナとの疑惑拡散の背景「事務所が異例の高速対応」をした理由
NEWSポストセブン
幼稚園をご訪問され、子供たちに声を掛けられた天皇陛下
天皇皇后両陛下が幼稚園をご訪問 工作の様子を見守られ「どんなものができるのかな」と笑顔で声をかけられる場面も
女性セブン
杉咲花と若葉竜也に熱愛が発覚
【初ロマンススクープ】杉咲花が若葉竜也と交際!自宅でお泊り 『アンメット』での共演を機に距離縮まる
女性セブン
5月に入り病状が急変し、帰らぬ人となった中尾彬さん
【中尾彬さん逝去】数か月体調優れず、5月に入って容体が急変 葬儀は近親者のみ、妻・池波志乃さんは憔悴しながらも参列者に感謝
女性セブン
スキャンダル写真で芸能界を震撼させた『BUBKA』
《90年代アイドルを震撼させた月刊誌『BUBKA(ブブカ)』》の創刊編集長が急死していた スキャンダル写真で物議「スクープ100万円」「複数訴訟」の全盛期
NEWSポストセブン
新しいヘアースタイルの大谷翔平
《大谷翔平の新ヘアスタイル》“切ってもらうと成績が向上する”と評判の美容師が担当 ソウルで水原被告と一緒にカット、料金は大谷が支払う
女性セブン
全国赤十字大会ではスピーチに目を潤ませる場面もあった(4月、東京・千代田区。写真/JMPA)
『虎に翼』を楽しんでいらっしゃる雅子さまと愛子さま 女性天皇への期待高まるなか、揺れるお立場に「日本初の女性弁護士の物語」を重ねられて
女性セブン
女子ゴルフ界の新星として注目を集める清本美波
【プロテストでトップ合格】女子ゴルフ界の新星・清本美波、女子大生と二足のわらじを履く18歳「目標はタイガー・ウッズ」
週刊ポスト
フリーになるも苦戦が続く上重聡アナ
《超大型連休続く?》元日テレ・上重聡アナ、「交渉しまして」古巣復帰の苦境 根強い“利益供与問題”のイメージ、自虐ネタに活路か
NEWSポストセブン
詐取の疑いで逮捕された元宝塚“大滝子”こと光原エミカ(HPより)
《『水ダウ』ざます企画に出演》元宝塚・月組トップスターが現金1000万円詐取の疑いで逮捕「ディナーショーが8万円に値上がり」ファンが察知した違和感
NEWSポストセブン
亡くなったシャニさん
《7か月を経て…》ハマスに半裸で連行された22歳女性が無言の帰宅、公表された最期の姿「遺体の状態は良好」「肌もタトゥーもきれいに見える」
NEWSポストセブン
中尾彬さん(時事通信フォト)
《“ねじねじ”で愛された中尾彬さん(81)が急逝》大病を機に始めていた“終活”、コワモテ俳優からコメンテーターとして人気を博した晩年
NEWSポストセブン