有紗は岡村に知的障害があることを打ち明ける。岡村は知的障害者について調べるようになり、職場での有紗のふるまいもそういえば障害のせいだったのかと考えるようになる。「頑張り屋さんで素直でいい子」という有紗の第一印象が岡村の中でゆらぎ始める。
そんな岡村の変化を察した有紗が、岡村に「療育手帳を返した方がいいですか?」と尋ねる場面がある。
(有紗)「あたし、療育手帳、返そうと思います。私ぐらい(の障害の軽さ)で手帳、もっているのって甘えじゃないですか」
(岡村)「甘えって…」
(有紗)「岡村さんも彼女が健常者の方がいいですよね?」
(岡村)「いや…」
(有紗)「こんなものがあるから…」
有紗は夜の街で働く母親(若村麻由美)と2人狭いアパートで暮らす。岡村は手帳の件で母親に話しに行くが、療育手帳が福祉手当など「お金」に結びついていることを知らされる。母親は有紗の将来のために貯めていたのだ。「あなた、有紗の面倒、一生見てくれるの?」とも問われる。知的障害者をめぐる「リアル」を示す場面だった。
ドラマが描く障害者の「性」と「恋」
ドラマでは「障害」と「性」、そして「恋」が始終からみ合う。
母親が「彼氏」をアパートの部屋に連れ込んでいる描写もある。ある日、母親が不在の部屋で、有紗はその「彼氏」にレイプされそうになる。男の力ずくの行為に有紗がいつものように仕方ないかと諦めかけたその時──。次の瞬間に恋する岡村の顔がよぎって力をふりしぼって抵抗し、相手を突き飛ばして未遂に終わらせる。岡村という恋人の存在がなければ、身を許していたかもしれないと思わせる場面だ。
男は吐き捨てるように言い放つ。「障害者のくせに……」と。障害者を見下し、自分の快楽のために消費しようとする姿勢。それは“感動ポルノ”とも共通するものがある。有紗の抵抗は、これまで自己肯定感が低く求められれば誰にでもセックスを許してきた彼女が初めて見せた大きな変化だった。
岡村との出会いで次第に変わっていく有紗の姿がドラマの最大の見どころだ。微妙な表情の変化を注目の若手俳優・小野花梨が見事に演じている。
岡村と初めて結ばれた後に有紗が心の中でつぶやいた言葉も印象的だった。