「フランスでは飲まない」
一方、福岡で放射線治療専門医をしている上松正和医師(つくし訪問クリニック早良院長)が年輩者で避けたい薬とするのが、鎮痛薬や解熱薬として使われるロキソプロフェンだ。コロナ禍では感染時の解熱鎮痛薬としても処方され、普段は頭痛や腰痛などの痛み止めとして、幅広く処方されている。
「優秀な薬ではありますが、問題は副作用が多すぎる点です。胃粘膜障害を筆頭に腎障害やせん妄リスクもあるため、特に高齢者ではなるべく避けたい。より安全なアセトアミノフェンで代用できることがほとんどなので、第一選択薬にはなりません」(上松医師)
日本や欧米などの各国で新薬の効果についての議論が交わされている認知症治療薬についてはどうか。谷本医師は、現状で承認・使用されている認知症治療薬の効果についても懐疑的だ。
「認知症薬は臨床試験で効果があるとされても、実際に処方され、長期的に認知機能への効果が認められたかについては、やはり異論が出ています。『費用に見合う効果がない』という理由で保険診療の対象外とされるフランスなどの国もある。認知症対策はその人の生活環境や運動による刺激、社会的要因など様々な要素が関わるものなので、少なくとも私は積極的に薬を飲みたいとは思いませんし、効果にも懐疑的です」(谷本医師)
歳を重ねるとともに薬の代謝・排出機能が衰えるために「飲んではいけない」薬は、種類が増える傾向にある。だが、長年、その薬に頼ってきた患者からすると、「断薬」「減薬」のハードルは高い。前出・上松医師が言う。
「急に薬を中断すると調子を崩すことも予想されるので、主治医と相談するのが前提です。処方について疑問がある時は『今は副作用の少ないほかの薬もあると聞いたけど、やはりこの薬がいいですか』と切り出すと角が立たず話し合いもスムーズに進むと思います」
その問いに答えてくれない場合は、薬より先に「主治医を変える」検討も必要だろう。
※週刊ポスト2023年3月31日号