一橋大で2022年1月、外国人留学生向けの入学試験中に数学の問題が流出した事件で、警視庁が押収したスマートフォンなど[同庁提供](時事通信フォト)

一橋大で2022年1月、外国人留学生向けの入学試験中に数学の問題が流出した事件で、警視庁が押収したスマートフォンなど[同庁提供](時事通信フォト)

 学生が言う通り、対策として外部との通信を遮断する装置を設けるとか、受験生のスマホ持ち込みを全面的に禁じるなども考えられるが、予算も限られており、ふだんは大学で研究教育に携わる教官が急造の試験官を務めている現実を考えると難しいだろう。そこで、せめて認知徹底と注意喚起をすることで防止しようという意図が感じられる。

知りながら不正関与は刑事罰の可能性

 大学入試における不正行為は何十年も前から起きていることではあるが、インターネット、なかでも掲示板やSNSなどでユーザーどうしのやりとり、とくに解答者の善意を悪用する手法は近年の特徴だろう。

 たとえば2011年には、京都大学の2次試験で、数学と英語の問題が試験時間中にYahoo!知恵袋に投稿されていたことが発覚した。同じ投稿者によって同志社大学、立教大学、早稲田大学の試験時間中にも問題が投稿され、第三者が回答するという不正が起きた。この事件は携帯電話を利用したことでも注目され、また予備校の模擬試験でも同じ投稿者が同様の行為をしていたことが分かっている。入試における不正は国立大学、私立大学、予備校、受験生だけでなく、ネットでのやりとりに関わった者すべてにとって他人事ではない。

 受験生が不正に関与した場合、試験自体が無効とされ、これまでの受験勉強などの努力がすべて無に帰してしまう。リスクはそれだけではない。

 文部科学省は、「不正行為と知りながら受験者に協力した者についても、試験実施業務を妨害したことにより、被害届が提出され刑事罰が課される可能性」について言及している。事実、2022年共通テストの不正に関わった受験生と協力者は偽計業務妨害容疑で書類送検されている。

 その甲斐あってか、2023年は数学で定規を使う不正行為により東京都と静岡県の試験会場の計2人が失格になったものの、スマホによる不正は行われなかったという。

 TikTokには、禁止されている定規を持ち込んで失格となったと思われるユーザーからの「試験って難しいな#試験#カンニング#定規捨てたい」という投稿が見つかる。ユーザーは動画内で「試験一時中止通知書」を所持している。本物か不明だが、本物だとすれば、失格後スマホですぐにこのような動画を投稿している軽さに驚かされる。

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