政治家に、たとえば本の中に名前が出てくる高市早苗・経済安全保障担当大臣に、この本を読んでの感想を聞いてみたい。
「高市さんは、そもそもこの本読まないと思いますけど、たまたま新聞をめくって本の広告を見て、『父親ではない』やつが何か書いているんだな、って一瞬、目に留まるだけでも大成功だと思うんです。その人の判断を変化させることができるとは思わないけど、こういう意見もあるんだというニュアンスだけでも伝わればいいかな、って」
武田さんが「共感マーケティング」と名づけたものが世の中に広がる一方で、「あなたにはわからない」という切り捨ても、さまざまな場面で起きている。「父親ではない」に限らず、「ではない」と切り捨てられる側の立場からも何かを伝えていく努力は、異なる意見に触れる機会を作ることにつながる。
武田さんは、ラジオと雑誌という2つのメディアを活動の主な場所としてきた。
「この先消える二大巨頭として語られがちなメディアですけど、受け取る方も時間をかけて言葉を聴いたり、文章を読んだりしてくれる。自分は子どものころからラジオが好き、雑誌が好きで、なんとかそこでやっていきたいな、と思いますね」
【プロフィール】
武田砂鉄(たけだ・さてつ)/1982年生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。2015年『紋切型社会』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。ほかに『日本の気配』『わかりやすさの罪』『偉い人ほどすぐ逃げる』『マチズモを削り取れ』『べつに怒ってない』『今日拾った言葉たち』などがある。週刊誌、文芸誌、ファッション誌、総合生活誌、ウェブメディアなど、さまざまなジャンルの媒体で連載を持つ。ラジオパーソナリティーとしても活躍し、『アシタノカレッジ』(毎週金曜日。TBSラジオ)、『ゴールデンラジオ』(毎週火曜日。文化放送)に出演中。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2023年4月13日号