歩きスマホが原因で揉めているのかと思ったら違った(イメージ、AFP=時事)

歩きスマホが原因で揉めているのかと思ったら違った(イメージ、AFP=時事)

「若い人が歩きスマホをするでしょ? 最初はそれが原因でぶつかる人が多いんだと思っていたんです。ところが、毎日のようにぶつかったぶつかってないとモメている男がいて、どうしたんだと詳しく話を聞くと、その男はどうも”ぶつかり”の常習犯だったらしいんです。歩きスマホの若い女性にぶつかっていって、女性がスマホを落としても知らん顔、女性も歩きスマホだから強く言えなかったようですね。結局男はいつの間にかいなくなったけど、何人もの女の人たちが、それこそ、女子中学生みたいな若い子からおばあさんまで被害に遭っていて、気の毒だと思ったね」(佐々木さん)

駅名を見ただけで、怖い思いが頭をよぎる

 取材を進めると、都内だけでなく、全国各地に「ぶつかり男」が出没していることも判明。例えば「満員電車の中で、わざと他の客にぶつかる男がいる(愛知県・40代女性)」「デパートのエレベーターの入り口に立ち、降りてくる女性にぶつかっていく男がいる(広島県・20代女性)」、さらに「エスカレーターに止まって乗っていると、駆け上がっていく男性がわざと肩をぶつけてきた」などといった声があるが、全てに共通するのは、ぶつかってくるのは「男性」であり、被害に遭っているのが「女性」である、ということだ。前出のキー局社会部記者が続ける。

「ぶつかり男が卑劣なのは、女性を狙い撃ちにしているということです。ぶつかり男は間違っても、男性にはぶつかっていかない。相手が強ければトラブルになっても負けるので、絶対に負けない女性、何も反論して来なさそうな女性を狙うのです。本当に卑劣です」(キー局社会部記者)

「ぶつかり」は、力の強い男性が、力の弱い女性を狙った悪質すぎる犯行というわけだが、筆者に情報を寄せてくれた埼玉県在住の女性看護師・Aさん(20代)は、東京23区内の某ターミナル駅構内で「ぶつかり」被害だけでなく、信じられないような経験をしたと、声を震わせながら明かす。

「その駅の通路は人が多く、風俗店などのキャッチが多いことでも知られており、本当は通るのも嫌でしたが、通らざるを得ない場所でした」(女性看護師・Aさん)

 Aさんはその日、所用で某ターミナル駅を利用したが、この日もいつものように「お姉さん、夜職どうですか」などと違法なキャッチに声をかけられた。これまでは無視していればそれで良かったが、無視を続けていると、キャッチが「ブス」とか「ババア」とか、Aさんに聞こえるように叫んでくるようになっていたという。通報があったのか、そういった悪質なキャッチの姿が消えた時期もあるが、この一年ほどでまた復活し、今度は罵声を浴びせるだけでなく、女性にぶつかってくるようにもなったという。

「怒鳴られるだけでも相当な怖い思いをするのに、いきなり”おらっ”といってぶつかってこられて、腕に打ち身ができました。警察にも相談しましたが、相手が故意かどうかの判別が難しいといわれ、泣き寝入りするしかない。それ以降、あの駅は使っていません。駅名を見ただけで、怖い思いが頭をよぎるんです」(女性看護師・Aさん)

 予測ができない「ぶつかり男」の犯行だからこそ、防御のしようも無い。さらに、Aさんが相談した警察に言われたように、事後では故意かどうか判別が難しく、たいていは泣き寝入りするしかない。被害者だけがいつまでも苦しめられる様子は、痴漢被害とよく似ている。

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