対談に参加した紀藤正樹氏弁護士

対談に参加した紀藤正樹弁護士

尾行、撮影、嫌がらせ電話

塚田:特定などのリスクで言えば、地方に住んでいる私よりも、おふたりは統一教会との直接の攻防が多かったのではと思いますが。

鈴木:僕は2002年から街頭で統一教会の勧誘阻止活動をしていますが、その場で勧誘していた男が激高して殴りかかってきたことがあります。その瞬間に「ラッキー、これで現行犯逮捕できる」と思い、殴られたほうが殴ったほうを追いかけることに。渋谷駅周辺をぐるぐる回ってコントのような捕り物だったけど、結局逃げられた(苦笑)。尾行もしょっちゅうです。交番を通りすぎるタイミングで振り返ると尾行している男がピタッと止まるので、そこで首根っこを捕まえて警官に突き出すということをよくやっていました。信者は正直で「教会本部から言われて尾行した」と白状していました。

紀藤:昔は監視カメラがなかったから尾行や張り込みされることが日常茶飯事で、僕もエイトさんみたいに不審人物を捕まえようとしたことがあります。でも本気で逃走しようとする相手を捕まえるのは難しく、ほとんどが逃げられる。張り込みをする人というのは、体力のある若い人が多いんですよ。警官が手錠や腰縄を常備することには理由があるとわかりました。

鈴木:渋谷で僕を殴った男も、死に物狂いで暴れて逃げた。そんな相手を押さえつけるのは、確かに無理ですよね。

紀藤:昔の電話は受信の音を消せなかったから嫌がらせ電話の対応も大変でした。カルト教団に限らず弁護士は基本的に他人の争いごとに関与するから危険な目に遭いやすいですね。事務所の前にバンが止まり、人の出入りをすべて撮影されたこともあります。

鈴木:あとはつい先日、萩生田光一政調会長が周りに「あの鈴木某はゆるさない」と発言していたと聞いたんですよ。“鈴木某”とは誰なのか、質問状を出して聞いてみたいですね。

塚田:私はさすがに尾行されたり殴られたりした経験はない。他教団の職員に詰問されたくらいですが、統一教会問題に関してはSNSで発信するようになって嫌がらせが増えました。特にツイッターは執拗に絡む人が多い。

紀藤:匿名アカウントによる誹謗中傷は大きな問題です。ただし僕の批判をする人の中には本当に苦しんでいる信者もいて、SNSを通じてその信者を説得できる可能性がある。だから安易にブロックはしないようにしています。

(後編に続く)

【プロフィール】
紀藤正樹(きとう・まさき)/1960年生まれ、山口県出身。弁護士。1990年に第二東京弁護士会に登録。「霊感商法」被害に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会に所属し、2001年にリンク総合法律事務所を開設した。著書に『マインド・コントール』(アスコム)等。

鈴木エイト(すずき・えいと)/滋賀県出身、日本大学卒業。ジャーナリスト。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。カルト宗教問題を扱う日本脱カルト教会に所属し、統一教会問題を中心に反ワクチン等の問題にも取り組む。9月26日に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小社刊)を刊行。

塚田穂高(つかだ・ほたか)/1980年生まれ、長野県出身。宗教社会学者。東京大学大学院人文社会系研究科で博士課程修了。上越教育大学大学院学校教育研究科准教授。新宗教運動・政教問題・カルト問題などに取り組む。編著書に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)等。

※週刊ポスト2022年10月7・14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
綾瀬はるかが結婚に言及
綾瀬はるか 名著『愛するということ』を読み直し、「結婚って何なんでしょうね…」と呟く 思わぬ言葉に周囲ざわつく
女性セブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
やりたいことが見つかると周りがみえなくなるほど熱中するが熱しやすく冷めやすいことも明かした河合優実
大ブレイクの河合優実、ドラマ『RoOT/ルート』主演で感じる役柄との共通点「やりたいことが見つかると周りが見えなくほどのめり込む」
NEWSポストセブン