国際情報

イラン大統領「ヘリ墜落死」を佐藤優氏が分析 早々に事故と処理したイラン政府の“手際のよさ”の裏で密かに進む「国家の報復」

中東情勢の行方は…

中東情勢の行方は…(SalamPix/ABACA/共同)

 イランのライシ大統領、アブドラヒアン外相らが搭乗するヘリコプターが5月19日、国境近くの山岳地帯に墜落し、搭乗者8人全員が死亡した。中東情勢が緊迫するなか、イランの最高指導者・ハーメネイー師の有力後継候補が死亡したことは、世界に衝撃を与えた。何が起きているのか──元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が読み解く。

 * * *
 今回の墜落死からまず見えてくるのは、イランの危機管理体制の明らかな「ゆるみ」だ。

 なぜ、大統領と外相という要人2人が同じヘリに乗っていたのか。私には理解できない。日本を含むどの国でも、原則として飛行機やヘリに複数の要人が同乗することは避ける。ましてやイランのような準戦時体制下にある国においては、“空を飛ぶ乗り物が落ちるリスク”を考えるのが鉄則となる。北朝鮮の独裁者・金日成は飛行機に乗らず、欧州に行くのも列車移動だったほどだ。

 実際、一行は3機のヘリに分乗しており、残り2機は無事だった。大統領と外相が別のヘリに乗っていれば、同時に死亡する事態は避けられたはずなのだ。

水面下での原因究明

 ただ、この墜落死でイランの体制が揺らぐかというと、少なくとも短期的な影響は全くない。イラン国民の直接選挙で選ばれる大統領は、あくまで最高指導者・ハーメネイー師の意思を執行する者に過ぎない。もちろん、一連のイスラエルとの戦争でのハマス支援、サウジアラビアとの国交正常化などを進めてきた大統領と外相という熟練のコンビを失うのは痛手だが、影響が表面化するのはまだ先の話だろう。

 むしろ気になるのは、イラン政府がライシ大統領らの死亡を確認してから「悪天候による事故」と認定するのが異常に早かったことである。この“手際のよさ”をどう読むかが、本件においては重要になる。

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン