マスク一覧

【マスク】に関するニュースを集めたページです。

国内の感染者数は過去最高を更新(写真/共同通信社)
岡田晴恵氏が解説 自宅療養の注意点「備蓄は家族分全て用意、換気が大事」
 新型コロナ「第6波」が襲来するなか、“軽症で済む”との楽観論も広がっている。はたして本当にそうなのか。「コロナの女王」岡田晴恵・白鴎大教授が緊急解説する。【全4回の第4回】 オミクロン株による第6波に続いてインフルエンザも流行する「ツインデミック」までもが懸念されている。すべてが初めての事態であるからこそ、今現在の新型コロナ感染拡大のなかで岡田氏が「今すべきこと」として強調するのが自宅療養の準備だ。 岡田氏が2020年に上梓した『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』では、備蓄品リストとして、体温計、マスク、うがい薬、使い捨てビニール手袋、ゴーグル、消毒液、ビニール袋といった感染防止用品、一般薬や食料品などを挙げている。「オミクロンでもインフルエンザでも風邪でも、自宅療養で必要なものは同じです。今、重要なのは、そうした準備をすること。備蓄を家族分すべて揃えるということです。水枕を用意しているといっても1つでは家族が同時に感染したら足りません。食料品では喉ごしの良いレトルトのお粥やゼリー状の栄養補助食品、果物の缶詰は揃えておくといいでしょう。 また、オミクロンでは治った後の自宅待機期間にお腹が空いたという話も聞きます。食料品も防災の延長線上で用意してください。お子さん用の食べ物や赤ちゃんには粉ミルクなども用意したいものです。 看病する人も、オミクロン株の飛沫・エアロゾル感染を防ぐために、不織布のマスクは2重にして、100円ショップで買えるビニールのカッパを用意しておくと便利です。前で留めるタイプのカッパは、隙間からの侵入を避けるために前後ろを逆にして背中で留めるようにしてください。 そして何より大事なのは換気です。寒い時期ですが空気を入れ替えるつもりで換気してほしい」(岡田氏) 自宅療養では、熱や咳が止まらないといった症状があっても自分たちで対処しなければならない。「発熱で脱水した身体には、ただの水ではなく経口補水液で水分補給をすると効果的です。市販の経口補水液が自宅にない場合は、白湯1リットルに砂糖40グラム、塩3グラムを溶かすだけで簡単に作れます。あればオレンジなどの柑橘類を搾って加えるとカリウムを補給できます。 咳が止まらない時には、クッションなどで上体を起こした姿勢にすると鼻水や痰が気管にたれ込むのを防ぐ効果があり、楽になることがあります。空気が乾燥すると咳が出やすくなるので、エアコンの風が直接あたらないように。加湿器もお勧めですが、ない場合は濡らしたバスタオルを干して凌ぐ方法などもあります。喉を潤すと楽になりますが、冷えた飲み物や炭酸飲料は喉に負担をかけてしまうので、常温の飲み物をゆっくり少しずつ飲むと良いでしょう」 総務省消防庁は1月23日までの1週間で救急患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が4950件あったと発表した。これは第5波の最中だった昨年8月中旬を上回って過去最多を更新している。 昨年8月には、自宅療養していた千葉県の妊婦が入院の受け入れ先が見つからず自宅で出産、新生児が亡くなるという問題が起きた。国立成育医療研究センターなどの研究グループが昨年4月までのデータを分析した結果、新型コロナに感染した妊婦は酸素投与が必要な中等症以上になった割合が約10%で、同世代女性より症状が重くなる傾向があることがわかった。岡田氏が続ける。「第6波のピークを迎えるなかで、こうした事態から目を背けずに、感染した妊婦さんを診る産科病院をホームページで広く公開するなど、第5波の教訓を生かすべきです。 そして3回目ワクチン接種、検査の拡充、さらに患者が増えた場合の大規模集約医療施設の準備、抗ウイルス薬などの治療薬の確保を至急行なうべきです。私の言っていることは2年前から変わりません」(了。第1回から読む)【プロフィール】岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院修了後、順天堂大学で医学博士を取得。国立感染症研究所、ドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所、経団連21世紀政策研究所などを経て、白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演、専門書から児童書まで幅広い執筆などを通して感染症対策に関する情報を発信している。※週刊ポスト2022年2月11日号
2022.02.03 07:00
週刊ポスト
驚異の風邪を防ぐ方法はあるのか
コロナでもインフルでもない重症化する風邪「スーパーコールド」とは?
 コロナとの闘いの期間が延びれば延びるほど、“ニュー・ノーマル”な暮らしも続いていく。だが、徹底した感染対策を取っていれば、絶対の安心を得られるわけではない。むしろ、その対策によって、新たな恐怖が音もなく私たちの体に忍び寄っている。「急に冷え込んだせいか、風邪をひいてしまって。はじめのうちはちょっとだるい程度だったんですが、徐々に熱も上がり、強烈な頭痛に咳も止まらなくなって……。コロナかもしれないと思って検査を受けたんですが、結果は陰性でした」(A子さん・50代女性) つらい症状は2週間以上続いた。それでもくだされた診断は「風邪」だった。 こんな「重症化する風邪」が外国で大流行し、ついに日本にも上陸し始めている。しかも、コロナ対策を徹底してきた人ほど重症化リスクが高いというのだ。 遠く海の向こうのイギリスでは、いち早くワクチンの接種をスタートし、2回接種者が多くを占めるようになった7月、コロナに関する規制が全面解除され、全世界に先駆けて「ウィズ・コロナ」に大きく舵を切った。 スポーツ観戦では大声をあげ、パブは連日酔客で賑わった。マスクを着用する人も大幅に減った結果、現在、1日5万人以上の“感染再爆発”という深刻な状況になっている。 その一方で、10月頃から、次のような症状を訴える人が増えているという。「誰かが私の喉をピンで刺しているような、耐えられない痛みがある」「咳が止まらず、食事がとれないどころか、まったく寝ることもできない」「3週間ほど風邪の症状が続き、4週目には回復するどころか咳が人生でいちばんひどい状態になりました。もうどうしようもない」 なかには全身を倦怠感に襲われ、「体中を厄介な“虫”が這いつくばっている」と表現する人もいるほどだ。 だが、その人たちも冒頭のA子さん同様、診断結果はコロナではなく「風邪」だ。 イギリスの大手薬局のウェルファーマシーによれば、直近の咳や風邪薬の売れ行きが前年に比べて倍増している。 また、NHS(イギリスの国民保険サービス)によると、風邪やインフルエンザ、咳に関する相談ダイヤルへの問い合わせが急増。想定を超える問い合わせに、回線はパンク寸前だという。 イギリス国民を不安に陥れた重症化する風邪。その正体が「スーパーコールド」だった。免疫の記憶が薄まっていく 正式な病名ではなく俗称だが、主な症状は、喉や胸の痛み、頭や体の痛み、鼻水、疲労感など。一般的な風邪の症状と変わらないが、とにかく“重い”。また、罹患する人の年齢はバラバラで、症状が悪化すると最悪の場合「致死性の肺炎」に至るとの懸念がなされている。医療ジャーナリストの室井一辰さんが語る。「イギリス現地では、“普通の風邪がいつの間にか重大な疾患につながっている”と報じられています。しかし、風邪ウイルスが強毒化したというわけではないようです。 目を向けなければならないのは、ウイルスではなく、私たちの体。もっと言うと免疫機能です。長く続くコロナによる自粛生活に伴い、この2年間で人々の免疫が弱まった。その結果、感染症に対する抵抗力が落ちていると捉える方が正しい」 手洗い、うがいを徹底し、何かものに触れればアルコール消毒。常にマスクを装着し、外出も極力避ける。コロナ禍で私たちが徹底してきた非日常的な対策は、いまや常識となった。「その対策によって、コロナウイルス以外にも、私たちが普段生活している中で触れてきたウイルスと接する機会が激減。皮肉にも、それがスーパーコールドを生んだ、と考えられます。 コロナも含め、風邪、インフルエンザなどのウイルスに一度感染すると、体内にあるメモリー細胞がそのウイルスを記憶します。そして再び同じウイルスに感染したとき、メモリー細胞が活性化し、強い免疫応答を示すので、ウイルスに対抗することができる。
2021.11.21 16:00
女性セブン
繁華街(東京・上野)の人出はコロナ前と変わらない状態に(撮影/内海裕之)
五輪で強まったコロナの「楽観バイアス」 このまま社会的終息を迎えるのか
 新型コロナ第5波の感染拡大が止まらない。ワクチン接種がようやく進んできたが、デルタ株の蔓延もあり、新規感染者数の増加が続いている。緊急事態宣言発令中の東京では、五輪開催もあり、自粛のムードは一向に高まらない。この先コロナ禍はどう進んでしまうのか──。過去のパンデミックの例をもとに、ニッセイ基礎研究所・主席研究員の篠原拓也氏が説明する。 * * * 新型コロナウイルスの感染拡大は、ワクチン接種の進捗に応じて各国の違いが顕著になってきた。 接種が進む欧米諸国では、感染の勢いは減じている一方、接種が進んでいない東南アジア諸国では、爆発的な感染がみられている。ただ、欧米では接種が完了した人が感染するケースもあり、本当にこのまま感染が収束するのか予断を許さない状況となっている。 日本では、現役世代のワクチン接種が本格化している。しかし、それを上回る勢いで変異株であるデルタ株(インド型)が拡大しており、1日に1万人を超える新規感染者も珍しくなくなった。 政府は、東京などに4回目の緊急事態宣言を発令しているが、人々に感染拡大防止に向けたメッセージは浸透していない。発令中にもかかわらず、現役世代、とくに若年者を中心に首都圏や関西圏など繁華街の人流は減らず、感染拡大に歯止めがかからない事態となっている。 このまま進んでいくと、いったいコロナ禍はどうなってしまうのだろうか。今回は過去のパンデミック等を振り返りながら考えてみることにしたい。人々にまん延する「楽観バイアス」 そもそも、なぜ緊急事態宣言の効果が出にくくなっているのだろうか? コロナ禍が始まって、かれこれ1年以上が経つ。石鹸での手洗い、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの徹底、大人数での会食自粛……など、耳にタコができるほど感染予防策が言われてきた。多くの人がそれらを遵守している。現に真夏にもかかわらず、街中では人々のマスク着用が当たり前の光景となっている。 