ランキングに賛否は織り込み済み
ただ、ランキング番組の宿命と言えるのが、その信憑性が疑われがちなこと。視聴者の興味を引くために、「意外な結果を入れたのではないか」「強引に対立構図を作り出したのではないか」。あるいは、「このアンケート形式だと○○が有利ではないか」「この順位を生み出すためにこの企画は立てられたのだろう」などと疑われるケースが少なくありません。
だからなのか、今回の『プロレス総選挙』は2017年3月13日に放送された前回からのマイナーチェンジが見られます。前回放送では現役レスラーと引退したレスラーを混在させたため、多くの批判を受けてしまいました。今回はその反省を踏まえてか、現役レスラー限定にするなどの配慮がうかがえるのです。
信憑性を疑問視される一方で、“総選挙”と大きく掲げた以上、多くのネットメディアが報じ、個人もSNSに書き込むなど、その結果から生まれる影響力は少なくありません。個人、商品、企業などに「○位」「○○に勝った・負けた」というレッテルを貼る危うさがあるだけに、公平性やバランスを欠くと制作サイドが叩かれてしまいます。
また、もう1つ視聴者から毎回のようにツッコミがあがるのはアンケートの回答人数。実際、今回の『プロレス総選挙』も放送前から「たった1万人だけのアンケート結果なの?」というツッコミがあがっていました。これは「団体の数、観客動員、ネット配信の有料会員数などを踏まえると少なすぎるのではないか」という意見であり、テレビ朝日にとっては制作費に関わるだけに悩ましいところでしょう。
ともあれ、日本人の好きなランキング形式で話題を提供し、賛否両論が出ることを織り込み済みで放送する。さらにそれが扱ったテーマの業界活性化につながるなど、経済的な効果が見込めることも魅力の1つ。期待をかけるCMスポンサーもいるだけに、今後も賛否両論を呼びながら年数回ペースでの放送が続いていくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。