ぼく自身も『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系・2020年)というドラマの脚本を書いたときに「スマホ片手に見てくれ!」って宣伝してたら、Twitterですごく盛り上がって、みんながツッコミながらオンエアを見てくれた。今後はこれがリアタイの目的になる気がします。
〈そうした長所にスポットライトを当てていけば、テレビの求心力は復活するのだろうか〉
相当気合を入れないと難しい、茨の道です。でもやらないとダメだし、ぼくも頑張らないとって思いますよね。
厳しいことを言うようですが、いま、テレビ局の人たちって、若い人がみんな芸人さんを好きだと思いすぎてると思う。もちろん芸人さんは面白いですよ。“撮れ高(撮影した映像の中で実際に使える素材の割合を指す、テレビ業界用語)”も高い。でも、芸人さん以外でもテレビで通用する人を発掘する努力をしなくなってしまったなと。
それに、若い人たちばかり追いかけた番組作りをすることも危険だと思います。若者たちがハマっているTik Tokとはそもそも器も違うし、敵わないんですから。彼らは痛みを伴う笑いは本当に受け付けない世代。ぼくらが慣れ親しんだバラエティーとは嗜好が違っているんですよね。
それより、ぼくはいま50才なんですけど、ぼくらX世代(1960〜1974年生まれ)って、とんねるずとかダウンタウンとか、テレビの黄金期を見て育った世代なんですよ。テレビが好きだし、それなりに購買力もある。そういうX世代向けの番組を作れば大人が夢中になるし、それを見た子供も興味を持つんじゃないかなと思いますね。
予算やコンプライアンス、さまざまな制約はありますけど、それよりも世の中全体が、何かあったらスポンサーに意見を言うようになっていますよね。そのダメージをいかにかわし、しのぐかも、重要な点だと思います。
〈最後に、これから『SMAP×SMAP』のような国民的番組が作れる可能性はあるのか、聞いてみた〉
いや〜、厳しい(苦笑)。予算も当時の半分以下しかないですし、SMAPに匹敵するようなスターがね……。いまなら大谷翔平選手くらいじゃない(笑い)? でも、誰か出てくると強く期待します。
【プロフィール】
鈴木おさむさん/放送作家としてバラエティーを中心に多くのヒット番組を担当。映画やドラマ、舞台の作演出、小説執筆、漫画原作などジャンルを問わず活躍中。
取材・文/辻本幸路
※女性セブン2023年2月9日号