それにもかかわらず、感染の波は何度も襲来し、それを追うようにして緊急事態宣言の発令と解除が繰り返されてきた。心理学の学者によると、人々に“宣言馴れ”が生じているとみられる。この宣言馴れは、コロナを軽く見てしまいがちな「楽観バイアス」につながるという。オリパラの「お祭り」でコロナ禍に順化 東京では、今回の緊急事態宣言の発令中にオリンピック・パラリンピックが開催されている。これにより、宣言での「自粛」とオリパラでの「お祭り」という全く正反対のメッセージが人々に出されている。 こうなると、人は易きに流れがちだ。つまり、受け入れたいお祭りのメッセージだけを聞き入れて、自粛のメッセージには耳を貸さなくなる。その結果、「コロナは心配しなくても大丈夫」といった、コロナ軽視の楽観バイアスが生じる。 昨年の最初の緊急事態宣言のときには、誰もが未経験の事態に直面したことで、社会全体で自粛に努める動きがみられた。しかし、緊急事態宣言が何度も繰り返されるうちに、人々に「馴れ」が生じて、その実効性は薄れていった。 これは、生物学の「順化」という現象に相当する。異なる環境に移された生物が、しだいに馴れて、その環境に適応した性質を持つようになることを指す。人々はコロナ禍に順化してきたといえるだろう。2通りあるパンデミックの「終息シナリオ」 それでは、新型コロナのパンデミックは、いつどのようにして終わるのか? たぶん多くの人々が、陰に陽にこの問いを発しながら日々生活しているはずだ。 昨年5月にニューヨークタイムズ紙で報じられた内容によると、アメリカの歴史学者はパンデミックの終わり方には2通りあると述べている。 1つは「医学的な終息」で、罹患率と死亡率が大きく低下して、まさに感染が終息する。もう1つは「社会的な終息」で、人々の病気に対する恐怖心が薄れてくることで終わるというものだ。 社会的な終息は、医学的に病気を抑え込むことによって終わるのではなく、人々が疲弊したうえで、病気とともに生きるようになることで、パンデミックの状態が終わるというものだ。今回の新型コロナでも、同様のことが起こっているといわれる。 ただし、歴史学者によれば、実際にどのように社会的な終息に至るかは感染症ごとに異なる。 たとえば、感染症の終息を社会的・政治的に決めるにしても、実際に誰がどのように宣言できるのか。また、終息の理由を人々が納得できる形で説明できるのかなど、さまざまなことが見えてこないという。ペストの恐怖は今も消え去っていない それでは、過去の世界的な感染症として、ペストとスペインかぜ(インフルエンザ)をみていこう。 ペストは発症した人の皮膚が紫黒色を呈して死に至ることが多いことから、黒死病として恐れられてきた。鼠類に付いた蚤(のみ)が、人にペスト菌を媒介するとされる。 ペストは、6世紀、14世紀(「中世の大流行」)、そして19世紀末~20世紀のパンデミックと、過去2000年間に3度の世界的な大流行があった。このうち、特に、中世の大流行は1331年に中国で始まり、貿易ルートを伝って、ヨーロッパ、北アメリカ、中東に広がった。1347~1353年の6年間で、当時1億人といわれるヨーロッパの人口のうち、2000万~3000万人がペストで死亡したと推定されている。 じつは、このペストはどのようにして終息したのか明らかではない。 寒さにより病気を媒介する蚤が死滅したため。ペスト菌が宿主をクマネズミからドブネズミに変えたことで人間との距離が離れたため、感染者が出た村を焼き払うなどの感染拡大防止策が奏功したため──など、さまざまな説が出されている。これらに加えて、社会的な終息という面もあるのかもしれない。 ただし、ペストはいまも完全に消え去ったわけではない。現在は、抗生物質での治療が確立しているが、ペストの感染はいまでも人々に恐怖を与えているといわれる。社会的な終息の代表例「スペインかぜ」 社会的な終息の代表例といえるのが、スペインかぜだ。 スペインかぜは、1918年にアメリカを起点に流行が始まったインフルエンザだ。世界全体で5000万人から1億人が死亡したといわれる。犠牲者は若者や中年に多かったという。 流行の時期は、第1次世界大戦と重なり、病気で多くの兵士たちの命も失われた。アメリカでは、公衆衛生当局の担当者や執行官、政治家の間で病気の深刻さを過小評価する動きがみられた。その結果、流行を伝えるマスコミの報道は少なくなった。 これには、感染拡大のニュースが敵国を奮い立たせる恐れがあったことや、社会の治安を維持してパニックを避ける必要があったことなどが、その理由として考えられている。その後、感染症は徐々に消えていき、毎年あらわれる弱毒化したインフルエンザに変わっていった。 スペインかぜは社会的な終息を迎えた。第1次世界大戦が終わり、人々が新たな時代に眼を向ける中で、感染症や戦争の悪夢を忘れ去ろうとしていたことが、その背景にあるとされる。新型コロナは社会的な終息を迎えるのか? では、今回のコロナ禍がどのような形で終息を迎えるのか──。残念ながら今のところ見通すことはできない。 ペストやスペインかぜが蔓延したときとは異なり、公衆衛生が進み、感染症対策が確立している。ワクチンや治療薬の開発も進み、近代的な医療インフラも整備されている。 一方で、航空等の交通手段が発達して、人々の移動がグローバルに迅速に進むことや、SNS等の情報伝達の手段も進み瞬時に情報が世界中に拡散されることなど、世界は小さくなっている。 ただ、根本的なところで人々の意識は昔からあまり変わっていないのかもしれない。感染予防策について頭ではよく分かっていても、「楽観バイアス」が働いて拡大防止策が疎かになるケースも増えている。 結局、感染拡大防止のためのインフラや技術を高めても、最後はそれを操る人々の意識次第なのかもしれない。 コロナ禍は、医学的な終息に至るのか、それとも社会的な終息に収まるのか。終息するとして、それらの終息はどのような形に落ち着くのか――これらは、これからの人々の意識次第といえそうだ。
2021.08.14 07:00
NEWSポストセブン
“アルコール消毒”の有効性とは?
手指のアルコール消毒はどこまで有効か ウイルス学の権威が問題提起
「大型ショッピングモールに行くと、入り口やエレベーターホールなどあらゆる場所で手指のアルコール消毒を求められます。直前に別の場所で消毒したばかりでも、店員が『ご協力を』と言うのを無視するわけにもいかず……。1時間ほどの滞在で5~6回は消毒液を手に吹きかけますよ」 都内在住の60代男性はそう嘆息する。 新型コロナの感染拡大で日常生活に定着した対策は多いが、街中のさまざまな場面で目にする“アルコール消毒”は本当に有効なのだろうか。「現在の日本社会には、これまで明らかになった新型コロナウイルスの正しい知識や理解を欠く無意味な“対策”が蔓延しています。その代表格が、身の回りにあるもののアルコール消毒です。あらゆる施設の入り口に“関所”のように手指の消毒液が置かれていますが、これらは(対策をきちんとしているのだと見せる)“アリバイづくり”のようなもの。感染コントロールにはほとんど役に立ちません」 そう喝破するのは、近著『もうだまされない 新型コロナの大誤解』が話題の医師・西村秀一氏(国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長)だ。 西村氏の専門はインフルエンザなどの呼吸器系ウイルス感染症。昨年2月、停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で流行が起きた際は、臨時検疫官として船内に立ち入った経験を持つ。現在も新型コロナ感染症の最前線で闘う、ウイルス学の権威だ。 西村氏が指摘する「アルコール消毒が感染防止に役立たない理由」を知るには、新型コロナの感染メカニズムを改めて理解する必要がある。「そもそも新型コロナウイルスはインフルエンザ同様、粘膜細胞で増殖する呼吸器系ウイルスです。これら呼吸器系ウイルスで感染リスクが最も高い行為は、ウイルスを鼻や口から吸い込むこと。空気中を漂う飛沫や飛沫核(エアロゾル)に含まれるウイルスを吸い込み感染することを、エアロゾル感染、あるいは空気感染と呼んでいます」(西村氏) 人が吐き出すウイルスは咳やくしゃみに限らず、呼吸や会話などに際して常に排出されているという。その一方、コロナでは「接触感染」のリスクがあるから手指などの皮膚を消毒すべきという話もよく耳にするが……。「そもそもウイルスが皮膚から感染することはない。接触感染は、ウイルスが付いた手で鼻腔の奥の粘膜に直接塗り付けるような行為をしない限り、まず起こりません。また、自ら増殖する細菌と異なり、宿主の細胞中でしか生きられないウイルスが物の表面で増え、感染力を持つようになることは、その性質からして考えられないのです」(同前)肌のバリア機能を破壊 図書館の本を1冊ずつ拭くなど、人の手が触れるものを片っ端から消毒し“感染対策”とするケースは少なくないが、これも意味を見出せないものだと西村氏は指摘する。「外で買い物した商品や宅配便で届いた荷物を消毒する人もいますが、そこまで気を遣う必要はない。テーブルや椅子、ドアノブなどのアルコール拭きも同様です。 むしろアルコールの消毒効果は表面のホコリや汚れを落としてからでないと発揮されず、手洗いや水拭きのほうが重要になる。しかも水で洗い流したり拭き取ったりするだけで、たとえウイルスがいたとしてもほとんど除去され、そこからの感染リスクはなくなります」 感染対策として、日々“アルコール拭き”を課せられている従業員が聞いたら力が抜けてしまうかもしれない。が、これが西村氏の見解だ。 巷に蔓延る過剰なアルコール消毒に「嫌気が差した」という声は多い。「最近、お店などで空のまま放置された消毒液のボトルが目に付きます。汚れて黒ずんでいるボトルもあり、コロナとは別の病原菌を拾いそうで嫌な気分がする」(40代女性)「行政の指導が厳しいからボトルをいくつも置いているが、お客さんに消毒を求めるわけでもない。“感染対策徹底”のポーズとして置いているだけの状態です」(飲食店店主) 一部では、もはや形骸化している感すらあるアルコール消毒だが、やり過ぎると逆にリスクもあるという。「皮膚の表面の角質層には細菌などの病原体から体を守るバリア機能があります。ウイルスを防ぐつもりが、過剰なアルコール消毒で手荒れを起こし、他の細菌からの防御ができなくなることがあります」(西村氏) 皮膚科医の青柳直樹氏(ドクターメイト代表)もこう指摘する。「たとえば介護施設では、職員らの入室時などドアノブや物に触れるたびに消毒していましたが、今では接触感染がほとんど起こらないとわかり、緩和されました。そもそも高齢者の皮膚は薄いうえに皮脂が少なく刺激に弱い。アルコール消毒による肌荒れが原因で、全身に湿疹やかぶれが広がる『接触皮膚炎症候群』になるリスクがあります」拭いたら機械が故障する アルコール消毒液の主成分・エタノールが原因で体調不良を起こす体質を持つ人にも、住みづらい世の中となった。