20年前の三社祭。現在は、入れ墨がある人は神輿の担ぎ手に応募しても断られることがほとんどだ(AFP=時事)

20年前の三社祭。現在は、入れ墨がある人は神輿の担ぎ手に応募しても断られることがほとんどだ(AFP=時事)

「ちょうどコロナで、社内でワクチンの集団接種があったんです。接種の時は肩を出したり、上半身半裸にならなければならず、でも医者にしか見せないから大丈夫、と思っていたんですが、結局誰かが上に報告したようでバレました」(町田さん)

 町田さん自身、日本社会にはタトゥーや入れ墨に対する偏見があるとは感じている。しかし、入った会社で偏見はよくない、なくすべきなどと声高に主張することはない。そもそも、親の反対を押し切り、未成年で勝手に入れ墨を入れたという後ろめたい経緯もある。入れ墨を入れていた知人や先輩、後輩の中には、自分と同じように過去を隠し、社会生活している者もいる。しかし、少なくない数が、不良や反社会的勢力の一員となり、今なお非合法な手段を生活の糧にしている者も多い。

「偏見、と言われればそうなんですが、現実はやっぱりそうなんです。入れ墨を入れている人のイメージがそもそも悪いし、入れている側の責任によるところが大きい。社会に出てから初めて気がついた普通の感覚です。当然、上司から呼び出され事情を聞かれました。上司はもっと上に報告しなければならない、コンプライアンスの問題と言っていましたが、隠していたこともあるし、反論できませんでしたね」(町田さん)

 町田さんは、あと数年子会社にいれば、そのまま親会社への転籍するポジションにいたといい、社内では「栄転」と呼ばれる出世コースに乗ることを目指していたが、この件でその芽もきれいさっぱり刈り取られたようだと肩を落とす。

「ノリで入れちゃいました」

 同様に、入れ墨を入れてしまったがために大変な苦労を強いられているという人は他にも多数存在する。若気の至りで入れてしまった入れ墨のおかげで、夢を諦めかけたと話すのは、千葉県在住の行政書士事務所スタッフ・佐々木ほのかさん(仮名・20代)だ。

「私もオラオラブームで入れ墨を入れたひとりです(笑)。当時は看護学校に行ってたんですが、学校になじめず親にも反抗していて、ノリで入れ墨を入れちゃいました」(佐々木さん)

 佐々木さんの場合、入れ墨といっても腹と胸、腕のワンポイントではあったが、それぞれが10センチから20センチ程度で大きく、しかも強面な和彫り風。しかも半袖だと見えてしまう位置である。当初は湿布や絆創膏などで隠したが、結局それも教員にバレてしまい、口論になって学校ごと辞めてしまった。その後、アルバイトをしようと面接を受けたが、結局入れ墨の件が引っかかり、普通の仕事はできなかった。

「入れ墨入れてた女友達も同じで、仕事ができないといっていました。結局、そうやってだんだんグレていって、社会に戻れなくなり、暴力団員の彼氏と付き合うようになりました。でも、私も入れ墨が入ってるけど負けたくないと思い、そこから一念発起して資格取得のために勉強。現在は行政書士をしていますが、事務所所長には入れ墨のことを話しています。最初は怪訝そうでしたが”客には絶対に見せるな”と、今では少し理解してもらっています」(佐々木さん)

関連記事

トピックス

【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン