世田谷区保育部保育運営・整備支援課はこう回答した。

「保護者のかたから不適切保育、虐待の連絡があり、保育園側には情報確認と保護者への周知を行うよう指導をいたしました。区としては保育園から上がってくる(調査)報告書を確認して対応を考えたい。また当該保育士に対して研修などを行い、改善を促すよう支援していくつもりです。(事実を公表しなかったのは)報道が過熱して保育園の運営が困難になることを危惧していた。区としては子どものためにも、今後も保育園の安定的運営が行われるよう支援していくつもりです」

 保育園、世田谷区ともに再発防止に取り組むという見解を示した。2月1日には保育園側は改めて保護者向けに「調査報告」を発表した。しかし、それでも不信感が払しょくされることはない、と保護者の一人は語る。

「保育園の対応は常に後ろ向きです。昨年11月に複数の保護者が保育園側に虐待について訴えていたのに放置された。それで世田谷区に不適切保育の通報が行なわれたのです。今回の調査報告も保護者の追及があって初めて出てきたものですが、報告書には希望すれば個別に説明するなんて書いてある。本当に虐待を不適切だと思っているのか不安です。希望などと言わずに、まず虐待被害にあっていた園児の保護者に保育園側が連絡をして謝罪することから始めるべきではないでしょうか」

 岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」においても、「幼児教育・保育の強化」は重要項目の一つとされている。「保育士の増員」や「職場環境の改善」といったテーマが議論されているなかで、「安全な保育」と「母親の安心」をどのように構築し守っていくのかという課題もまた大きなテーマとなろう。ぶどうの木で起きたような問題を再び引き起こさないためにも、こうした課題について改めて国や地方自治体、保育園が一体となって考えていく必要があるだろう。

 セレブの街で浮上した虐待問題、はたして保護者の不安が払しょくされる日は来るのだろうか。

【プロフィール】
赤石晋一郎(あかいし・しんいちろう)/「FRIDAY」「週刊文春」記者を経て2019年よりフリーに。近著に『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)。『元文春記者チャンネル』をYouTubeにて配信中。

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