「アルコール過敏症の妻は、体質的に手指の消毒液が使えません。アルコールが皮膚に付くと痒みや発疹が現われ、吸い込むと気分が悪くなるので、ポンプのそばに近寄るだけで苦痛らしい。店先で店員さんが待ち構えて手に掛けてくることがありますが、それを断わるのは妻としても勇気がいるようです。アルコール消毒ができない人がいることを、世間にはわかってほしい」(70代男性) アルコール消毒液に関するトラブルは全国で増えており、「日本中毒情報センター」には、消毒液などが目に入ったという相談が昨年1年間で265件あった。例年の約6倍の件数で、そのうち7割は5歳以下の幼児が関わっていたという。 そのほか、こんなトラブルも聞こえてきた。「会社の入り口にあるポンプで手指を消毒しようとしたら、勢いよく出た液が買ったばかりの革製バッグに飛んできて、色落ちしてしまった。それ以来“消毒したフリ”で済ませている」(40代男性)「非接触の支払い手段として、駅の改札や店での支払い時にスマホを取り出す機会が増えた。コロナ対策のため1日に何度もアルコールスプレーを吹きかけていたら、画面のひび割れ部分から内部に液が入って故障してしまった」(40代女性) 多くの人が仕事に使うパソコンでも、同様の事例が報告されている。大手電気メーカーのNECは、コロナの影響で増えた問い合わせに応えるため、検証作業を行なった。「1万回往復で拭き取り試験を実施した結果、繰り返しのアルコール清掃により筐体部分が劣化し、ひび割れや塗装が剥がれるなど修復不能な損傷が発生する可能性が判明しました」(同社広報室)換気しなければ本末転倒 昨年6月から乗客にアルコール除菌シートを配っている日本航空では、そのシートで客席の窓を拭く乗客が続出。「アルコール成分は窓の素材であるアクリル樹脂を劣化させる恐れがあるため、一時、機内アナウンスで注意喚起を行なっていました」(同社広報部) 一般社団法人アルコール協会も「アルコールは素材によって変質や劣化を起こす可能性があります。一番の注意点は引火しやすいこと。火気の近くでは絶対に使わないで」と注意を呼びかける。 お門違いな“コロナ対策”はほかにもある。西村氏が指摘する。「コンビニのレジにあるビニールカーテン、飲食店のパーティションも感染対策としてはほとんど意味がありません。目の前の人への飛沫の直接到達は防げても、ウイルスを含むエアロゾルはカーテンやアクリル板など簡単に越えてしまう。 レジのすぐ後ろが壁なら、壁とカーテンの間に囲まれた空間からエアロゾルがなかなか抜けずに、レジ係が長時間にわたりウイルスを吸い込む恐れが生じる。換気のよくない閉鎖された室内ではビニールカーテンやパーティションはむしろ無いほうが安全なうえ、エアロゾル対策として有効な『換気』に目が向かないようでは本末転倒です」 コロナ感染拡大以降、多くの施設のトイレで続くハンドドライヤーの利用停止も“対策してる感”のための象徴的な措置と言えるだろう。 経団連は昨年5月に政府の専門家会議による「感染リスクあり」の指摘を受け使用制限を盛り込んだ指針を策定したが、その後、一転。今年4月、実証実験の結果を踏まえ感染リスクは低いと判断し、指針を見直した。「実験により、他の空間に比べてエアロゾルが多く飛ぶ事実はないことがわかり制限を緩めました」(経団連総務本部担当者) それでも、今なお利用停止中のハンドドライヤーを目にする機会は多い。過剰な対策による不自由 ウイルスの吸い込み防止に有効なマスクでさえ、間違った使われ方が多い。「3密回避とマスク着用が最も有効な感染防止手段であることは間違いありません。ただ、外を歩くだけなら、マスクは必要ありません。熱中症の危険性がある時期はなおさらで、屋外の広い場所ではすれ違う相手が感染者でたとえ咳をしたとしても、ましてや息をしているだけならリスクはありません。ここまでの話は、相手がいま話題になっているデルタ株でも同じです」(西村氏) みらいクリニック院長の今井一彰医師も、夏場のマスクの弊害について懸念する。「夏場にマスクをしていると、暑さのため口呼吸が増えて口内が乾燥し、雑菌が増えることで感染症に罹りやすくなってしまいます。口呼吸で唾液が蒸散してしまうと飲み込む機会が減り、嚥下に使う筋力が低下することも考えられる。嚥下力が低下すれば、誤嚥性肺炎を起こしやすくなることが懸念されます」 歯科医の照山裕子氏も、「マスク着用により口呼吸が習慣になると口周りの筋肉が衰え、口を閉じる力が弱まる。そのまま家族と過ごせば家庭内感染のリスクも上がります。口が渇くと免疫の主体である唾液が行き渡らないため、虫歯や歯周病といったトラブルを招く原因にもなります」と指摘する。 未知の新型コロナウイルスの感染拡大から1年半が経ち、世界中でウイルスや感染症について知見が積み重なってきた。前出・西村氏は日本の現状をこう憂う。「日本ではゼロリスクを追求するあまりに無駄で過剰な対策が横行して、本来なら必要ないはずの不自由が生じています。トンチンカンな対策が、コロナ以外での不健康や社会の分断などの弊害を生んでいるのです」 コロナ禍で出現した“マスク警察”や“自粛警察”は自らが信じる正義を他者に押し付け、社会にさまざまな軋轢を生んだ。今や“慣習”と化してしまったアルコール消毒が続くことで“消毒警察”が現われないよう、切に祈りたい。※週刊ポスト2021年8月20日号
2021.08.08 11:00
週刊ポスト
渋谷駅前で「ノーマスク」を訴える人たち。2020年10月(AFP=時事)
「ノーマスク」を権利と主張する人々が公園の管理人を悩ませている
 いまも都市部のターミナル駅前などで活動をつづける「ノーマスク」を訴える人々がいる。ゴールデンウィーク前には、彼らも含むと思われる人たちがネット上でマスクをしないでピクニックへ行こうというイベントを呼びかけていた。この呼びかけによって、各地の公園はどのような対応を迫られたのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。 * * *「ノーマスクは我々の権利、生きるための権利ですから」 ゴールデンウィーク直前、SNS上で拡散された「ノーマスクピクニック」を開催しようとしている人たちがいる、との情報。大手マスコミやネットメディアなどが一斉に報じると、ネットユーザーらからは「非常識すぎる」「感染者が増えているのに」と非難が殺到。結局「全国一斉」という形での開催は取りやめられたが、彼らは批判を受け止めたわけではなく、形を変えて実践されただけだと当事者の一人は語る。 たとえば、ツイッター上で「ノーマスクピクニック」への参加を呼びかけていた関東地方在住の女性・花島由佳さん(仮名・40代)がコトの顛末を、独自の視点から振り返る。「マスクをしていると、通常時の呼吸で得られる酸素が得られず、特に小さな子供にとっては危険なんです。普段から、マスクを外すよう呼びかけを行っており、ピクニックは私たちの通常の生活スタイルなんです。それなのに、ネット上でいろいろなことを言われて、私たちの自由が制限されている。全国一斉のノーマスクピクニックは開催されませんでしたが、各々自由に、近隣の公園などに行って、お弁当などを食べて過ごしました。もちろん、みんなノーマスク。周りにたくさん他の方もいましたが、別に怒られるようなことはありませんでした」(花島さん) 筆者も実は、件の「ピクニック」の噂を聞きつけ、開催が予定されている都内の公園事務所、地方自治体への取材を始めていたが、担当者は皆騒動のことは知っていて、対応に四苦八苦している様子だった。ノーマスクピクニックの開催予定場所になっていた関東地方にある公園の管理事務所に勤める男性が、次のように本音を吐露してくれていた。「ピクニックの話は寝耳に水、一般の方が電話で教えてくれて知ったんです。これから(大型連休)の時期に、ノーマスクで来園されるなんてとてもとても……。市民の方からも『開催させるな』とお叱りのお電話も何本もいただいているんですが、我々に拒否する権利なんかありませんし、どうしていいものか」(関東地方の公園管理事務所職員) ところで冒頭の花島さん、筆者の問いには最後まではっきりと答えなかったが、首都圏を中心に全国各地で行われている「ノーマスクデモ」なる政治活動にも参加しているようで、SNSには、参加時の様子がわかる写真がアップされていた。東京都知事選や千葉県知事選挙にも立候補した経歴を持つ政治団体代表の男性や、男性を支持する人々がデモの運営母体と見られる。彼らは渋谷駅前など人でごった返す天下の往来で騒がしくデモを行うものだから、苦情が相次ぐなどトラブルにも発展している。「どういう方々がピクニックをしようとしているのか……ネットを見ているからわかりますよ。家族連れなど大挙して押し寄せるであろうゴールデンウィークに、うちの公園であんなデモみたいなことやられたら参ります。上(自治体の公園課など)とも相談をしています」(関東地方の公園管理事務所職員) 彼らの主張──マスクは必要がない、そして「コロナウイルスは存在しない」などという見解は、筆者は受け入れ難い。それでも、そう考えるのは自由だ。本音をいえば、人の迷惑にならないようなアピールをすれば良いと思うのだが、なぜか彼らは、自身に反対する人々の面前にわざわざ出てきては大騒ぎをして、迷惑をかける。暴走族も、街の中の、より多く人がいる場所にワラワラと出てきては、あえてやかましく振る舞うが、それと同じようなものなのか。「主張というより、嫌がらせです、我々にとっては」 同じく、ノーマスクピクニックの開催予定地になっていたという関西にある公園管理事務所の男性(50代)は、3月の花見シーズンにも、「マスクを外そう」と主張する人々と、公園内で対峙した。「他の利用者が不安になるから(マスクをしないなら、公園の利用は)あきませんいうのに、コロナウイルスなんかない、騙されとる、と言い返してきて話にならんのです」(関西地方の公園管理事務所の男性) 花見のシーズンが終わり胸を撫で下ろしていたところに入ってきたのが、ゴールデンウィークの「ピクニック」開催の噂。しかし公園には、もう一つ別のトラブルも襲いかかっていた。「ノーマスクの人たちがやって来たと思ったら、次はノーマスク運動に反対するっちゅう人たちがやってくるようになったんです。公園走ってるランナーがマスクをしとらんから注意せいと、管理事務所に押しかけてきたりとか、マスクしとらんお子さんの親御さん怒鳴りつけて喧嘩になったりね、そういうのが増えた。ピクニックの件でも、かなりクレームの電話いただきましてね、うちは関係ないというても、みなさん納得されんのです」(関西地方の公園管理関係者)「ノーマスク」も困るが、過激な手法で反対しようとする人々の存在もまた、公園管理事務所の男性を悩ませていたのである。「実際、ピクニックが行われる予定の他所の公園さんに電話もしましてね、困りましたなぁ、て言うとったんですが、一番嫌なのは、マスクを外そういう人と、それに反対する人たちが公園内でカチあって、喧嘩などに発展することです。無関係の市民に被害が及ばないとも限りません。ノーマスクも困るけど、反対がやってきてのトラブルはもっときつい」(関西地方の公園管理関係者) コロナ禍においては、感染対策やワクチン接種に関する議論が各所で紛糾し、それぞれの事象ごとに偏った見解を披露する人々の姿も目立つ。主張・見解をただ発表するだけでなく、社会を不安にさせる形で実行に移すことで、本当に市民に危害が及びかねない事態も発生し、反対する人たちとの対立もより鮮明になってきている。だが一般市民にとっては、どちらの主張が正しいかということはたいした関心事ではないだろう。本筋と関係のない場外乱闘ははた迷惑なだけだし、辛抱する生活が続くのに、これ以上疲弊させないでくれーそれが本音なのだ。
