時事通信フォト

問題が噴出しているマイナンバーカード(時事通信フォト)

 その後も6月5日の国会で、デジタル庁は家庭内で同じ口座を登録されている例が多くあることをとっくに知っていたのに、「(5月下旬の)総点検調査の過程で把握した」と説明。すぐに噓がバレて、河野大臣は「たいへん申し訳ない」と謝罪することになります。「知らなかったことにしておこう」という判断をするにあたって、河野大臣がどこまで関与していたのか、どこまで知っていたのかはわかりません。

 また、6月9日の閣議後の記者会見では、マイナンバーをめぐるトラブルの対応のため、デジタル庁の職員は「朝の3時、4時まで残業という者(職員)もいる」と述べました。暗に「みんながんばってるんだから文句言うな」と言いたいのかもしれません。しかし、この発言は「そもそも政府が『不可能なこと』をさせているからだろ」「上のミスを現場に押しつけいることへの反省はないのか」と大きな反発を招きました。

 相手の怒りをかき立てない「いい謝罪」の基本は、次の3つ。

・罪を軽くしようとして話をごまかしたり曖昧な表現を使ったりしない
・結局のところ責任はトップにある。部下や現場に罪をなすり付けない
・都合の悪い情報を隠さない。あとからバレたら大きなダメージを負う

 ここにあげた河野大臣の謝罪は、見事にこの3つの基本の逆の要素に満ちています。私たちも、けっして他人ごとではありません。人間は弱い生き物なので、誰しも大事な場面で「ダメな謝罪」をしてしまう可能性はあります。人の振り見て我が振り直せ。河野大臣の言動を通じて、「ダメな謝罪」が及ぼす悪影響の大きさと怖さを痛感しましょう。

 願わくば、河野大臣がこの記事を読んで、火に油を注がない「謝罪力」を身に付けてくれますように。さらに、持ち前の「突破力」を発揮して、犠牲がどんどん増えていく「死の行軍」を中止にしてくれますように。ややこしい立場だとは思いますが、すっかり信用を無くした自分の評判と政府の評判を一気に上げるには、それしかありません。

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