タモリが発した「最後」という言葉
──番組終了についてタモリさんと何かお話はされましたか。
安齋:それはみなさんが聞きたがるんですけど、本当に何もないんですよ。一言もなかった。「空耳アワー」の最終回の収録もね、タモリさんは普通に「また来週」って言って終わったんです。まだ番組の最終回はあるから、「じゃまた来週」って言って、すーっと立ってマイク外してもらって、そのまま食事に行かれたんだと思う。僕も「お疲れ様でした」と言っただけで、タモリさんは特に何もなくスーって。
──なんか格好いいですね…。
安齋:タモリさんっぽいよね。粋すぎるよね。
──安齋さんから見て、寂しそうな雰囲気もなかったですか?
安齋:そういう気配はなかったですね。ただ、1回だけタモリさんが「最後」って単語を口にした瞬間があったんです。「空耳」の最終回の収録前、控室からスタジオに行くエレベーターでタモリさんと一緒になったんですね。タモリさんがエレベーターに入っていくのが見えたので、僕は次のに乗ろうと思ったら待っててくれて、すいませんいいですかって一緒に乗ったんです。そのとき、「なに、遅刻しなかったの」と声をかけられたんですが、「最後遅刻してたら面白かったのに」っておっしゃって。ああ、最後とは思ってるんだなと思いました。今からでも遅刻できますよ、とは一応言いましたけど。
──安齋さんと言えば番組でもたびたびネタにされてきた「遅刻」ですけど、タモリさんはほとんど怒ることはなかったそうですね。
安齋:まあ怒られたこともあるんですけどね(笑)。
でもタモリさんは本当に気遣いの人で、いい話がいっぱいあるんですよ。例えばタモリ倶楽部で、みうらくんが提唱した「シンス(since)ブーム」を紹介したことがあったんです。シンスブームというのは、店舗やブランドがよく創業年を「since○○」と表記するじゃないですか。それが面白いなというもので、「since2015」とか割と近くても言っちゃうのもおかしい。それを番組でやったんです。
そうしたらその後、タモリさんが散歩中にご近所の表札か何かに「since○年」という表記があったのを見つけたそうで、わざわざ家にカメラを取りに戻って撮影したらしいんですよ。それをラボに出して紙焼きにまでして、「僕は会う機会ないから安齋さん、みうらじゅんさんに渡して」って僕に封筒を預けてきたんです。