2021.05.16 16:00
NEWSポストセブン
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花粉症コスメ&グッズ 2021最新版「目、鼻、顔を守る快適グッズ」
 今年も本格的な花粉シーズンが到来し、気づけば目はかゆいし、鼻水はダラダラ。いまはマスク生活でただでさえ肌トラブルが多いのに、目をこすったり、鼻をかんだりといった肌トラブルのもとは避けたいところ。そんな悩みにピッタリの、最新花粉症対策コスメ&グッズを紹介します。【目】●目に入る花粉をシャットアウト!エニックス『目を守るメガネ』 目元を覆うフードによって花粉やほこりが目に入るのをガードできるメガネ。マスクをしてもレンズが曇りにくく、レンズの汚れは洗って落とせる便利さも併せ持つ。1000円前後で買えるものも多いので、気軽に買えるのも◎。●目がかゆいとき、ササッと塗れるコーセー『アレルテクト 目鼻バリア』 目のまわりや鼻のまわり、まぶたや鼻の中にまで塗れるジェルクリーム。透明なのでメイクの上からでも目立たないのが魅力の1つ。高精製ワセリンとオーガニック精製シアバター配合で荒れた肌にも優しい。小さめサイズで、持ち運びに便利なのも◎。【鼻】●もう鼻水に悩まない!レイワメディカルラボ『塗る鼻マスク』 6種の天然オイルを配合し、花粉のアレルゲンをキャッチしてブロックできると人気のオイル「ビアン」。そのビアンがたっぷり染み込んだ綿棒が1本ずつ真空パックされた「塗る鼻マスク」は、いつでもどこでも清潔に鼻に塗ることができる。●マスクとあわせて使えるのも魅力フマキラー『アレルシャット 花粉 鼻でブロック』 鼻の中にクリームを塗り込むことで、鼻が本来持っているフィルター効果が高まり、花粉の侵入をガード! マスクをつける前に塗り込んでおくことで、花粉防止効果がさらに高まる。●鼻に入れても違和感なし!バイオインターナショナル『ノーズマスクピットネオ』 鼻に差し込むだけで花粉の侵入を防げる鼻マスク。フレーム部分の素材がとても柔らかく優しいつけ心地で、その違和感のなさに驚くこと間違いなし! 水洗いして繰り返し使用できるので、経済的&清潔に使える。【口】●“化粧よれ”を防ぐ“ダイヤモンド形状”マスクサムライワークス『Victorian Mask』 人体工学的な設計に基づいた3段構造の”ダイヤモンド形状”で、マスク着用時の息苦しさやメガネの曇りの軽減、マスクと口元の接触を減らすなどメリットだらけのマスク。上下のマチによって口元に空間が作られ、化粧よれや口紅が付くのを防ぐメリットも。【顔全体】●服に貼るだけで花粉をバリアエステー『花粉バリアシール』 花粉をコーティングすることでアレル物質の働きを低減するという「トドマツ」の木から抽出された、香り成分入りの花粉バリアシール。衣服に貼るだけで、顔のまわりに浮遊する花粉をガードできるすぐれものだ。●アルコールフリーで肌にも優しいフマキラー『アレルシャット ウイルス 花粉 イオンでブロック スプレータイプ』 スプレーに含まれた陽イオンポリマーが、顔や髪全体をコート。花粉を反発・吸着して、目や鼻、口からの侵入を防ぐ。アルコールフリーで子供にも安心して使え、肌に優しい潤水成分のヒアルロン酸Naも配合している。【その他】●“コロナ疑惑”の人目を気にしないリアライズ『花粉症缶バッジ』 新型コロナの感染が拡大する中、花粉症でくしゃみや鼻水が出ていると周囲の目が気になるところ。そんな人のために「花粉症であること」を周りに知らせる缶バッジが人気を集めている。かばんなど身の回りのものにつけておけば、肩身の狭い思いをせずに済むかも。撮影/女性セブン写真部※女性セブン2021年3月18日号
2021.03.08 07:00
女性セブン
コロナで1.5倍増産も品薄続く アイリスオーヤマのマスク開発秘話
コロナで1.5倍増産も品薄続く アイリスオーヤマのマスク開発秘話
 ウィズコロナの時代、マスクの供給が安定してきた現在も人気で手に入りにくいマスクがある。それが、アイリスオーヤマの『ナノエアーマスク』だ。もともとはこの商品、花粉症向けに開発されたという。開発を手がけた女性営業部長にヒットの裏側を聞いた。【写真】特殊製法のフィルターが口元の温度上昇を緩和し、蒸れによる不快感を軽減するナノエアーマスク アイリスオーヤマといえば、ホームセンターで扱う日用品を思い浮かべがちだ。しかし、新型コロナウイルスによるマスク需要の拡大で人気を博し、国内最大のマスクメーカーへと成長した。特に、好評のため店頭に並んでもあっという間に売れてしまうのが、通気性を保ちながらウイルス飛沫や花粉を99%カットする『ナノエアーマスク』だ。 実は『ナノエアーマスク』は、新型コロナウイルスありきで作られた製品ではない。始まりは3年前の春にさかのぼる。ヘルスケア事業部長の岸美加子さんは、出張の際に新幹線内で、花粉シーズンなのにマスクをつけずにつらそうな人をたびたび見かけた。「マスクをすれば花粉を防げるのに、なぜ?」。疑問に感じた岸さんが調べたところ、4月になると花粉症向けの薬は売れ続けているのに、マスクの売り上げは減少しているという。気温が15℃を超えると、多くの花粉症患者がムレにより不快に感じるからだ。「ならば、ムレや息苦しさを感じないマスクがあれば受け入れられるはず」──そこからマスクのフィルターの開発が始まった。 普通、ムレを感じないほど通気性が高いフィルターでは、花粉やウイルスも通過してしまう。通気性とフィルターの双方とも性能を高めるという課題は難題だった。1年を費やしてたどり着いたのが、フィルターの繊維を太くして、さらにクモの巣のようにナノ繊維を這わせるというもの。ウイルスが侵入する隙間を塞ぎながら空気の通り道を作るのだ。それによって、口元の温度上昇を半分に軽減させることができた(※同社既存商品との比較による。既存商品の口元温度の上昇平均が1.2℃だったのに対し、『ナノエアーマスク』は0.6℃と半減)。 さらに、耳にかけるひもは包帯からヒントを得た。耳ひもをきつくして顔にフィットさせればマスクとしての性能は上がるが、耳が痛くなったり、かぶれたりすることもある。その点、包帯はぐるぐる巻いてもうっ血せず、フィット性も高い。岸さんが子供のけがの手当てで包帯を巻いているときに、「これは使える!」と思いついたという。『ナノエアーマスク』が発売されたのは2020年1月。時はすでにコロナ禍で市場のマスク不足は深刻だった。店頭に並べばあっという間に売り切れてしまい、消費者の声を聞く余裕もなくなってしまったという。発売当初は「花粉を99%カット」を惹句にしていたマスクだったが、半年後にはさらにウイルス飛沫も同程度カットする仕様に進化させた。マスクのフィルターの性能の研究を、発売後も続けていたのである。現在、コロナ以前に比べ、およそ1.5倍の増産を行っているが、それでも品薄状態は続いている。この4月にはさらなる増産も計画しているというから期待したい。「世の中にお客さんに100%満足を与えている商品はない」という考えがアイリスオーヤマの商品開発の根幹にはあるという。「満足いかない商品でも、それに気がつかなければ黙って使い続ける。しかし、人々が気づいていない“真の不満”を拾い上げていくことが次の開発のきっかけになります」と言う岸さん。「マスクに関しては、肌触りの向上やファッション性を高めていきたい」と締めくくった。※女性セブン2021年2月18・25日号
2021.02.10 07:00
マネーポストWEB
新型コロナ流行以降の日本の死亡者数の内訳、呼吸器系疾患に変化
新型コロナ流行以降の日本の死亡者数の内訳、呼吸器系疾患に変化
 昨年1月、国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認され、春には1度目の緊急事態宣言が発せられた。その後、感染拡大の小休止、再度の流行を繰り返し、現在は2度目の緊急事態宣言が発令中だが、その間に行われた対策によって我々の生活は一変した。 三密(密閉、密集、密接)を避ける生活が定着した。外出時、人々の集まるところではマスクを着用し、スーパーでもレストランでも、出入りの際にはアルコール消毒が徹底されるようになった。そうした人々の生活様式の変化は人口動態にも表れている。 厚生労働省は2月3日、2020年9月の人口動態統計月報(概数)を発表した。それによると1月1日から9月末までの死亡者数は日本全体で100万3242人となり、前年同期と比べ1万7365人減少した。総数だけなら11月累計の速報値が発表されており、1万5322人減少している。どうやら2020年は11年ぶりに死亡者数が前年を下回った可能性が極めて高いようだ。 9月までの累計データでみた項目別ワースト3は、【1】悪性腫瘍などの新生物(腫瘍)、【2】心筋梗塞、心不全、脳梗塞などの循環器系の疾患、【3】呼吸器系の疾患であるが、それぞれ順に累計人数、対前年同期比の変化数を示すと以下の通りである。・悪性腫瘍などの新生物(腫瘍):29万278人、+1104人・心筋梗塞、心不全、脳梗塞などの循環器系の疾患:25万945人、▲7886人・呼吸器系の疾患:12万7709人、▲1万6387人・全体:100万3242人、▲1万7365人(老衰:9万4822人、+6737人) 悪性腫瘍などで亡くなられた方が増えている中で、循環器系、呼吸器系の疾患で亡くなられた方の数が大きく減っている。呼吸器系の疾患で亡くなられた方々について、一部をブレークダウンしてみると以下の通り。・インフルエンザ:938人、▲2314人・肺炎(誤嚥性を含まない):5万8822人、▲1万2456人・誤嚥性肺炎:3万834人、+1277人 この人口動態統計月報(概数)で、新型コロナウイルスで亡くなられた方が含まれるとみられる「特殊目的用コード」に分類される死亡者数は1481人。ただし、厚労省のホームページをみると9月末時点の新型コロナによる死亡者数は1570人と示されている。 誤嚥性肺炎は、主に高齢者が食べ物をのどに詰まらせるなどして発症するものなので、新型コロナ対策の影響はないだろうが、一般の肺炎、インフルエンザで亡くなられた方は大幅に減少している。 また、新型コロナ対策によってストレスが溜まり、自殺される方が増えるのではないかと懸念されたが、実際には1万4416人で▲425人減少している。 死亡者数を見る限り、新型コロナ対策が副次的な効果を見せている格好だが、一方で気になる点もある。新型コロナによる死亡者数1570人という数は、インフルエンザで亡くなられた方の減少分よりも少ないという点である。 厚労省は昨年1月、新型コロナウイルス感染症を第二類感染症相当として政令指定した。第二類感染症には他にポリオ、結核、ジフテリア、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)などがある。新型コロナの感染力はたしかに脅威に見えるが、果たしてこれらと同じくらい恐ろしい感染症なのか、依然として未知の部分も多い。 この対策で倒産を余儀なくされた飲食業関連の方々や、厳しい経営を強いられている旅行業、エンタメ業界などの関係者にとっては、インフルエンザとは決定的に違うといった明確な根拠を示して欲しいところだろう。(※データを一部補足しておくが、厚生労働省の発表によれば2月7日現在、新型コロナによる死亡者数は6338人となっている。死亡者数は昨年12月から加速度的に増えている)文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。
