山際氏は「覚えていない」「記録が残っていないので確認できない」とシラを切り続けたが、野党の追及を受けて昨年10月に更迭された。ところが、その直後に自民党コロナ対策本部長に抜擢され、この6月には自民党神奈川18区支部長に選任されて次の総選挙に自民党公認での出馬が決まった。さらに7月19日には、山際氏とともに海外での教団イベントに参加していた山本朋広・代議士の神奈川4区での公認(支部長就任)が決まった。
山際氏を「私の判断で(コロナ対策本部長に)指名した」と語った萩生田光一・政調会長も同教団との太いつながりが指摘されている人物だ。昨年の参院選に東京選挙区から出馬した生稲晃子氏(現参院議員)を旧統一教会の施設に連れて行って支援を要請していたことが報じられたが、首相は萩生田氏を政調会長として重用し、いまや自民党で旧統一教会と最も関係が深いとされる最大派閥・安倍派の後継会長の最有力候補となっている。
これでは岸田政権に教団を宗教法人解散に追い込み、教団と手を切る覚悟があるとは到底思えないのだ。
韓鶴子総裁は言いたい放題
そんな岸田首相の弱腰をあざ笑っているのが、旧統一教会の教祖・文鮮明氏(故人)の妻で総裁の韓鶴子(ハン・ハクチャ)氏だ。
「政治家たち、岸田をここに呼びつけて、教育を受けさせなさい」
今年6月28日、韓氏が日本の教団幹部ら約1200人を前に韓国・清平で行なったとされる発言だ。清平は同教団の聖地で、日本で集めた資金で「天苑宮」という名の巨大な“神殿”を建設していることで知られる。
「日本は特に第二次世界大戦の戦犯国だということ。原罪の国なのよ。ならば賠償すべきでしょう、被害を与えた国に」とも語っており、共同通信やTBSが入手した音声をもとに報じた。鈴木氏が語る。
「これは日本の旧統一教会幹部が韓国に研修に行った時に韓鶴子総裁から言われた言葉と伝えられています。韓氏は2018年にも同じ趣旨の発言をしていますが、その時は首相だった安倍氏の名前は出していないのに、今回は『岸田』とはっきり言った。韓氏とすれば、本来、統一教会にはべる存在だと考えている日本の政治家が、日本の統一教会に解散命令を出そうとしている。それに対する露骨な不満を述べたことは間違いないでしょう」
ところが、岸田官邸は、解散命令を出そうとしている相手から「教育を受けさせる」とまで言われながら、抗議さえしない。
安倍派所属の松野博一・官房長官は記者会見でこの発言について質問されると、「報道については承知しておりますが、韓鶴子氏の発言の逐一について、私からコメントすることは差し控えさせていただきます」と口をつぐんだのだ。