──ほうほう。
「『猪木さん、聞いてる? 啓介さんにはいつも世話になってるのよ。随分と腰の具合もよくなって、猪木さんも啓介さんの会社の医療機器を使いなさいよ』なんて言って、横にいる啓介さんに『はい、兄貴』って携帯を手渡したんです(笑)」
──また、大胆な。
「啓介さんも最初は『はい……』『ええ……』ってぎこちない敬語で喋ってたけど、そのうち『ブラジルの姉さんが……』とか話し始めて、その電話がきっかけで仲直り」
──和解の立役者になったんですね。
「思い出したらきりがないですね。私がこうして健康でいられるのは、主人が『お前はまだ来るな』って言ってると思うんです。だから、もう少しこっちで主人のこと、猪木さんと馬場さんのことを、語り継げたらいいかなって思っています」
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
細田昌志(ほそだ・まさし)/1971年生まれ、岡山県出身。ノンフィクション作家。近著『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修評伝』(新潮社)が「第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞。「NEWSポストセブン」にて、11月25日よりノンフィクション連載『力道山未亡人~元日航CA・田中敬子の数奇な半生~』がスタート予定。
田中敬子(たなか・けいこ)/1941年6月6日、神奈川県生まれ。神奈川県立横浜平沼高校卒業後、日本航空の客室乗務員として勤務。この時期に撮影した写真を力道山に見初められ交際開始、63年6月5日に結婚。同年12月15日、力道山が他界。その後は未亡人として、娘を育てながら亡夫の事業を引き継ぐ。現在は力道山の菩提を弔いつつ、数々の社会事業に貢献している。
※週刊ポスト2022年12月2日号