2021.02.10 07:00
マネーポストWEB
PCR検査センターの前に、反対論者のグループがあらわれた
「コロナは風邪」主張グループの活動に戸惑い怯える住民たち
 思想・意見・主張・感情などを表現し、発表する自由、いわゆる「表現の自由」は守られるべきものだが、その表現のために他者を過剰に攻撃したり、威力業務妨害まがいの行為を繰り返したりするのは、彼らにとっての「正義」のためとはいえ許されることなのだろうか。ライターの森鷹久氏が、「コロナは風邪」と主張し、新型コロナウイルスを新たな感染症として考えること自体を拒否するグループによって生じている混乱と、戸惑う人々についてレポートする。 * * *  12月、ある平日のお昼過ぎ。客足がパタリと止んだかと思うと、外が少し騒がしくなったことに気がついた。こっそり店外を覗くと、プラカードを持った男女が数人、通行人に向かって何か叫んでいるのが見えたという。宗教か何かの勧誘か……にしては騒々しい。少し観察して、思わず「あっ」と声を上げた。「男の人たちが大声で『コロナは風邪です!』と叫んでいました、マスクもしないで。テレビで見かけたあの集団だと思うと本当に怖くなりました。一刻も早くどこかへ行って欲しいと、店のみんなでじっと身をすくめ、カウンターの中に隠れていたんですよ」 こう話すのは、東京・港区のとある飲食店従業員女性(30代)。店の入るビルに「新型コロナウイルス」の検査センターがオープンしたのが12月の初頭だった。自覚症状のあるコロナウイルス患者がビルにたくさん押し寄せてきたらどうしよう、当初はそんな不安もあったというが、検査に来る人たちとビルやテナント関係者とのトラブルはなく安心していた。そんな最中に起きたのが、冒頭の騒動である。「うちのお店に入ろうとするマスク姿のお客さんや搬入業者さんに向かって『マスクなんかするな』と声をあげ、お客さんは逃げるように立ち去っていきました。近くの店舗の男性従業員が文句を言いに行くと、マスクもせずに至近距離に近づいてきて、コロナを信じているのか、情報弱者だと、集団で男性数人に詰め寄られていました」(飲食店従業員女性) 近くのビルのガードマンの男性(50代)は、この一部始終を目撃。自身の管理管轄であるビルに近づかれてはたまらないと思い、集団の一人と話をしたという。「集団は、都知事選にも出馬した経験のある男性の支持者。新型コロナウイルスは単なる風邪で、恐れる必要はなく、検査場の前でみんなに教えてあげているんだ、という主張をしていました」(ガードマンの男性) 夏頃、渋谷駅前などで「コロナは単なる風邪だ」という主張を掲げ「クラスターデモ」なる迷惑行為を展開していた集団の一部が、今なお、都内を中心に「活動」を行っているものと見られる。秋から冬にかけて、都内では渋谷だけでなく新宿や池袋、中目黒駅前などでも姿が確認されているが、その勢いは、ネットを介在して全国に広まりつつあるという。騒動を取材している全国紙社会部記者が解説する。「SNSを介し、コロナウイルスなんか大したことがないという仮説に共鳴する人々が集まり、全国で『活動』をしています。北海道や福岡でも、小規模の『活動』が確認されており、それぞれの場所で大なり小なりトラブルになっている」(全国紙社会部記者) この集団の代表者や関係者に取材を試みた新聞社、テレビ局もあったというが、あまりに荒唐無稽な主張を繰り返すだけでなく、記者の個人情報などが守られず危険が生じかねない、などの恐れもあったことから、各社はすでに取材を諦めているという。 都内にある飲食店の男性店主(60代)もつい先日、件の集団による活動の「被害」にあったと訴える。「近くにコロナの検査センターができるという話があり、その近辺に『コロナは風邪だ』と叫ぶ男女が現れました。そこは運悪く、私の店の目の前。昼間の二時間ほど居座られ、その間、客は一人も入ってこなかった。文句を言おうものなら何をされるか、恐ろしくて何もできない。台風と一緒で、ただ過ぎ去るのを待つしかない」(男性店主) コロナは風邪、という主張をしたければすれば良い、と個人的には思う。ただし、その主張をするために他者の様々な自由を奪っている、そしてそのことに気がついているにも関わらず押し通そうとしては、彼らの言いたいことの正当性を疑われても仕方が無い。それに、新型コロナウイルスに怯えている人々から見れば「テロ集団」と変わらないほど恐ろしいだろう。しかし、「表現の自由」を掲げられると、全体主義国家ではない我が国で、こうした行為を取り締まることは難しい。 全国各地に、民間の新型コロナウイルスの検査センターが続々オープンしているが、それぞれの場所にこうした集団が現れ、住民達とトラブルが起きるのではないか。検査センターを開設する団体や企業、近隣住人の間からは、懸念の声が相次いでいるという。
2020.12.27 16:00
NEWSポストセブン
コロナを巡り様々な軋轢が生まれている(時事通信フォト)
鳥越俊太郎氏 コロナ禍でキレる高齢者に理解「報道煽りすぎ」
 新型コロナウイルスの感染拡大によって、外出や食事、人との距離感まで従来の常識は通用しなくなった。そして、「第3波」の到来によって、感染防止に対する意識の差はさらに広がり、軋轢も増えているようだ。 人々の行動を過剰に監視する“自粛警察”などと呼ばれる人がいる一方、楽観的すぎる言動で眉をひそめられている人もいる。不動産会社勤務の男性(53)が言う。「『インフルエンザ関連では年間1万人が死んでいる』『コロナは風邪と同じ』という持論があってマスクをしない部長がいます。飛沫も気にせず大声で話すので、狭い部屋での会議は地獄です」 こうした「コロナ安全論」は家庭内でも不協和音を生んでいる。「70代の父が『コロナはただの風邪』という考えに染まってしまい、友達や親戚、近所の商店にもそう力説して回るんです。マスクもしません。そんなこと言って感染して重症化したらどうするのか……」(54・自営業) 自費のPCR検査が増えたことで、こんな困った人も現われている。商社勤務の男性(49)が語る。「2か月前にPCR検査を受けて陰性だったという50代の役員がいます。日が経つのにいつまでも検査結果を印籠のように持ち出して『俺は大丈夫だ』と豪語。取引先の人を誘ってゴルフや、夜の街に行ってやりたい放題。尊敬する人でしたが、見る目が変わりました」 コロナ禍でヒンシュクを買う中高年が増えたことについて、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(80)は複雑な心境だという。「僕自身、テレビのコロナ報道は煽り過ぎだと思っています。だからマスク着用を求められてキレる高齢者の気持ちはわからなくもない。インフルエンザや年間37万人が亡くなるがんと比べると、コロナはそれほど怖いものではないんです。ただ、それを言うと、みんなに嫌われましたけどね」 鳥越氏は自戒を込めてこう語る。「高齢者の問題行動が取り沙汰されるけど、その人の本質が現われただけ。今の時代は当たり前の衛生管理をすることが“嗜み”なのでしょう。その嗜みを持ち合わせていれば、くだらないトラブルの要因も作らないし、冷静になれるはずです」 ざんねんな言動のせいで“心のディスタンス”まで取られないようにしたいものだ。※週刊ポスト2020年12月18日号
2020.12.12 11:00
週刊ポスト
(写真/GettyImages)
新型コロナ予防の新メソッド「20分に1回、口をゆすぐ」
 水分補給は、喉や体の乾きを潤すだけのものではない。ウイルスを不活性化させるために役立つという声が医療業界から聞こえ始めている。新型コロナの感染予防対策の新たなメソッドとは──。 1日の国内感染者数が2000人を超える日もあるいま、新型コロナウイルスとの接触を完全に避けるのは難しい状況といえるかもしれない。手や体についたウイルスは、石鹸で洗ったり、アルコールで消毒をすることで除去できるが、鼻や口などの粘膜についた場合はどうしたらいいのか。「ウイルスが粘膜についたら、すぐに感染すると思うかもしれませんが、実際は、感染するまでに“ロスタイム”があるとみられています」 こう解説するのは千葉科学大学危機管理学部教授で医学博士の黒木尚長さんだ。新型コロナの感染経路は主に2つ。感染者の唾液や体液に直接触れたり、それらが付着したものを触った後、自分の粘膜を触ることで起こる「接触感染」と、感染者がしゃべったりくしゃみをしたときの飛沫を鼻や口から吸い込んだり、その飛沫が目や口の粘膜に付着して起こる「飛沫感染」がある。どちらの場合もウイルスが最終的に粘膜に付着することで感染する。「新型コロナは粘膜の表面にある、ACE2受容体という器官と結合することで人間の細胞内に侵入し、増殖することで感染します。粘膜に付着してから細胞に侵入するまでの時間は、インフルエンザウイルスで20分程度。多少のずれはあるにしても、新型コロナでも同様のことがいえると思います」(黒木さん) 逆に言えば、粘膜に付着したウイルスが細胞に侵入する前の“ロスタイム”のうちに除去してしまえば、感染を防ぐことができる。感染を引き起こすACE2受容体は、鼻などの粘膜よりも、口の中の粘膜、特に舌の表面に多く存在するという。そのため、水やお茶などで口をゆすぐことで、効果的に感染を予防できると、黒木さんは分析する。