2013年のシーズン、大谷はルーキーながら開幕一軍入りを果たした(時事通信フォト)

2013年のシーズン、大谷はルーキーながら開幕一軍入りを果たした(時事通信フォト)

 同い年の2人は寮でともに生活し、電車に乗って食事や買い物に行くこともあった。しかし2017年オフ、大谷がメジャー行きを決める一方で、一軍経験のない宇佐美氏は「戦力外通告」を受けた。

 その頃、食事に向かうタクシーの中で2人きりになったことがあった。そこで宇佐美氏は思い切って胸の内を明かした。

「どんなかたちでもいいから、オレも一緒にメジャーに行けないかな」

 そんな切実な願いに対して、大谷はこう答えた。

「一緒に来ても自分の成績が変わるとは思わない。1人で挑戦したいんだ」

 宇佐美氏が振り返る。

「続けて翔平は、『塁大も1人でやってみて。手助けが必要な時には協力できることは何でもするよ』と言ってくれました。翔平について行って海を渡るより、自分にできることを一生懸命やることが大切だよ、という意味だったと思います」

 宇佐美氏は引退後、故郷の広島に戻ってカフェ&バー「BIG BASE」の経営を始めた。

「今も翔平の姿や言葉が心のどこかに残り、人間的な面で少しでも追いつきたいという気持ちがあります。僕は翔平と出会ったおかげで新しい景色を見ることができました」(宇佐美氏)

※週刊ポスト2023年4月28日号

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