薬が効かない、見つけるのも困難

 さらに恐ろしいことに、体が繰り返しカビに侵されると、抗真菌薬が効かなくなることもあるという。それだけでなく、抗真菌薬が効かないスーパー耐性菌も見つかっている。

 それが、いま海外で問題視されている新種の真菌、カンジダ・アウリスだ。

「このカビはもともと2009年に日本で発見されました。発見当初は高齢者が外耳道炎を起こす程度で、病原性は低いと考えられていました。

 ところが、2011年に韓国で、このカビが敗血症の原因になった症例が報告されたのを皮切りに、アメリカをはじめ多くの国々で重篤な感染症の原因になっているとの報告が相次ぎました。新種のため、従来の検査法では見つけるのが困難なことや、一度体内に取り込まれると除去するのが難しいため、いまカンジダ・アウリスが原因の感染症は世界的に増加し、問題視されています」(矢口さん・以下同)

 免疫機能が低下した人がカンジダ・アウリスによる感染症にかかると死亡率は30〜40%とされ、アメリカの疾病対策センターが感染対策を講じるよう警鐘を鳴らしている。

「新種のカビ自体は増えていますが、カンジダ・アウリスのような薬が効かない種類が出てくるのは珍しいこと。今後日本でも問題になる可能性は充分にあります」

 カビには、食品を発酵させておいしくしてくれるメリットもあるが、一方で人体に害をもたらすこともある。いずれにせよ、空気中に漂っているカビをすべて除去するのは不可能なため、温度と湿度が上がるこの時期から初秋にかけては、こまめな掃除や除菌を心掛ける必要がある。

【プロフィール】
篠原岳さん/日本アレルギー学会アレルギー専門医。東京原宿クリニック院長。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医。

矢口貴志さん/千葉大学真菌医学研究センター准教授。カビ研究の第一人者。明治製菓での勤務を経て同センターに移り、生活環境における病原性があるカビを専門に研究。

取材・文/番匠郁

※女性セブン2023年6月1日号

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