「食事中などマスクを外すタイミングなら20分に1回、マスクをつけている間であれば1時間に1回など、定期的に口の中全体に水分を行き渡らせ、表面を洗い流しましょう。可能であれば、勢いよくクチュクチュしてください。吐き出すことが難しければ、そのまま飲み込んでも問題ありませんよ」(黒木さん) クチュクチュしてゴックン──これで感染を防げるというのだ。ウイルスを飲み込んでもいいとは意外だが、新型コロナの場合、胃や腸で増殖したり、胃の粘膜から感染することはないと考えられている。「新型コロナはエンベロープという膜で覆われています。インフルエンザも同様ですが、エンベロープで覆われているウイルスは酸性に弱く、pH5ほどの環境で不活性化する。このpHは数字が低いほど酸性が強くなる。胃液はもっと酸性が強いpH4なので、胃の中に入ればウイルスは感染力を失います。ノロウイルスのように胃を通過して小腸で増殖するウイルスもありますが、それはエンベロープを持っておらず、酸に強いウイルスだからです」(黒木さん)口の中で汚いと死を招く 定期的に口をゆすげば、口腔内の環境を清潔に保つことにつながり、ほかの病気にもかかりにくくなるという。インフルエンザウイルスも、口の中が汚い人ほどかかりやすいという研究結果がある。「口腔内に食べかすがあると、歯周病菌が増殖します。歯周病菌はインフルエンザを粘膜の細胞に侵入しやすくする酵素である、プロテアーゼやノイラミニダーゼを生み出します。そのため、口腔内が汚れていると、インフルエンザに感染しやすくなるのです。食後に口をゆすぐ際は、食べかすを水圧で落とすイメージで、勢いよく行うといいでしょう。もちろん、食後の歯みがきも有効です」(黒木さん) さらに、口の中が汚れている人が新型コロナに感染した場合、あっという間に死に至る可能性もある。鶴見大学歯学部教授の花田信弘さんはこう分析する。「新型コロナに感染して重症化した場合、敗血症という、多数の臓器が機能不全の状態になることがあります。敗血症になる原因を見ると、新型コロナによるウイルス血症と、歯周病菌による菌血症の混合感染であることが多い。口の中の衛生状態を保ち、歯周病を予防することで、新型コロナの重症化を防げるのです」 実際に英国リーズ大学歯学部などの研究チームが行った調査では、新型コロナで死亡した人の口腔内から、大量の歯周病菌が見つかっている。口をゆすぐことで防げる病気はほかにもある。年間約4万人が命を落とす「誤嚥性肺炎」もそうだ。「通常、唾液や食べ物などを飲み込むとき、誤って気管に入ってしまうと、むせることで異物を排出します。しかし、加齢などで喉の筋肉が弱くなり、食べ物を飲み込む機能が低下すると、気づかないうちに気管に唾液が入ったり、食べ物を誤嚥しやすくなります。そのとき、口腔内の細菌も一緒に気管に入り込むことで肺炎を引き起こしてしまうのです」(黒木さん) 口腔内を清潔に保ち、細菌の繁殖を防ぐことが、誤嚥性肺炎のリスク軽減にもつながるとみられている。口をゆすぐという行為が、新型コロナをはじめ、さまざまな疾患リスクに効果があるようだが、過信は禁物だ。タイミングよく口腔内のウイルスを洗い流せたとしても、鼻や目の粘膜から感染するリスクは依然として残る。マスクや手袋をつけて、粘膜に触れないように注意し続ける必要がある。「口をゆすぐとき、飲むのなら1時間に1リットルなど短時間に大量の水を飲むのは危険です。血液中のナトリウム濃度が低下し、意識障害やけいれん、嘔吐などの症状を引き起こす可能性があります。ゆすいだ水を飲み込むなら、口に入れるのは少量にすべきでしょう」(医療ジャーナリスト) 手洗いとうがいに加え、新しい生活習慣として取り入れてみてはいかがだろうか。※女性セブン2020年12月17日号
2020.12.05 16:00
女性セブン
コロナ禍で家事や育児時間が増加!夫婦の役割分担にも変化あり
コロナ禍で家事や育児時間が増加!夫婦の役割分担にも変化あり
コロナ禍で在宅勤務などを経験して、夫婦ともに自宅にいる時間が長くなったという人も多いだろう。ただでさえ、家庭内のこまごまとした家事で大変なのに、「家族の在宅時間が長くなると新たな家事も増える」ということをリンナイの調査が浮き彫りにした。どういった家事が増えて、誰が担当しているのだろう?【今週の住活トピック】「夫婦の育児・家事」に関する意識調査を公表/リンナイ家事・育児に積極的に参加する男性が増加!といえども…まずリンナイの調査で、「コロナウイルスの影響で在宅勤務、在宅時間が増えたか」を聞いたところ、過半数の53.7%が増えた(とても増えた+やや増えた)と回答した。男性に限ってみると、増えたという回答は57.0%に達する。増えたと回答した男性に、「コロナ前と比べて、育児・家事に対する参加度合いはどのように変化したか」を聞くと、61.1%が「積極的に家事・育児に参加するようになった」と答えた。女性である筆者から見ると、喜ばしいことだ。で、実際の家事や育児の時間はどうかというと、全体では次のような変化が見られた。Q.コロナ前後でのあなたの育児時間・家事時間について、1日あたりの平均時間をそれぞれお答えください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)男性の家事・育児の時間がコロナ前より長くなっているが、女性もやはり長くなっているので、女性に負担がかかっているという状況は実はさほど変わっていない。とはいえ、意識の変化は今後のカギになるだろう。「コロナウイルスの影響で在宅勤務、在宅時間が増えた」人を対象に、「コロナ以前よりもパートナーと家事の分担をするようになったか」を聞いたところ、男性では70.3%、女性では48.5%が分担するようになったと感じる(とてもそう感じる+ややそう感じる)と回答した。分担の実感に男女差はあるにせよ、コロナ禍が家事分担を意識するきっかけになったのは確かなようだ。在宅時間が増えたのは男性が多いので、こうした流れや男性の意識が今後も拡大していくことを期待したい。約4割が、コロナ前と比べて家事の量や頻度が増えたコロナ禍では、例えば「マスクを毎日手洗い」したり、「手洗い用の石鹸を補充」したり、「消毒液や除菌シートの在庫を確認」したり、ネットで購入した宅配物の「段ボールや箱をつぶして捨てる」といったことが、新たな家事に加わったり、以前より増えたりしたのではないだろうか?リンナイの調査で、「コロナ禍での家事の量や頻度について」聞いたところ、「コロナ前と比べて家事の量や頻度が増えた」(とても増えたと感じる+やや増えたと感じる)という回答が43.9%に達した。家事の量や頻度が増えたと回答した人に、増えた家事や育児について聞くと、男女別にやや違いが見られた。Q. コロナ禍によって育児・家事で時間が増えたと思うものをすべてお選びください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)女性は圧倒的に「料理」が増えたと回答しており、家族が長く在宅することで料理をつくる頻度や量が増えたからだろう。「掃除」「育児」「片付け・収納」は男女ともに増えているが、「食料品・日用品の買い出し」については男性のほうがより増えたようだ。次に、コロナ禍によって新たに増えた家事や育児を聞くと、「マスクの手洗い・洗濯」と「除菌、手洗いうがいの呼びかけ」は、半数近くの人が新たに増えたと感じていることが分かった。下図を見ると、コロナウイルスから家族を守ろうと、こまめに作業している様子がうかがえる。Q. コロナ禍によって、新たに増えたと感じる育児・家事は何ですか(複数回答)(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)家事・育児の分担や男性の参加で子どもの数は…?さて、明治安田生命の「子育てに関するアンケート調査」では、「子どもをさらに欲しい」という回答が30.5%になり、過去最多になった。その理由として、幼児教育・保育の無償化による「家計負担の軽減」や、テレワークの普及などによる「子育てと仕事の両立のしやすさの向上」などが影響していると分析している。また、ステイホーム期間中に子どもといる時間が長くなり、子どもの世話をすることで絆が深まるなど、子育てにプラスの影響があったことも要因とみている。一方で、厚生労働省が発表した全国の妊娠届の件数が5月~7月で前年より下回り、産み控えも懸念されている。妊娠届の件数はこの先の出生数の目安になることから、2021年の出生数が注目される事態となっている。コロナウイルスという禍の中で、予防に苦慮する日々が続いている。収入が大きく減少したという人もいるだろう。こうしたマイナスな側面も多いが、在宅時間が長くなることで、パートナーや子どもと話す機会が増えて、新たな面に気づいたり、いとおしさが増したりといったこともあったのではないか。リンナイの調査結果を見ると、いまなお女性の負担が大きいものの、男性の家事・育児の参加が増加したことが分かる。テレワークの普及ともあいまって、仕事と子育てが両立しやすくなるといった変化もあり、この事態が夫婦や親子の関係性について再認識する機会になればよいと願う。(山本 久美子)
2020.10.28 07:00
SUUMOジャーナル
「日本のコロナは11月以降に消滅、第3波も来ない」説の根拠
「日本のコロナは11月以降に消滅、第3波も来ない」説の根拠
