そうなると、鶴竜親方の年寄株取得のために残された時間は陸奥親方が定年となるまでの1年ということだ。どのように入手に至るかで親方としての今後のキャリアのあり方も変わってきそうだ。相撲ジャーナリストが言う。
「協会内では今、来年の理事選に向けた綱引きがある。伊勢ヶ濱一門内の序列を無視して白鵬が理事選への出馬表明をしたことで、協会全体が浮足立っているんです。白鵬は一門内で票を確保するのではなく、モンゴル出身者はじめ外国出身親方を中心に票を固めているようだとされますが、すでに水面下では票の奪い合いが始まっている。伊勢ヶ濱一門内で候補として推される浅香山親方(元大関・魁皇)と、白鵬がそれぞれ親方衆の囲い込みに動いているともされます。
そうしたなかで微妙な立場に立っているのが鶴竜親方です。協会の主流派からモンゴル出身派閥のサイドと見られる側面がある一方で、師匠の陸奥親方は八角理事長(元横綱・北勝海)との関係も深い主流派。協会ナンバー2の事業部長に抜擢され、伊勢ヶ濱部屋と同様のイジメ問題が発覚してもお咎めがなかったことからもそれが窺えます。
そうしたなかでは、“陸奥部屋をモンゴル出身の鶴竜が継いで大丈夫か”と懸念する関係者もいる。部屋の継承には年寄株の取得だけでなく、“白鵬とは一線を引いている”ことを示す踏み絵を迫られるのではないか。そうしたこともあって、鶴竜親方の動向が注目されているのです」
※週刊ポスト2023年6月23日号