ミニチュアダックスフント(イメージ、AFP=時事)

ミニチュアダックスフント(イメージ、AFP=時事)

 まさに保護でなく「募金犬収容所」である。以降はすべて、誰がということではなくお三方の話を箇条書きにて記す。

「施設では未避妊や未去勢が平気でまかり通っていました」

「生まれてから成犬になるまで、一度もお散歩すら連れてってもらえず、自由にケージから出してもらえないままだった子もいます」

「ミニチュアダックスの子が踏んづけられたりしていました。吠えたら蹴っ飛ばします。犬だって吠えることもあれば噛んでしまうこともあります。だって保護されたばかりなのですから。それを暴力で矯正します」

 悪質なブリーダーやペットショップ、個人の多頭崩壊からようやく救われたはずの犬や猫たちが、こうして一部の悪質な保護団体によって募金の道具に使われる。譲渡会の問題は今回置くが、一部の悪質な「シノギ」によってトラブルも目立つようになった。

「犬は虐待してくる飼い主でも親のようになつきます。そんな犬を殴ったり蹴ったり、狭いケージに閉じ込めて、真夏や真冬でも一日中、募金のため街頭に晒します。こんな団体はあっていけない団体です。存在してはいけない団体です」

 繰り返すが、すべての動物保護団体がそうではないし、街頭募金のすべてがそうではない。しかし冒頭に書いた通り、このような悪質な団体が告発されたり逮捕、起訴されたりという現実がある。そうした告発や逮捕、起訴がなければ犬や猫は一生苦しむことになる。これ以前、そういった団体に対する告発人の話を引く。

「犬や猫はあくまで「物」であり所有物ですから所有権があります。ですから保護しても「返せ」という話になれば返さなければならない可能性もあり、そういう団体にもかかわらず犬猫を取り戻して同じことを繰り返す、ということが起こっています。法律上の話ですからそうなってはどうすることもできません。動物愛護法は改正されてもまだ罰則がゆるく、その扱いも「命」ではなく「物」ですから」

 いまだに罪は軽いまま。改正動物愛護法で昔よりはマシになったとはいえ、不十分な法整備のままという現実がある。5年以下の懲役または500万円以下の罰金だが実際に起訴されることすら稀で改善指導ものらりくらりでやり過ごしている悪質な団体がある。現に冒頭のブリーダーは48回も指導を受けた末、今回の悲劇を招いてしまった。犬や猫を何匹殺そうと他人の「物」なら「器物損壊罪」(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)、自分の「物」や所有者のいない「物」(野良猫など)なら「器物破損罪」にすら問われない(例外あり)。

 捨てた飼い主が悪い、儲けに走るブリーダーやペットショップが悪い、野放しにしている国や行政が悪い、と「誰が悪いか」ならいくらでも「悪い人間」は挙がるだろう。しかし確実にわかっていることは、この世に生を受け、人間を頼り、慕うすべての犬や猫に罪はない、ということだ。そしてその、何の罪もない動物たちが劣悪な環境で一生を終えたり、悪質な連中から保護されても道具として利用されたりする「生き地獄」が、この国に存在し続けていることもまた、現実である。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理、生命倫理のルポルタージュを手掛ける。

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