また、こうしたトラブルは、何も「反ワクチン」や「コロナは存在しない」という主張を繰り返す人たちだけが起こすものではないらしい。千葉県在住の主婦・羽田舞子さん(30代・仮名)は、夫によるあまりにも厳しい「コロナ制限」を、子供と共に粛々と受け入れてきたと話す。
「自宅に帰れば玄関で素っ裸になりお風呂に直行するほど敏感で、私たちがうがいや手洗いを忘れると烈火のごとく怒鳴っていました。でもまあ、私たちのことを思ってくれていると思えば、それも許せたんですけどね」(羽田さん)
今年4月、羽田さん宅にやってきたのは、赤ら顔の夫と二人の上司。飲んでいた店が時短営業ということもあり、自宅で飲み直そうとやってきたらしかった。羽田さんは相当に狼狽えたという。
「だって、未だに手洗いうがい、玄関で全裸は当たり前ですよ? それなのに、外で飲んで、上司を連れてうちにやってくる。手も洗わないしうがいもしない、上司の二人はマスクすら付けていない。大丈夫なの? と思いましたが、夫は上機嫌。何なんだと思いながらも、一応もてなしだけはしました」(羽田さん)
二次会は一時間ほどで終了し、上司が帰った後、夫は豹変したのだという。
「上司を見送ったあと、夫は急に家中の窓を開けるよう私や子供に指示して、すぐに風呂に入りました。そして、上がるなり”ちゃんと掃除もしろ、感染したらどうする”と部屋の中でマスクを付け始めました。もちろん、念のために消毒する分にはいいのですが、本人達がいないところで上司達をばい菌扱いするし、その処理を家族に丸投げ。結局、自分だけはコロナになりたくない、感染すると仕事上良くないとかそういう理由だったんでしょう。家族のためなら、あのような言動はぜったいにない」(羽田さん)
思えば永いコロナ禍の中では、通常では考えられなかったような、人間関係のトラブルや軋轢を目撃する機会が多かった。かくも簡単に、人間同士の結びつきは切れてしまうのかと、その儚さの前に希望を失いかけたという人も少なくないだろう。今こうしてコロナ禍に終わりが見え、日常生活に戻ることができる兆しが見えてきたが、コロナ禍の間に失ったり、崩壊してしまった価値観や人間関係までもが元通りになるとは限らないのだ。