何度も見たくなる中毒性があるのもこの映画の特徴だが、これまでになんと84回も見たという会社員のPina Cruiseさんは、繰り返し見たくなるポイントを次のように語る。
「登場人物が個性豊かで、過去や背景は、せりふから観客自身が想像できるところが素晴らしい。SNSでほかの人の感想や考察を見ると、『そういう見方もあるのか』と新たな発見があり、何回見ても飽きません」(Pinaさん)
“マーヴェリック”の配給会社である東和ピクチャーズ宣伝担当の松尾亘さんは世代間交流が鍵だと話す。
「前作を知らない多くの若い世代が、映画館に足を運んでいることもヒットした一因だと思っています。いちばん大きかったのは『トップガン』をリアルで知る世代からの口コミでした。家庭内で親が久しぶりに映画を見て熱く語っている。『そんなに面白いのなら見てみよう』と、その家族が劇場に足を運んでくれたのでは」(松尾さん)
ふだんはネット配信で映画を見る人たちが劇場に足を運んでいることも大きな要因と言うのは、前出の谷川さん。
「いまの映画は配信向けに、表情のアップを多く見せる傾向にあるのですが、“マーヴェリック”は音響や操縦シーンなど大画面で見栄えする作りになっています。ふだん、配信を見慣れている人たちからすると、『映画館で見ると迫力が違う!』と新鮮に感じられたのではないでしょうか」(谷川さん)
この、映画館で見てほしいという思いは、トム・クルーズ自身が強く持っていたことだと証言するのは、映画字幕翻訳家の戸田奈津子さんだ。
「“マーヴェリック”は本来2020年に公開される予定でした。だから、2年前に私も字幕をつけ終えていたのですが、コロナ禍で映画館が自粛休館され、上映することは叶わなくなりました。トムのところには、『早く配信しろ』という圧力もかかったようですが、彼は首を縦に振りませんでした。『この映画は絶対に映画館で見てほしい』と、彼は2年間待ってでも映画館での上映にこだわったのです」(戸田さん)
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2022年9月15日号