初代皇帝アウグストゥス時代から築かれたローマ道は、基本的に道幅5メートルとし、水平・直線になるように設計され、道の途中にはローマからの距離を示す里程標もあって、帝国領土内に総延長30万キロメートルにわたって張り巡らされていたということです。このローマの道を通って、皮肉にも感染者とマラリア原虫とハマダラカがやってきたのですね。
まさにローマの道はマラリアの道でもあったのか──。交通路の発達は人や物、文化だけでなく病をも運ぶのです。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
※週刊ポスト2023年4月28日号