1974年12月、福祉年金の引き上げなどを訴えて、都心をデモ行進するインフレ生活に苦しむお年寄りたち(時事通信フォト)

1974年12月、福祉年金の引き上げなどを訴えて、都心をデモ行進するインフレ生活に苦しむお年寄りたち(時事通信フォト)

寿命と健康は別。健康と働けることも別

 日をあらため、別の70歳代のアルバイト男性にも話を伺う。彼はいくつかの会社を経て、同じく警備員で働いている。

「会社に残るのも競争ですよ。元の部下に非正規として扱われて、給料も信じられないくらい安くなる。そんな待遇でも外に放り出されて1からやり直しよりはマシと残りますが、残りたい人は多い」

 先にも触れた「勤めていた会社で雇用延長および再雇用された者」の話。60代、70代で1から知らない会社で働くなら、肉体労働をするくらいならと、非正規の再雇用を望む定年サラリーマンは多い。

「若い人は優秀じゃないから残れなかった、仕事ができないから残れなかったと思うでしょうが、そんなこともないですよ。役員に上りつめたって人間同士の話ですからね、優秀だから残れるだろうなんて、そんなのは世間知らずです。その時になってみなきゃ、わかんない話ですがね」

 これまた先ほどの「年とらなきゃ、わからない話ですけどね」と同じような言葉。組織とはまさしくそういうものだが、実際に自分がそのような境遇に置かれなければ、血気盛んな若いうちにはわからないものだろう。

「あと、残れなかったら同じような仕事で起業って会社に残るより難しいですよ。年食ってまでサラリーマンやって自営業なんて、それこそ老後の金を使い切って惨めな状態なんて私の知り合いにもいます。ずっと自営だった連中だって難しいのに無茶ですよ。健康にも悪いです。黙っててもお金が入ってくる雇われとはまったく違います。若いから「そんなことない」と思うだけで、新しいことなんて身体も頭もついてきません。それに大きな会社の経営者とかそれまで実績のある自営業者ならともかく並レベルの自営、それも年寄りに仕事なんて来なくなります。これ本当ですよ」

 一概には言えないかもしれないが、大半の高齢者にとっての現実はそうなのだろう。

「あなた、わかってませんね。一概って。はっきり言いますが多くの一般労働者は『一概』ですよ。むしろその『一概』を恐れたほうがいいですよ」

 確かに。おっしゃる通り会社一筋で60歳、または65歳になって退職した人、とくに中小企業の人では退職金も少なく、納付期間が延長されるこれからは5年間年金を払うために働かなくてはならない。そうとうな蓄財でもあれば別だが、多くのサラリーマンは「一概」であり、65歳から遊んで暮らせる人は少ないし、これからはもっと少なくなるだろう。そもそも50代で不幸にも身体にガタのくる人もいれば彼らのように70歳を過ぎても肉体労働で雇われることのできる人もいる。後者が「高齢者のアスリート」というのは決して大げさではないように思う。筆者と同年代の知人でも、早くも身体はもちろん心を壊して苦しんでいる人たちがいる。

「寿命と健康は別ですよ。健康と働けることも別です。とにかく身体がやばくなるんです。それなりの病気になったらあっという間に貯金なんて減りますよ。保険だって70歳過ぎたらお守りみたいな額の保険しか入れてくれませんし、現実にはたいして支払われませんよ。私のように健康ならいいですが、そうでない同年代で悲惨な人は大勢います。稼げるバイトができる高齢者なんて限られたものですよ」

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