いまの“マイブーム”のメニューをたずねると……。
「“蒸し野菜のミルフィーユ”です。先輩から教わった食べ方ですが、蒸し器(鍋の口径に合わせて開閉できるステンレス製のもの)のいちばん下にかぼちゃやにんじん、大根など火の通りにくい野菜を敷き、その上に白菜、豚肉や鶏肉、しいたけなどを重ねて、ほうれんそうでフタをして7〜8分蒸し上げます。
タレはすだちやしょうゆ、かつおぶしなど、何でもお好みで。中に入れる具材も自由で、私は実験のような気分で、うどんを入れてみたこともあります」
時短料理が得意で、その日の気分や天気次第で、ジャズのセッションのように味付けや調理法を変えるのが秋吉流。
「時間がないときはねぎ、おかか、とろろ昆布にお湯を注ぎ、しょうゆを少し垂らした即席おつゆ。簡単で、充分満ち足りた気分になります。
カレーを作るときも、『今日は疲れているからクミンを多めに入れよう』とか『ターメリックの効能は……』など、漢方薬を調合するような気持ちでスパイスの量を変え、自分が食べたい味や香りを作り出すのが好き。
私の料理はひらめきなので、同じものが二度と作れないことも多いの(笑い)。
女優の仕事も同じで、自分と監督のテイストの違い、晴天なのか雨なのか。異なるすべての要素が混ざり合って何かが生まれる、そういう化学反応が好きですね」
子供の頃は“元祖ロハス”な食生活
子供の頃から、体にいいものを食べる環境で育った。
「父は体が弱く、母は、私たちが口にするものにもすごく工夫をしていました。
母は料理好きで、家のいちじくの木から実を摘んで甘露煮にしたり、玄米を練り込んだドロップを作ったり、それが私たちのおやつでした。それに、昭和の時代に、私のお弁当は玄米だったんですよ。“元祖ロハス”【*2】じゃないですか?(笑い)
そんな食生活でしたので、ひとり暮らしを始めたときも、市販の“フルーチェ”に本物のいちごを混ぜ込んで『ビタミンCが摂れた』とか考えていました。インスタントカレーには、コンソメで煮たじゃがいもやにんじん、玉ねぎを加えるなど、何かひと手間かけていました。その頃から時短なのは、いまと変わらないですね」
【*2 ロハスとはLOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)の略で、健康的で持続可能な生活様式という意味。1990年代後半のアメリカで生まれたビジネスコンセプトだ】