こうして試行錯誤したことが、指導者となった現在の引き出しとなっている。
「不完全燃焼に終わったプロでの7年間でしたけど、教える立場として考えると教わったすべてが財産になった。プロで大成はできませんでしたが、こうして指導者となった自分があるのは、7年の経験があったからだと思います」
今春の選抜には出場したものの、ここ数年は新勢力の京都国際に直接対決や甲子園実績でも押され気味だ。
「当然、危機感はあります。去年の夏に負けて、秋も春も負けた。それはダメでしょう」
今夏は準決勝で優勝した立命館宇治に0対2と惜敗し、2018年以来の選手権出場はかなわなかった。
「現在の平安は分業制となっていて、自分の役割は勝てるピッチャーを育てること。それが原田監督への恩返しになる。結果を残していきたい」
川口にとって勝てるピッチャーを育てることが即ち、いずれ訪れるであろう「その日」のための準備となるはずだ。
◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)