 どこもかしこも人、人、人──新型コロナウイルスが蔓延して以降、全国各地で久々の賑わいとなったシルバーウイーク4連休。新規感染者数も落ち着き、安心感さえ漂っている。しかし、「第3波」が来るといわれる秋、冬はもう目前。感染再々拡大は本当に来るのか、それとも……。 日本人はすでに新型コロナウイルスを克服した──。京都大学大学院特定教授の上久保靖彦さんが、吉備国際大学教授の高橋淳さんと3月に発表した、新型コロナウイルスに関する論文が、話題となっている。その内容を要約するとこうなる。「すでに多くの日本人は免疫を獲得しているので、新型コロナウイルスを恐れる必要はない」「日本人は新型コロナを克服した説」の最大のポイントは「集団免疫の獲得」である。ウイルスに感染すると、体内の免疫システムが働いて「抗体」ができ、その後、同じウイルスに感染しにくくなったり、重症化を防いだりする。そうした抗体を持つ人が人口の50〜70%を占めるとウイルスが人から人へ移動できなくなり、やがて流行が終息する。それが集団免疫だ。 日本は各国と比べて新型コロナの感染者、重症者、死者が極めて少ない。「日本の奇跡」──世界からそう呼ばれる背景に集団免疫があると指摘するのが、感染症・免疫の専門家でもある前出の上久保さんだ。「新型コロナは最初に中国で弱毒のS型が発生し、その後に弱毒のK型、強毒のG型の順に変異しました。中国人観光客の入国によって昨年12月にS型が日本に上陸し、今年1月中旬にはK型がやって来た。しかも日本は3月8日まで中国からの渡航を制限しなかったため約184万人の中国人観光客が来日し、S型とK型が日本中に広がりました。それにより、日本人は知らない間に集団免疫を獲得したのです」 弱毒のS型とK型にセットで罹ることにより、その後に流入した強毒のG型の免疫になった──という理屈である。一方、2月初頭から中国人の渡航を厳しく制限した欧米では、K型が充分に広まらなかった。「そのため、中国・上海で変異した強毒性のG型が欧米に流入した際に防御できず、同地で重症者が激増しました。対する日本は集団免疫ができていたため、G型が流入しても被害が少なかった。私たちの試算では現在、日本人の85%以上が免疫を持っています」(上久保さん・以下同)「上久保理論」を後押しするのが、免疫を獲得したことを示す「IgG抗体」を保有する人たちだ。「私たちの共同研究チームが10~80代のボランティア約370人の抗体検査をしたところ、全員がIgG抗体を持っていました。ちなみにIgG抗体を持つ人でも、喉にたまたまウイルスがいればPCR検査で陽性になりますが、免疫があるため症状はほとんど出ません。最近目立つようになった無症状の感染者は、そうしたケースであると考えられます」 この秋以降、新型コロナとインフルエンザの「ダブル流行」を心配する声もある。上久保さんが説明する。「インフルエンザに感染したら、コロナウイルスには感染しません。逆もまたしかりで、この逆相関関係を『ウイルス干渉』と呼びます。実際、昨年末に新型コロナが流入してから、インフルエンザの流行はストップしました。 しかも、人間の細胞にくっついて影響を与えるウイルスの突起(スパイク)の変異可能な数は最大12~14回で、頻度は月1回ほど。新型コロナのS型が発生したのは昨年12月なので、早ければ11月にも最後の変異を終えて、普通のコロナウイルスに戻るとみられます。それはコロナウイルスの原則的なメカニズムと考えられることなのです。新型インフルエンザが流行しない場合は、新型コロナが11月以降に消滅して、第3波が到来することはないでしょう」 新型コロナは打ち止め間近だというのだ。「ブースター効果」で免疫を強化する 集団免疫のほかにも「コロナ克服」を示唆するさまざまな研究が出ている。アメリカと中国、香港の研究機関が9月に公表した共同研究では、世界各国における新型コロナ第1波と第2波の致死率を比較した。すると53か国のうち43か国で致死率が低下していた。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが説明する。「致死率低下の理由として、第1波で免疫力が低い人が亡くなったので第2波で亡くなる人が少なくなったという『弱者刈り取り効果』や、医療体制の整備、ウイルスの変異、若い世代の感染者増などがあげられています。論文は新型コロナの状況が明らかに変化したことを示唆しています」 注目は「ウイルスが変異した」という点だ。「現在、流行しているのは、感染力が強い新タイプのウイルスです。一般的にウイルスは“覇権争い”をすることがあり、あるウイルスが流行すると、ほかのウイルスが圧倒される。現状、新しいタイプの新型コロナウイルスが広まったことで、致死率の高さが見られた旧タイプのウイルスが減り、致死率が全体的に下がった可能性が指摘されています」(室井さん) 国立国際医療研究センターの調査でも、6月5日以前は19.4%だった重症者の死亡割合が6月6日以降は10.1%に低下。特に50~69才は10.9%から1.4%に、70才以上は31.2%から20.8%と激減した。「重症化しそうな患者に対する医療現場の対応力が向上したことも、致死率低下の一因でしょう」(血液内科医の中村幸嗣さん) 日本では、1人の感染者がうつす平均人数を示す「実効再生産数」も低い。この数値が1以下になると感染が終息に向かっていくとされ、現在の実行再生産数は、東京以外は1を下回っている(9月22日時点)。米カリフォルニア大学アーバイン校准教授で公衆衛生学を専門とするアンドリュー・ノイマーさんが言う。「過信は禁物だが、日本の主要都市で実効再生産数が1を下回ったということは、日本は最高レベルの警戒が必要な状態ではなく、第2波のピークが過ぎたと言っていい。日本が諸外国と感染者数、死者数が抑えられているのはマスク使用率の高さにあると私は考えています。今後もしっかり感染予防を続けていけば、合併症による死亡例も抑えられるはずです」 アメリカのラ・ホーヤ免疫研究所が注目したのは「ヘルパーT細胞」だ。同研究所が世界的なライフサイエンス雑誌『セル』で発表した論文では、新型コロナ未感染者の血液の半数から、新型コロナを撃退する「ヘルパーT細胞」が検出された。簡単にいうと、既存のコロナウイルス、つまり普通の風邪に感染したことがある人も、新型コロナに対する免疫を獲得している可能性があるということだ。「ほかにもBCG接種による自然免疫の増強や、実際に感染したことによる免疫の獲得などが絡み合うことで、新型コロナに感染する可能性が低下し、感染しても重症化しない割合が高まっています。引き続きマスク、手洗い、3密回避を行えば安心です」(中村さん) 最近は時短営業の終了やイベント制限緩和が進み、人の動きが活発化することを懸念する声もあるが、上久保さんは「ウイルスとの共存が必要」と指摘する。「何度も新型コロナに感染すると、免疫機能が強化される『ブースター効果』を得られます。抗体は時間とともに減少するので、一度感染しても隔離状態でいると免疫が薄れ、逆効果になります。高齢者や持病を持つなどリスクの高い人との接触には注意しつつ、普通の経済活動を再開することが、社会にとっても個人にとっても有益です」 新型コロナウイルスを正しく理解すれば、恐ろしくないのだ。※女性セブン2020年10月8日号
2020.09.28 16:00
女性セブン
いまや寿司はアメリカ人の日常食に
コロナに怯えるニューヨーカーを癒やす「お持ち帰り寿司」
 世界最多のコロナ被害者を出しているアメリカでは、感染者は700万人に迫り、死者は20万人近くに達している。感染率も死亡率も日本とは桁違いであり、市民の恐怖や絶望も全く違う。そのアメリカでも特に被害の深刻なニューヨークから、ジャーナリスト・佐藤則男氏がコロナ禍の日常をリポートする。 * * * コロナウイルスが暴れ出して以来、マンハッタンは、少し大袈裟に言えば人間が人間らしく暮らすことのできない街になってしまった。事実、コロナウイルスが街中あちこちを汚染し、まるで遠慮なく人間の体に入り込み、その機能を侵し、死に至らしめている。自分がそうなってしまった時、人々はもはやウイルスを追い出すことはできないことに絶望し、「なぜ、こんなことになってしまったのか」と運命を呪う。お年寄りや病人ならば、死の影に怯えることになる。病室で家族とも友人とも隔離され、一人で戦い、死んでゆく人たちが毎日出ている。アメリカ全土では、そんな孤独な死に至った人が20万人近くになった。この途方もない数は、日本の読者には実感が伝わりにくいかもしれない。まさに悲劇である。悲しい、無念な一つ一つの死が20万も積み上がってしまったのである。なんという恐ろしいウイルスであろうか。しかし、おそらくそうした微生物は、地球に生命が誕生して以来、いくらでも現れてきたのだ。 さて、筆者はしばらく「疎開」していたコネチカット州から、久しぶりにマンハッタンの我が家に帰り、街に出てみた。その活気のなさに、改めてウイルスの脅威を見せつけられ、行き場のない憎しみがこみあげてくる。ヘアカットし、夕飯を買うことにした。途中、いつも満席だった有名なレストランが、歩道にテーブルを出し、卓ごとに花を生け、きれいにクロスをかけて準備を整えているが、客はひとりもいない。従業員たちは手持ち無沙汰で突っ立っている。「密」を避けるため、このように店外の空間のみ、レストラン営業が許可されている。レストランにしてみれば、1ドルでも収入が欲しいのである。だが、きっと今日も徒労に終わるだろう。 レストランを素通りし、スーパーに入った。こちらは活気がある。当たり前である。外食できなくなったニューヨーカーたちにとって、貴重な食料供給所である。買い物客は、しっかりマスクをつけ、他の客とソーシャルディスタンスを保とうと目を配っている。誰もが、一人くらいは悲しい死を迎えた人の話を周りで聞いているだろう。ここではウイルスによる死があまりにも身近なので、うつされるのも、うつすのも怖いのである。 暗い話ばかりでは恐縮なので、日本人にとって明るい、楽しい話も紹介したい。このスーパーはかなりの大型店で、そのなかに大人気の寿司売り場がある。本格的な握り寿司と巻物が売られていて、筆者もこれが好きである。アメリカ人の好みに合わせた「アメリカ寿司」ではあるが、ほとんどのニューヨーカーには、これこそが「寿司」である。この原型となったスーパーマーケット内でのデリカテッセン方式は、実はかつて筆者がコンサルタントとして戦略と展開計画を作ったものだ。その話は機会があればお伝えするが、とにかく今や、アメリカの大きなスーパーは、どこもこの寿司ビジネスで大繁盛している。日本食が庶民にまでこんなに受け入れられているのを見ると、やはりうれしい気持ちになる。そういえば、最近はラーメン店も増えた。コロナでどこも営業は苦しいはずだが。 それにしても、この未曽有の危機と闘う総大将が「コロナウイルスはインフルエンザのようなもの。時期が来れば消える」などと語り、極め付きは、自分の演説会場に2000人もの観衆を招待して、なんとマスクの使用を禁止したのである。言うまでもなく、ドナルド・トランプ大統領のことだ。その認識不足、間違った方策も影響して、すでに20万近くの命が失われた。大統領選挙には様々なテーマがあるが、個人的には、これだけの国民の命を奪ったウイルスとの戦いこそが最大の評価基準になるべきと思う。11月3日は、アメリカがコロナと戦う総大将を選ぶ日になる。筆者はひそかに、「コロナデイ」と名付けている。
2020.09.21 07:00
NEWSポストセブン
マスクをしていてもすでに感染している(時事通信フォト)
京大教授「日本人はコロナを克服。年末に終焉」説の論拠
