ということは、病院や施設を運営する側からすれば、土地が安価な地方ほど、少ない投資で立派な施設を準備することができるうえ、経営も安定的に行えるということです。その意味では、都市部に比べて地方の施設ほど建物が立派だったり、そのうえ空床・空室があるケースが割と多い現実があるようです。
例えば、お父さんやお母さんの出身地で、周辺に親戚が多い地方の街などは、入所先を探すうえで有力な候補になるのではないでしょうか。月に1回くらい面会に行くことができる場所なら、検討する価値は十分ありそうです。
入所する本人のことを考えると、当初は「都会にある有料老人ホームのほうが近所への買い物などで比較的自由な外出もできて便利」という面があるでしょう。ただ、さらに年を経て歩けなくなった時には、外出する機会が減ると予想されます。もしそうなれば、自然豊かな地方のメリットが増すでしょう。
入所先が遠方の場合、家族が面会に行く頻度が近所に比べて減るかもしれませんが、父母の出身地で親類縁者の多い地域を選べば、かえって寂しい思いをさせないで済むかもしれません。(了)
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。