全裸の若手たちをうれしそうに眺める
猿之助のセクハラ・パワハラは、歌舞伎の名門「澤瀉屋」グループで絶対的な力を持つリーダーの猿之助と、グループの舞台にかかわる弟子筋や役者、裏方スタッフという厳然たる上下関係の中で繰り広げられた。
「2012年の猿之助襲名より前の亀治郎時代は、仕事とプライベートの区別をしっかりつけるかたでした。当然ですが、私的な自由恋愛を舞台に持ち込むなんてありえなかった。
それが変わったのは、やはり四代目猿之助を襲名してからだと思います。澤瀉屋を一手に背負う立場になり、『ワンピース歌舞伎』といった気鋭の興行を打って世間に注目され始めた頃から、少しずつ変わっていきました。歌舞伎の仕事でかかわる共演者やスタッフとのプライベートな関係を、露骨に歌舞伎の舞台の配役や仕事の割り振りに持ち込むようになりました」(猿之助を知る芸能関係者)
澤瀉屋関係者が明かす。
「夜にお酒を飲んだ後のことです。タクシーに乗ったときなど、2人っきりになる場面が本当に怖いんです。手を握られるのは当たり前で、キスされたり、下半身を好き勝手に弄ばれたりすることがありました。周りにはベッドの上でもっと深刻な接触を求められていることに悩んでいる人もいました。ただ、無視されたり、役を失うといったことが頭をよぎって、拒否できないんです」
ある劇場関係者は、「パワハラにセクハラを上乗せしたような行為は日常茶飯事だった」と話す。
「猿之助さんは、歌舞伎だけでなく、現代劇にも幅を広げて自身の興行を行っていたので、現代劇の役者ともネットワークがありました。ある舞台俳優は、“もう猿之助さんの舞台にはかかわりたくない”と周囲に悩みを吐露していました。
というのも、その俳優は猿之助さんのお気に入りだったのか、ある夜に呼び出されて、さんざんお酒を飲まされた後に、下半身を触るだけではなく、それ以上のことをされたと。相当なトラウマになっているようでした。その後、その俳優は猿之助さんとの関係を拒否したのでしょう。まったく役を与えられなくなりました」
ここまで猿之助を増長させたのは何だったのだろう。
「澤瀉屋というのは、ほかの家に比べて断然、リーダーである『猿之助』が力を持つという歴史があります。今回の明治座の公演もそうですが、座頭(現代劇でいう座長)として自分の名前を冠する興行を行う力があり、その演目や内容、キャスティングにも絶大な影響力を握っている。自主興行も多いので、裏方の劇場関係者や衣装、大道具などのスタッフは彼の一声で決まります。
プロデューサーであり脚本も手掛け、演出もこなす猿之助さんの存在は絶大です。そんな影響力と権力が彼の暴走を加速させたといえます」(前出・歌舞伎評論家)