「日本の奇跡」──世界各国は日本の新型コロナウイルスの感染者数や重症者数、死者数の少なさに困惑し、「ファクターX」を探していた。しかし、ある1人の専門家によって、その謎は解かれた。もはや「新しい日常」は必要ないのかもしれない。「世界中で新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいますが、すでに日本人はワクチンを打っているのと同じ状態にあります。いま、無症状の陽性者が増えているのも、彼らは“自らの免疫ですでに新型コロナに打ち克っている人たち”なんです」 そう語るのは、京都大学大学院特定教授の上久保靖彦さんだ。小池百合子都知事が9月4日、「感染者数が再び増加に転じないよう厳重な警戒が必要」と発言するなど新型コロナ脅威論は根強い。だが上久保さんは、「新型コロナの脅威は終わった」と断言する。 第二波の被害は第一波を上回る──それがこれまでの感染症の常識だった。1918年に日本を襲ったスペインかぜでは、第二波の死亡率が第一波の4倍以上に跳ね上がった。1957年のアジアインフルエンザや2009年の新型インフルエンザも第二波の感染者数は第一波を上回った だが新型コロナは異なる。PCR検査の増加に伴って第二波の陽性者は増えたが、致死率や重症化率は大幅に減少。国立感染症研究所が推計した第一波の5月と、第二波の8月の致死率を見ると、全年齢で8月は5月より6.3ポイント低い0.9%で、重症化が心配される70才以上では、8月は5月より17.4ポイントも低い8.1%だった。 そもそも日本の被害は、世界と比べて圧倒的に少ない。アメリカの感染者630万人、死者18万人、医療崩壊を起こしたイタリアの感染者27万人、死者3万5000人に対し、日本は感染者7万人、死者1300人に過ぎないのだ(9月8日現在)。 なぜ日本だけが──その要因は「ファクターX」として世界中から注目された。ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥・京都大学教授は「厚労省のクラスター対策」「マスクや入浴などの衛生意識」「BCGワクチン」などを“候補”としたが、いまだ明確な答えは見つからない。 そこで注目されるのが、冒頭の上久保さんが吉備国際大学教授の高橋淳さんと3月に発表した論文だ。その内容を要約するとこうなる。「すでに多くの日本人は免疫を獲得しているので、新型コロナを恐れる必要はない」 上久保さんは京都大学血液・腫瘍内科で感染症の臨床を学び、米国立衛生研究所(NIH)の所長のもと、遺伝子学を学んだ。現在、京大では免疫学や臨床検査学の教育・研究を長年行う、遺伝子変異分野のプロ中のプロである。その上久保さんが注目したのが、新型コロナの変異とインフルエンザの流行曲線だった。「新型コロナやインフルエンザのような『RNAウイルス』の周りには、細胞にくっついて影響を与える突起(スパイク)があります。そのスパイクが変異することでウイルスは伝播・増殖しやすくなります。  そこで世界中の新型コロナの変異情報を記録するデータベース『GISAID』で調べたところ、新型コロナはS型、K型、G型の順に変異していることがわかりました。S型とその変異形であるK型は“弱毒タイプ”で、G型は人間の細胞とくっつきやすいスパイクに変異した“強毒タイプ”でした」(上久保さん・以下同) それらのウイルスがいつ、どのように世界に広まったかを調べるために、上久保さんが注目したのが、世界各国で精緻にモニターされているインフルエンザの流行曲線だ。「インフルエンザに感染したら、コロナウイルスには感染しません。逆もまたしかりです。その逆相関関係のことを『ウイルス干渉』といいます。日本は昨年末までインフルエンザが流行していましたが、その時期に新型コロナが流入したことにより『ウイルス干渉』が起こり、インフルエンザの流行がストップしました。つまり、新型コロナの感染が拡大したということです」 各国のインフルエンザ流行曲線を調べた結果、最初に中国で発生したS型は昨年12月にはすでに日本に上陸していたことがわかった。また、1月中旬にはK型が日本に上陸するなど中国近隣諸国にも広がっていた。 つまり、日本において新型コロナの感染や重症化がおさえられたのは、S型、引き続きK型が早期に日本に流入していたことにあるという。今年1月中旬に武漢滞在から帰国した男性が国内最初のコロナ感染者とされたが、昨年末の段階で、すでに弱毒性のコロナが蔓延していたのだ。「もう1つのポイントは、1月23日に武漢が封鎖されてからも、3月8日まで中国人の渡航を制限しなかったことです。政府の方針は『対応が遅い』と批判されましたが、昨年11月から2月下旬にかけて約184万人もの中国人観光客の入国によって、S型とK型が日本中に広がった。それにより、日本人は知らない間に『集団免疫』を獲得できた。日本人はすでに新型コロナを克服していたのです」「370人全員が抗体を持っていた」 そもそも「免疫」とは、体内に侵入してきたウイルスや病原体に対抗する防御システムを指す。ウイルスが体内で増殖を始めると、危険を察知した免疫システムが起動して「抗体」を大量生産する。抗体はウイルスの表面にとりつき、やっつけることにより、細胞への侵入を阻止する。 抗体を持つ人が人口の50~70%を占めるようになるとウイルスが人から人へ移動できなくなり、やがて流行が終息するとされる。それが「集団免疫」である。 ちなみにワクチンとは、毒性がなくなった、もしくは弱められた病原体を体内に注入することで免疫をつける医薬品のこと。冒頭で上久保さんが言ったように、感染により免疫があるということは、ワクチンを打ったのと同様のことだ。 日本人が集団免疫を獲得した後、武漢で強毒化した「武漢G型」が日本に流入し、中国・上海で発生した「欧米G型」が世界に広がった。「武漢G型、欧米G型は日本にも入ってきましたが、すでに日本人はS型とK型で集団免疫ができていました。G型は感染力が強く、多少の流行は生じましたが、S型とK型のコンビネーションで防御しているうち、G型の集団免疫も達成したと考えられます。そうして集団免疫を獲得できたことが、日本の被害が少なかった最大の要因です」 では欧米ではなぜ多くの被害が出たのだろうか。「カギを握るのはK型です」と上久保さんが続ける。「K型に感染すると免疫細胞の1つである『T細胞』が強化され、G型への防御力がアップします。しかし欧米は2月初旬に中国からの渡航を全面的に制限したため、G型に対抗するはずの弱毒のK型が充分に流入せず、強毒のG型の感染拡大を防げなかった。 S型は欧米に充分に流入していましたが、S型の抗体だけだと、かえってウイルスの増殖を盛んにする『抗体依存性免疫増強(ADE)』を引き起こします。欧米では、K型が入らなかったことにより、S型によってADEが起こり、重症者が増加したのです」 日本とは逆に、中国からの渡航を早めに制限したことが仇となり、あれだけの被害を招いたのである。 ここで1つの疑問が生じる。前述の通り、コロナに感染して免疫ができたのならば、「抗体」ができるはずだ。しかし、6月に厚労省が3都府県7950人に行った抗体検査では、東京都0.1%、大阪府0.17%、宮城県0.33%と、抗体を持つ人はきわめて少なかった。これは多くの日本人がコロナに感染して集団免疫を獲得したという「上久保理論」と矛盾するのではないか。「基準の問題です。抗体検査キットで陰性と陽性の境を決める基準を『カットオフ値』といいますが、その値はキットを作る会社が決めます。日本の場合、すでに発症して入院中の患者を基準にカットオフ値を決めたため、数値が高くなった。それにより、本来は抗体を持っている人まで『抗体なし』と判断されたと考えられます」 抗体検査では、「IgG」という抗体値が重要だ。「ウイルスに初めて感染すると最初に『IgM』という抗体値が上がり、その後に『IgG』が上昇します。また、すでに免疫を持っている人が再感染した場合、IgGが先に上がります。すなわち、抗体検査でIgGが確認された人は、すでに感染して免疫を持っていることになります。 実際、私たちの共同研究チームが10~80代のボランティア約370人の抗体検査をしたところ、全員が新型コロナのIgGを持っていた。これはすでに全員が感染していたことを意味します。“原因がよくわからないけどちょっと体調が悪いな”と身に覚えのある人は、感染して免疫を持っている可能性が大いにあるのです」「微熱が出るのは免疫がウイルスと闘っているから」 一方で、「新型コロナの抗体は2~3か月で急激に減少する」との報告もある。中国・重慶医科大学らの研究では、患者の退院2か月後に症状があった人の96.8%、無症状の93.3%でIgG抗体が減少した。減少割合は半数の人で70%を超えた。上久保さんは「抗体が減少するからこそ、ウイルスとの共存が必要」と指摘する。「確かに抗体は時間とともに減少します。しかし一方で、一度免疫が作られると、その後に再度感染することで免疫機能が強化される『ブースター効果』が期待できます。だからこそ、時折感染して抗体値を上げ、下がったらまた感染するというサイクルを繰り返すことが重要です。ワクチンを繰り返し打つことで、免疫が強くなることと同じです。“絶対にコロナにかからない”という考え方では、免疫機能は一向に働きません」 免疫を働かせるため何度も感染すべきというのが上久保さんの主張だ。現実的にも、感染は繰り返されていると上久保さんは指摘する。「すでに抗体を持っている人でも“喉にたまたまウイルスがいるケース”では、PCR検査をすれば陽性になります。それがいま急増中の無症状の人たちの正体です。ウイルスは検知されたけれど、免疫を持っているからほとんど症状が出ないということ。そのため『感染者』ではなく、『陽性者』と表現した方が私は正しいと思います。一時的に微熱や喉の痛みなどの軽い症状が出るのは、免疫がウイルスと闘っているからです」 軽症や無症状が目立つ一方、コロナで重症者や死者が出ているのも事実だ。「もちろん、高齢者や基礎疾患のある人が新型コロナにかかると重症化のリスクがあります。S型やK型に感染しなかった人がいきなりG型に感染しても重症化しやすいでしょう。 また、厚労省の通達により6月18日からどのような要因による重症化や死亡でも、PCR検査が陽性なら新型コロナが要因とみなされることになりました。例えば、心筋梗塞の持病があって死亡してもたまたま陽性だったら、新型コロナ肺炎による死亡とカウントされる。そうした統計の取り方で重症者や死者が増えている面があります」 これまでインフルエンザ同様、秋冬に新型コロナが再拡大すると指摘されてきた。だが上久保さんは「11月に新型コロナは終息する」と語る。「私たちの試算では、いまのところ日本人は、S型50%、K型55%、武漢G型80%、欧米G型85%で集団免疫が成立し、このままいけば、11月にはほぼ100%の日本人が免疫を持つはずです。高齢や基礎疾患などの重症化リスクがなければ、今後亡くなる人は少なくなるでしょう」 ウイルスの変異も11月が「最終章」になる。「新型コロナのスパイクが変異可能な数は最大で12~14で、ひと月に1回ほどの頻度です。現在、日本が検体のデータを出していないので何型まで進んでいるのかわかりませんが、S型が始まったのが昨年12月なので、今年の11月には最後の変異を終えて、その後消失し、ただのコロナウイルスになります。それはコロナウイルスのメカニズムで決まっていることなのです。年末には、新型コロナは終焉を迎えるはずです」※女性セブン2020年9月24日・10月1日号
2020.09.11 11:00
女性セブン

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