香取慎吾を口説き落とした独特の手段
振り返るとだいぶ変貌を遂げたと感じる。優しさに溢れた少年役から成長して“暗躍”という言葉がふさわしい、バイプレイヤーに成長をした。行き過ぎることはなく、物足りなさを感じさせることのない、ちょうといい塩梅の悪役ぶりを山本さんは演じている。土下座まではしないけれど、人間味が感じられる好ポジションだ。
そこで思い返すのが、彼の数々の困難を掻い潜って人間関係を構築するエピソード。有名なところでは、大河ドラマで共演した香取慎吾とどうしても飲みに行きたいと、断られ続けてもめげずに何度もアプローチしたという。やっと飲みに行った時点で、電話番号も無理やり奪う。共演者と繋がることを拒否する香取慎吾の心をこじ開けることに成功したのは、彼くらいでは。
元女優の堀北真希さんとの結婚のきっかけもラブレターを数十通送り続けて、交際0日で見事にゴールインだったという。いずれにしても人間関係を構築する方法が独特だ。他の人がそのまま真似をしたら嫌われるかもしれないスレスレの手段で、相手の心を紐解いていく。だからこそ、一連の胡散臭い役、暗躍者、フィクサー、詐欺師といった特殊な役どころがよく似合う。振る舞いや所作で強烈なインパクトを狙っていな(そうに見せかけているだけかもしれないが)いところが、視聴者はそそられるのだと思う。ああ、来年も楽しみだ。
余談だけど、山本さんがご結婚されるずっと以前に恵比寿の焼肉屋で偶然お見かけしたことがある。その時私は超絶美人の友人と焼肉を食べていたのだが、彼女と目が合うや否や、ちょっと口角のあがったあの“したり笑顔”で、笑いかけてきた。もちろんその後に何があったわけではなく、たった一瞬の微笑み返し。間近でその笑顔を見た人間としては、今思うと、香取さんも奥様も口説き落とされたのがよく理解できた。あれはヤバい。
【プロフィール】小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、企画、編集、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。著書に、最新刊の『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)ほか、30代の怒涛の婚活模様を綴った『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45センチの距離感 -つながる機能が増えた世の中の人間関係について-』(WAVE出版)がある。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k