8月31日まで「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施についてパブリック・コメント募集中(e-govパブリック・コメントより)

8月31日まで「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施についてパブリック・コメント募集中(e-govパブリック・コメントより)

〈副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。副業・兼業を行う理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活できない、自分が活躍できる場を広げる、様々な分野の人とつながりができる、時間のゆとりがある、現在の仕事で必要な能力を活用・向上させる等さまざまであり、また、副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまである。〉

 また副業・兼業のメリットとしてこうも挙げている。

〈離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得る
ことで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。〉

〈本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を
追求することができる。〉

〈所得が増加する。〉

〈本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた
準備・試行ができる。〉
 
 30年間も自国労働者の所得を上げられなかった政府の体たらくはさておき、副業・兼業の良さはわかる。さらにこうも述べている。
 
〈人生 100 年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要である。また、副業・兼業は、社会全体としてみれば、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点から地方創生にも資する面もあると考えられる。〉

このままではインボイスの二の舞い

 厚生労働省のご立派な麗筆なので多めの引用とさせていただいたが、あくまで案とはいえこれだけ推進しておいて今回の改正案はないだろう。先にも書いたが「300万円」ということはサラリーマンの副業のほとんどが「雑所得」とされてしまうのではないか。せっかく政府の推進策もあってサラリーマンの多くは「生活の足し」「自己実現」「将来のため」などさまざまな理由で副業を手掛けるようになった。企業もまた協力するようになった。それなのに、目先の税収目当てで日本のイノベーションに冷や水を浴びせようとしている。

 このままではインボイスの二の舞いである。幸いにしてまだ「改正(案)」であり、国税庁はパブリックコメントとして2022年8月31日まで意見を募集している。うっかり見逃すほどにシンプルかつクールなサイトなのはともかく、強行ではなくこうした意見を国民から募るのはいいことだと思う。

 国税庁パブリックコメント
 https://www.nta.go.jp/information/consulation/sake_index.htm

 もちろん「国の税収がもっと増えた方がいいからふんだくれ」という人もいるだろうし、「副業はお国に奉仕するためだからもっと納めたい」という人もいるだろう。そういう人は「国税庁がんばれ」的な意見を送るのも自由である。

 ただし、大多数の副業をしているサラリーマンにとってはピンチ。声を上げなければ、あなたの副業は300万円を超えなければ「雑所得」とされ、最大税率55%の税金を納めることになるかもしれない。端緒に声を上げないことは、それを認めるということと同じなのだ。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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